農薬とは号外 ~映画『奇跡のリンゴ』の観方~ | K&K FARM 小原英行のブログ

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同じ江戸川区の門倉農園と共に、発祥の地江戸川区で都内の学校給食を中心に小松菜を栽培出荷しています。

ども┏o ペコリン



俺は映画評論家ではありませんが・・・www

農家として、無用な誤解を生みたくないので

一応書いておきます。結構深刻だと思ってマス。


農薬を使わないで育ったから奇跡となったリンゴのことなので

このシリーズとも相当かぶります。なので号外として書きマス。



あと、大幅にネタバレになる可能性のあるので

気になる方は映画を観てからお願いしマス┏o ペコリン♪


あ、そうそう、初日に俺は観ました ← どんだけファンなのかw



※アンチですけど。


最初に言っておきます。



『菅野美穂は可愛かったw』




では、一応観てきた俺から誤解しそうな部分を書きマス。


①そもそも40~50年前の話であり、戦後の話程度として観るべし。


②上記により、技術、科学の進歩にて

現行の栽培法、農薬はその頃のものと大分異なると知るべし。


③劇中で木村さんは、村では信頼を回復しているが

青森県内には今でも微妙に思うリンゴ農家が多数いることを知るべし。

反面、地元産業は青森が目立ってよし♪みたく思っているのも事実。


→下の方に実際に青森でリンゴ農家をしている同年代の方からの

熱いメッセージを載せておきます。


④環境を自然に近づけ、リンゴの栽培がうまく行くストーリーで終わるが

その後、収量は安定せず、全く収穫出来ない年もあると知るべし。

その描写は『奇跡のリンゴ2』で披露される可能性がある。(のかw)


⑤実際農業収入としては1個1000円とかで売っても

全体収入(講演や本、映画等の興行収入など)のわずかだろうと思う。

収量が上がらない時点で農業経営には不利なので基本マネしないようにw


この失敗したストーリー付き農産物を売るという農法は少数だから

成り立つ方法で、もし真似するなら早いうちがお勧めだw

今失敗しいるストーリーを細かく収集し、データ化しておくと

10年後くらいにリアルに販売できる可能性が少しだけあるw


でも、その流れが強くなり、失敗ストーリー付き農産物ばかりが

スーパーに溢れたら結構ウザい。故に、この経営方法はパイオニア以外厳しい。


⑥現時点で殺虫・殺菌目的で、ああいった食品を農産物にかけるのは

微生物の被害の助長につながる可能性も含め禁止されています。

気を付けてください┏o ペコリン


詳しくはコチラ



最後に、④でも触れたが、一般の人はこの映画を観ると


『むしろ人間が手をかけるから無駄な作業が生まれるのだ!

何故今になっても普通の他のリンゴ農家や

全ての日本の農家は木村さんの様にやらないの?』


※ここが非常に問題。


と疑問を持つかもしれませんがそんなに農業は甘くありませんw

これ、実際に消費者からこう言われる青森のリンゴ農家が居て迷惑しています。


木村さんは収穫出来ない年があるんです。

もし他の農家でそんなことがあったら大変w

リンゴは1年に1度の収穫なので農業収入が0になります。

出稼ぎか木村さんの様にその失敗を美談にして

映画や本の収入があれば問題なし。


ただし、上記の通り、あとやっても1人か2人でしょう。

奇跡の○○という農産物はどこまで伸びるのかw

農産物に奇跡はないです。絶対的な安全もないです。





■青森の俺と同年代の青森の農家のコメントです。

そのコメントの発信者のFBもリンク しておきます。

多くの方のコメントも同時に見ると理解が深まりマス。



奇跡のりんごが大変有名となりましたが

同一地域でりんご生産をしている同業者として

考えを述べさせていただきたく思います。


木村秋則氏の努力によって、りんごは無農薬で生産する事は出来ない。

という事は確かに覆されましたが、それは彼の園地でのみ成立した現象であって

それをもって他の園地、青森県全般のりんご生産が無農薬へと転換出来るのかと考えますと

それは不可能であり、現状でも彼の園地でのみ成立するいわば実験室内での成功という域を

出ていない代物で、今後もその状況が変化する見込みはありませんので我々は

無農薬りんごの生産に期待を掛けていません。


そもそも、彼が無農薬生産に踏み出したのは38年前の1975年。昭和40年台後半に

奥さんが農薬により皮膚に炎症が発生するなどの薬害を患ったのがきっかけという事ですが

それはその当時の農薬にはそのような害を齎す効果があったという事であり

その後農薬は進化しそのような害に見舞われ苦労をするという事も無くなった。

という事は多くの方が知っておくべき事実であると思います。


農薬試験の厳しさがどのぐらいのものなのか、ADI(一日許容摂取量)の設置基準が

どれだけ安全を配慮したものなのか、世の中のほぼ全ての農産物が農薬を使用していて

ベトナムの枯葉剤による奇形児の出産やカネミ油症事件などのような社会的化するような

大規模な問題は発生していない事実、むしろ殆どの方が農薬利用によるメリットを

享受している(大規模な農業生産の安定・低コスト)状況などなど、現実をしっかり見て

状況の変化を認識し、40年以上前の基準をベースに考える農薬の恐ろしさ

農薬=害というようなステレオタイプな古い発想からの脱却を図るべきと思います。


昔と違い農薬の安全性が高まり店頭に並ぶ頃には農産物に農薬成分が残っておらず

食べる人にとって農薬利用作物は危険は殆ど無いという事が科学的にも立証されている状況で

あえて無農薬での生産をするメリットは何処にあるのでしょうか?


それは簡単に言うと、「高付加価値で高く売れる。」無農薬栽培のメリットはその一点に尽きるのです。

実は無農薬栽培をすることで病害に侵され、りんご自身が害虫・病害に対する危機を感じ

農薬成分を自分で作り出して防御してしまう事が研究の結果わかっています。

それは人間にとってアレルギーの原因となる物質で、健康な方には問題とはなりませんが

アレルギーを持っている方には毒になる可能性が考えられる物質が通常の3~5倍も

含まれています。


(果物アレルギーの方は無農薬りんごは避けてください)


それは奇跡のりんごは腐らない。という有名な現象に現れていて

防腐剤に相当する成分が含有されているから腐らないだけなのに

それが何か生命力が強いような素晴らしい事のように喧伝されていますが

全くそのような素晴らしい事ではない訳です。


このようなイメージを振りまき、農薬を使ったりんごよりも安全では無いものを安全と説明し

高く販売する、購入する側も安全と思い込み、喜んで高価に購入する。

という図式が成立してしまっていますがこの図式は無農薬商品を高く売りたい業者にとっては

好都合でありますが、一般消費者には何一つメリットが無い事は説明するまでもないでしょう。


木村秋則さんの作った無農薬りんごは美味しい。という声がメディアからよく聞こえてきます。

無農薬は味を高める技術ではありません。木村さんの生産は当初無農薬無肥料という事が

話題だったのですが、今は無肥料の3文字が抜け落ちています。


無農薬無肥料では味を損ねる。これは生産者であれば周知の事実ですし

市場関係者の間でも奇跡のりんごは味が悪いという評価がたちました。

昨年とあるメディア関係者の方が奇跡のりんごを入手したとの事で

当方のりんごを送り比較していただいたのですが、味の良さは当方のりんごに軍配が上がりました。


木村氏のりんごは「一口目には甘さは感じるもの二口目には普通のりんご、こんなものか。」という

評価となりました。無農薬無肥料、自然栽培では味は良くならず貯蔵性も落ちる。

消費者にとって、良いことは何一つありません。


農業全般がそうですが、著しい高齢化と担い手不足(というより担い手消滅)という現実に

どう対処していくべきかが現場の大きな課題になっています。

その為にはお客様に評価される良い価値を生産し提供するという事を生産側が

しっかりやらなくてはなりませんが、その方法として木村式無農薬生産を選択する事例が

多々あるようですが、木村氏の園地でのみ成立し、機械化も出来ない実験室レベルの成果に

生産現場にすぐフィードバックできる技術は存在しませんのでいい結果には結びつかないでしょう。


僕は奇跡のりんごの後を追っても消費者に良い価値を提供出来るようにはならないし

りんご生産の後継の育成、産業構造の改善を行うべき最後のチャンス、残り僅かの時間しか

残されていないこの時期に地域の多くの方(生産に携わった事の無い方々)研究機関

金融機関が奇跡のりんごを崇めたて、あのやり方に将来があるかのような

ミスリードを誘発させる事は地域にとって大きなマイナスを生む事にしかならないと思っています。


行うべきは慣行農法の生産合理化・徹底した食味の向上と

美味しさを良い鮮度で届ける流通の改革。感動ストーリーを生むことのない地道な改善が

今は現場に必要な事なのです。



奇跡のりんごストーリーは感動の物語です。大変良い話だと思います。

しかし、もはや30~40年も前の過去の話であるという事を、多くの方には

今を理解していただかなくてはいけないと思います。


そして生産の側も現状の奇跡のりんごに学んではいけないと思います。

あくまでもストーリーを時代劇のような過去のお話として楽しむだけにしていただいて

消費者の方は極々普通に販売されている美味しく手軽に利用できる農産物を

利用されると良いでしょうし、生産者は感動ストーリーに惑わされ農薬の利用云々にばかり

拘ったりする事なくより高く評価される良い価値の生産や経営改善・流通改革など

多くの消費者によりメリットを提供できるよう当たり前の努力工夫を重ねれば

良いのではないでしょうか。


無農薬だから・安全性云々で頭でっかちに知識を食わせる農作物よりも

極々普通に美味しくなるように作った旬の完熟の方が体は正直に反応します。

体が欲しいと思うものが正しいのだと僕は思います。





青森のリンゴ農家からのメッセージでした。

文字をリンゴの色にしてみましたwあはw


でね、なんでこんなことをしているかというと・・・

これが消費者からの基本になったら


①ルールを守り農薬を使う農家が

誤解により危険だと言われ一層肩身が狭くなる。


②植物の生育に必要な肥料分を与えることも同様に後ろめたさを伴う。


③何もしなければ出来るのに、何を苦労しているのか?と

農業自体が疑われるようになる。


④農産物の正当な評価がなくなり、売れなきゃ困るから

同じ道を辿ると、スーパー、市場等に野菜が流通しなくなる。

(木村さんの収量は安定していないのが事実。でも、映画だと

あの後の展開では絶対失敗はない!っぽい感じで終わるw)


⑤青森のリンゴ農家はいつまでたっても誤解が解けない。



まぁ色々突っ込みたいところはあるけど、あまり批判すると

映画自体が面白くないので、批判というより誤解を解きたい。

個人的には、同じ方法で作られたから腐らないとするナスが

腐ったので、散々言ってやりたいところだがw


映画自体のメッセージは家族愛的な風にとれるので

旦那が妻を思ってのこと。とすれば美談であるのは間違いない。


が、誤解を生む可能性が高すぎるのが問題だ。


そうそう、奇跡のリンゴがさも安全そうに言われ

化学物質過敏症の方にもまったく問題ないような文章もあったが

そこに根拠はなく、その安全性は『農薬を使っていないから』

ということしかない。


(肥料を与えないから。というのもあるっぽいがそれこそ意味が不明だ。

元々の土中にある栄養素はどーするつもりなのか。

人為的に施肥をしていないだけなのだから、それで安全になることはない。)


今俺の書いている農薬とはシリーズの中に出てくる

化学物質過敏症の方と電話で話した中での話では


減農薬のリンゴを偶然見つけて、珍しいと思い食べて以来

リンゴすべてが食えなくなった。恐らくリンゴの中の抵抗物質のためでは?




という話をもらった。

会話の中での話なので、メッセージをコピペすることが出来ないが

俺はウソをついていない。


個人的にはリンゴのアレルゲンに関しては実証されているとはいえ

そこまでの影響力があるのか?と驚きを隠せないがこの方の経験は事実だ。

むしろ、リンゴ農家の方の文章中にはまさにこの例が載っていた。


だとすると、奇跡のりんごは何が安全なのだろう。

こういう状況に成り得る人、なった人もいるのではないかと思う。

何らかの形で正当に臨床実験等試したのだろうか・・・。


更に老若男女に対して問題ないようADIの様に10倍×10倍等の

安全性を計算に入れているのだろうか・・・。

そういった根拠なく安全を謳うのに対し、今のメディアの持ち上げ方は

一般消費者は信じる他ないほどだ。


最後になるが、謎すぎる点について・・・

上記の青森のリンゴ農家ではない別の青森のリンゴ農家の意見を書いておく。

これは俺も超謎w


ンゴ農家Bの方曰く


『奇跡のリンゴの本を読みましたし、実際に畑を観に行ったこともありますが

病気と害虫でひどい有様でした。』 ← ここまでは主観もあるので何とも言えないが一応こういう意見。


『最も気になることは、無農薬にして最初の数年は花がつかなかったということです。

青森県では山間部に行くと、何年も人の手が入っていない放置園があったりするのですが

虫と病気は多いですが、春には花が咲きますし、秋には摘果していないので小さいですが

赤いリンゴが成っています』




| ゚Д゚*) ???


たしかにそうだw

映画をみていたら最初の数年どころか、10年以降にようやく花が咲くシーンがある。

それまでは花が一切咲かないのだwなんでだw何がリンゴの木に花を咲かせないものだったのか。

色々食品を散布するシーンがあった。何年もかけて実験したっぽい。


初期の頃にかけた何かが花を咲かせない何かだったのだろう・・・。


な に そ れw



最後になるが、江戸川区に奇跡の小松菜が生まれなくてよかったw


参考に他者の意見として

疑問視している方々のリンクを貼っておくので

見ていただけたらと思う。


無農薬・無肥料栽培への私見(木村りんご園)
話題の“無農薬りんご”について(工藤農園)
スチュワーデスが見える席(日経bp Tech-On)
「奇跡のリンゴ」は、なぜ売れたのか~「木村秋則」現象を追う~(農業技術通信社)

奇跡のリンゴ 木村秋則氏に抱く疑問(FWJ)




農薬とは① ~はじめに~

農薬とは② ~農薬の概念~

農薬とは③ ~奇跡の外し方~

農薬とは④ ~鍵穴合わせ~

農薬とは⑤ ~農薬の使用有無に関しての安全性~

農薬とは⑥ ~何故農薬を使うのか~

農薬とは⑦ ~具体例~

農薬とは⑧ ~化学物質とは~

農薬とは⑨ ~農産物の流通の歴史①~

農薬とは⑩ ~付加価値~ ← お蔵入りしそうだったw

農薬とは⑪ ~農産物の流通の歴史②~

農薬とは⑫ ~経営における無農薬という付加価値~

農薬とは⑬ ~資材における有機という価値~

農薬とは⑭ ~農薬を使わないで栽培する方法①~
農薬とは⑮ ~農薬を使わないで栽培する方法② by メクレ~

農薬とは⑯ ~農薬を使わないで栽培する方法③ 生物の拮抗~

農薬とは⑰ ~農薬を使わないで栽培する方法④ 肥料分と昆虫…

農薬とは⑱ ~中締め~

農薬とは⑲ ~生産者のブレ幅~

農薬とは⑳ ~化学物質過敏症とは~

農薬とは21 ~消費者からのメール①~

農薬とは22 ~消費者からのメール②~

農薬とは23 ~消費者からのメール③~

農薬とは号外 ~映画『奇跡のリンゴ』の観方~

農薬とは24 ~消費者からのメール④~

農薬とは25 ~消費者からのメール⑤~

農薬とは26 ~消費者からのメール⑥~

農薬とは27 ~まとめ~

農薬とは28 ~このシリーズを書いて~