農薬とは⑨ ~農産物の流通の歴史①~ | K&K FARM 小原英行のブログ

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同じ江戸川区の門倉農園と共に、発祥の地江戸川区で都内の学校給食を中心に小松菜を栽培出荷しています。

(-ω-*) ?




とか思ったよね?w

まぁね、俺も思ったよ。

まさか、ここまで掘り下げる必要があるとは

書き始めた当初、想定してなかったというか・・・



知らなかったw




書いていて、色々考えて、理解して

お蔭さまで、今まで感じていた違和感がすっきりしたよ。


このすっきりを皆様にお届けしマス♪

テーマ全体としては『農薬』に絞っているので

最低限の大雑把な説明になりますが

ここを理解していないと、この後の展開が

非常に不自然になりますので。


理解に必要な一面をライトに紹介したいと思いマス。

もちろん、これが流通の全てではないけど

こういった手法は必ず存在してます。



注)サブタイトルにまで①が付いたwww





●農産物の流通の歴史


そう、農産物というよりも農業において

切っても切れないのが流通。とても大切です。


今でこそ、インターネットの普及によって

流通販売の多様化が進み、俺みたいな個人でも全国販売が容易。

だが、かつての日本の流通の中枢は・・・



■卸売市場

■農協を介して卸売市場


※農協そのものの賛否は俺の中にもあるけど

ここではスルーね。テーマは農薬とはだから。





これがほぼ主流だった。市場に持って行けば買ってくれた。

むしろ、物がない時代には持って行けば売れた。


今でも卸売市場流通は主流であるが、今よりも色は確実に濃かった。

簡単に卸売市場と書くが、日本の多くの農家は農協経由で卸売市場に持ち込んでいる。

俺の住む江戸川区の様に自ら卸売市場に持ち込むという都市農業というスタイルは

全体から見ればなかなかレアなケースの様だ。


そうして農家が農協経由(もしくは自分で)で持ち込んだ農産物は

卸売市場で行われる競りによって値段が決まる。




その日の高値、安値に関しては品質。

全体の高騰、暴落に関しては需要と供給のバランスだ。




●豊作貧乏とは以下のことであるw


需要を供給が越える。

すると安くなる。安いけど、一杯出来たから持って行く。

するともっと安くなるw


じゃー、その逆で


●不作富豪ということがあるか?というと・・・


物がなくて高騰したら儲かるんじゃん?


いや、そうでもないw

物がない場合、無い人は本当に何もない。

働かなくていいわけだが、収入もない。


作物を出荷できる人も少量を卸売市場に持って行くのだ。

鬼の様な高額取引がされるが、実際の出荷量が少ないため

全体収入は大して大きくないw


メリットとしては半日仕事をして1日~3日分収入がある。程度だ。

真冬の低温や真夏の高温乾燥等が続けば、いつかは無くなる。




こういったことに振り回され

小さいことに一喜一憂するのが多くの農家だw

そこで一部の農家は思う。



『収入の安定のために自分たちの野菜を

自分たちの言い値で売れないだろうか』




要するに、卸売市場や農協に頼らないで販売出来ないだろうか。

これが、今に至る『市場外流通』始まりだろうと思う。


俺のネット販売も学校給食もこちら側だ。

で、俺の場合は築地市場への出荷と複合経営と言える。




(-ω- ) ?




農薬の話じゃないの?w

って思うでしょ?でも、必要なんですよ、この歴史的背景が。



そう、卸売市場というのはどんなに大量に出荷しても大体問題ない。

故に生産コントロールが100%というわけにはいかない農産物には

ある程度卸売市場に頼った流通は必要になる。


※むしろ、持ち込まれた以上、価格をつけて(超安くてもw)売らなくてはならない。



が、市場外流通は自分で値段を決められる反面

捌ける量に限界がある。自分でその売り先、即ちマーケットエリア、顧客を

常に安定して確保しなくてはならないわけだ。


言い値でいくらでも売れる程世の中甘くない。


故に・・・




『何らかの方法を持って

自分たちの売り場を安定して確保する必要がある。』



その一つの方法に



付加価値。



というものがある。

卸売市場流通の野菜とは違うものでないとその売り場を

安定的に確保し大きくすることはなかなか難しい。

他と違う野菜。という付加価値を付ける必要があった。



今ある多くの野菜の流通業者


らでぃっしゅぼーや

オイシックス

大地を守る会

生協

ナチュラルハーモニー

その他諸々


も同様。

彼らは必死に様々な付加価値を付けた。

良いものも、やり過ぎなのも挙げれば・・・


●産地直送

●顔の見える野菜

●朝穫り野菜

●有機無農薬野菜

●安全・安心

●○○農法

●究極の○○野菜

●奇跡の○○


俺の場合は・・・


『俺が作った江戸川産の小松菜』


という付加価値以外はないと思っている。

むしろそれしか言っていない。よく売れるものだw

なんとも普通である。



やっているのは、出来る限り新鮮な小松菜を丁寧に相手に届ける。

出来損ないは可能な限りださない。これだけだ。

出来るだけ頑張ってうまく作って、栽培された小松菜を鮮度よく食卓に。


この程度であろう。でも、購入してくれるリピーターは数多い。

多いと言っても生えている小松菜がすべて捌けることは絶対ないがw

非常に嬉しい。生産をしていく心の糧になる。

市場で高値を取るよりずっと嬉しい。


だが俺はメインが市場であり、学校給食だから

こんな悠長なことを言っていられる。


市場外流通だけで食って行かなくてはならない人々(や業者)は

高付加価値をつけ、自分たちの野菜のマーケット(販売先の消費者)確保に

必死にならざるを得ない。それは大切なことだ。


野菜というものの多くは単価が低い。

マツタケの様なものもあるにはあるが、大抵は安価なものが多い。

その流通において、しっかり稼ぐには一定以上の農産物の物量が

必要となる。



多くの生産者を抱える業者にとっては

共通の○○というものでそれぞれ違うハズの生産者を

1つのブランドとして販売する必要がある。


ここで問題が起きた。

一部の行き過ぎた業者が根拠のない付加価値をつけ始めたのだ。



他の野菜は危険です。

私たちの野菜は・・・



『天然のサプリメント』

『アトピーが治る』

『癌が治る』



という本物の野菜です。



この手のものが実際存在する。

農産物において、そんなことは有り得ない。

有り得るなら、普通にそこから薬を作るだろう。

医学や化学が黙っていない。




そこまで非常識な販売付加価値ではないにしても

一般化しているものの中に



『安全・安心の野菜』



があるが自然界で生産される農産物において

生産者が安全面に関しては保証することは不可能。

成分値も狙って一定になることは絶対ない。


何度も書いた通りだ。


詳しくは食品の安全シリーズ を読んで欲しい。





こういう背景にて


●多くの生産者に共通の

●多くの消費者に解りやすく

●決定的な差をつけられるもの。


このやり玉に挙がったのが




■農薬■




である。

簡単なことだ。説明などしなくても解りやすいイメージがある。

このシリーズ内でも書いた がかつての農薬はバズーカ的なもので

人間にも非常に負荷が大きかった。環境にも問題がかなりあった。


そこで、沈黙の春や複合汚染で騒がれたのである。



現在この話を引き合いに出したがるのは

単に付加価値を確立するためだと言っていい。



何故なら、そこから農薬の開発は変わったのだから。

今では科学者の多くが植物の対抗成分や微量のカビ毒と

比較するほど、農産物における農薬の毒性は低い。



稀に天然であるカビ毒の方が毒性が勝るケースもあるほどだ。

稀に天然であるリンゴの忌避物質の方がアレルゲンとしてリスキーな

ケースもあるほどだ。 それほど農薬のリスクは小さい。




注)実際どれもこれも人間の健康に大きな影響はない。



が、かつてのイメージと解りやすさ故

『農薬』の有無というのは安全か危険かの境目として非常に付加価値にしやすい。

説明などいらないのだ。



農薬は危険

農薬を使わなかったら安全。



こう騒ぎ立てれば、多くの消費者はそのイメージを持つだろう。

アトピー等で悩む方々はどうしても飛びつきたくなるだろう。



が・・・


人体への影響

環境への影響

昆虫や菌への効果の保証



最低でもこれらを保証されなかったら農薬とは呼ばれない。

名前のイメージが悪いからこうなるのではと思う。農薬のことを



『国の保証つき植物用サプリメント』



とかに言い換えれば皆さまに伝わるだろうか。





保証されているものを使わないことが

安全を証明することの方法だろうか。




現在において、科学的に言えばこういった話にはなることはないが

農家のおっさん(例え何も勉強してなくても)が以下のセリフを言えば

消費者は大抵信じる。



『無農薬が安全』




信じるよねw



が、根拠などどこにもない。

何も勉強してないから、自然が100%の安全だという前提で

無農薬が安全だという。実際それらを頑張って言っているのは

ただの流通業者か農家のおっさんであり医者でも科学者でもないのだから

科学的な根拠を求める方が可愛そうである。




もう一度言おう。


俺は俺だけの野菜を自分のやれる範囲で売ればいいわけ。

だって、ネット販売で売れなかったら市場にもっていけばいいし

学校給食だってあるし、むしろそっちが本業だし。


※副業のネット販売が一番こだわってはいるけどさw


けどね、市場に頼らない市場外流通のみで食って行こう。

とする場合、必死で売り先を確保する必要がある。


だから、確固たる付加価値をつけるのだ。

その付加価値によって生まれた市場を死に物狂いで守るのだ。


その1手段として非常に有効だったのが




『農薬』




だ。解りやすいのである。

説明する必要がないのである。


だから、市場外流通の付加価値としては永久に悪者であるなら

彼らにとっては悪者で構わないのかもしれないが、農薬を研究して

安全性を必死に求めている研究者は浮かばれない。


本当は賞賛されていいはずである。何故なら世界の食糧供給に

大きく貢献しているのだから。



現在、農薬について、その手の専門家である科学者や普及員は


『登録農薬はラベルを守れば、農産物の安全性は問題ない』



と言っているのにも関わらず

たかが農家のおっさんや流通の人間が


『農薬は危険、危ない。』



と言い続ける理由はここにあった。

俺が長い間理解できなかった理由は

俺が生きている時間が35年しかなかったからだ。

仕事について10年そこそこであり、その時は

既に市場外流通が確立していたからだ。




もう一つ、長年不思議だった。


化学肥料である。少々背景は違うが

これも同じような論理展開で理解できる。



化学肥料が危ない、科学的な味がする。

(どちらも嘘。するわけないw)



そういう農家のおっさんがいるが・・・

そういう人に限って有機農業や微生物をやたら押すw

もしくはそういった資材を売ろうとしていたりするwww


実際使ってみるとわかるが、有機資材、微生物資材。

実に普通だ。普通過ぎて話にならない。何故たかが1資材である

化成肥料を否定するのか・・・長年謎だったw



これも農薬同様ただの付加価値でしかない。

大抵裏にあるのは、野菜や資材について付加価値をつけたいだけだった。





やっとわかった。


ただ、この背景には農協の独占市場の資材の強引な販売等

問題もあったのだと思う。


現在も、かつての農薬のイメージから心底安全を求めて

正義感により農薬を否定し使用しない人もいる。が、そういう人は

安全に関して勉強不足だとしか言いようがない。農薬を使わなければ安全。

だとするなら、その安全は随分安い。


農薬そのものが一体どういうものなのかを知り

更に植物(野菜)が人間にとってまったくリスクがないのもなのかを

ちゃんと研究した方がいい。つーか、したとしても1農家ごときに

安全の証明や保証は不可能である。




正しくは


農薬は使用法を守れば安全性を保証している1資材。

これ以上でも以下でもない。



俺の知っているまともな有機無農薬農家は

農薬の使用有無に対し安全性を一切謳わない。



農薬に関して彼が言うのは・・・



『面倒臭いw』



農薬を使わなくても、他に農業経営の方法はいくらでもある。

というものだ。物凄いまっとうな意見である。

しかも、この人は付加価値に当然安全安心の有機野菜なんて

一言も言わない。有機野菜に安全の保証なんてない。


そう言っている。さすがだ。

で、付加価値が何かと言えば、良く出来た野菜を

多品目販売し続けていることだろう。



農業経営の方法については

地域、面積、生産作物、労働人員、などなど


何もかもが自由であり、それぞれの環境が異なるので

農薬を使うも使わないも自由で、そこに優越はない。



消費者に対して優越をつけるとするならば、農産物の出来のみだ。

農家同士で優越をつけたいのならば、農業経営が優れているかどうかだけだ。



明日は付加価値の裏側をちょこっと紹介しようw


農薬とは① ~はじめに~

農薬とは② ~農薬の概念~

農薬とは③ ~奇跡の外し方~

農薬とは④ ~鍵穴合わせ~

農薬とは⑤ ~農薬の使用有無に関しての安全性~

農薬とは⑥ ~何故農薬を使うのか~

農薬とは⑦ ~具体例~

農薬とは⑧ ~化学物質とは~

農薬とは⑨ ~農産物の流通の歴史①~

農薬とは⑩ ~付加価値~ ← お蔵入りしそうだったw

農薬とは⑪ ~農産物の流通の歴史②~

農薬とは⑫ ~経営における無農薬という付加価値~

農薬とは⑬ ~資材における有機という価値~

農薬とは⑭ ~農薬を使わないで栽培する方法①~
農薬とは⑮ ~農薬を使わないで栽培する方法② by メクレ~

農薬とは⑯ ~農薬を使わないで栽培する方法③ 生物の拮抗~

農薬とは⑰ ~農薬を使わないで栽培する方法④ 肥料分と昆虫…

農薬とは⑱ ~中締め~

農薬とは⑲ ~生産者のブレ幅~

農薬とは⑳ ~化学物質過敏症とは~

農薬とは21 ~消費者からのメール①~

農薬とは22 ~消費者からのメール②~

農薬とは23 ~消費者からのメール③~

農薬とは号外 ~映画『奇跡のリンゴ』の観方~

農薬とは24 ~消費者からのメール④~

農薬とは25 ~消費者からのメール⑤~

農薬とは26 ~消費者からのメール⑥~

農薬とは27 ~まとめ~

農薬とは28 ~このシリーズを書いて~