ドニーさんがやさぐれたデカを演じる映画にハズレはない。
結構前に!
光陰矢の如し、とは良く言ったもんですね、ワハハ…
そんな風に茶を濁すわけにもいかないので、先日、遂にドニー最新作をレンタルしたのだった。
タイトルは特殊身分。
まず見てください、このポスターの闘犬のようなドニーさんの表情。
さては今回も暴力の満漢全席が味わえるのだなあ…
と高を括っていたのだが、なんとドニーさんが出してきたのは火鍋なのだった。
…いや、全然分かんねえよ。
という方もいると思う。
ていうか、俺もそう思う。
如何に火鍋映画だったのか?
今回はドニーさんの最新作、特殊身分~special ID~をご紹介します。
香港の雀荘。
ビシバシ刺青が入ったドニーさんがタバコを噛みながら卓を囲んでいた。
誰がどう見てもヤクザである。
ドニーさんは下手を打った舎弟たちの為に敵対する組織のボスと麻雀を打っていたのだ。
イカサマを仕掛けられていたものの国士無双をツモり、舎弟たちを解放するドニーさん。
だが敵対する組織の面々は収まりがつかない。
「こうなったら拳で決着をつけよう!」というアジア的な提案を持ちかけられ、了承するドニーさんなのだった。
「今までの麻雀のくだりは何だったんだろう・・・」という野暮な発想をしてしまいそうだが、アジア的にはアリな展開だ。
タイ人のボス(酔拳2で御馴染みのロー・ワイコン)とのタイマンを張るドニーさんだったが、麻雀だけでなくステゴロアカギっぷりを披露!!
立ち技が不利と見るやイノキ・アリ状態へ持っていき、マウントを取ると「トム・ヤム・クーン!」と叫び、ひょうきんなマウントパンチを繰り出すなど勝負を優勢に進める。
そんなわけでヤクザの喧嘩と言うにはハイレベルすぎる戦いを終えたドニーさんだったが、それでも収まりのつかない敵の組織は袋叩きにしようと総出で襲いかかるのだった!
「今までの喧嘩の下りは何だったんだろう・・・」とか野暮な発想はしてはいけない。
何度でも言おう。
アジア的にはアリな展開なんだ。
頑張れば何とか出来そうなものの、裏路地に逃げ込むのだった。
ここで、重大な秘密が明かされる。
見るからにヤクザ街道まっしぐらに見えたドニーさんだったが、実は8年間も潜入捜査を続けていた警官であった。
ビシバシ刺青を入れたのも黒社会に溶け込む為、という、実は正義に燃える警察バカだったのだ。
もういい加減に警官へ戻してくれよ、なんて言うものの、毎回はぐらかされてしまうドニーさん。
かれこれ潜入生活も8年の月日が経っていた。
もうヤクザなのか警官なのか自分でもよう分からん、と。
そんなドニーさんを警官として繋ぎとめていたのは、お母さんへの親孝行であった。
オカンと僕と、ときどき黒社会な日々。
そんなドニーさんへ黒社会のボスであるホン(コリン・チョウ)から、かつての舎弟でもあったサニーが裏切ったかもしれねえから、中国で身柄を確保せよとの命が下る。
このサニー、可愛らしい名前およびイケメンな顔とは裏腹に、口より先に手が出るイケイケのヤクザ。
ボスから、お母さんの身の安全を盾にされたドニーさんは渋々了承するのだった。
一方、警察もホンを逮捕するにはサニーの身柄が必要だと。
こうして、地元警察のエリート刑事にして生粋のキティちゃん好き、ジンとタッグを組むドニーさん。
表向きは黒社会という「特殊身分」として中国本土に殴り込むのだった。
潜入捜査官ものと聞くと、職務との葛藤など、割と陰鬱な展開を想像してしまうが、今作は違う。
ていうか、葛藤は基本的にない。
手加減抜きな怒兄ぃ(ドニ-)アクション は相変わらず凄いのだが、この作品、何が凄いって、ドラマ部分でのトレンディぶりだ。
この際、トレンディドニーと呼ばせてもらうが、実に微笑ましい。
かと思いきや、次のシーンでは鬼のようなアクションが披露される。
お母さんに出張先の中国の夜景を携帯越しに見せてはしゃいだかと思いきや、サニーのいる火鍋屋で大乱闘!スマッシュドニー を決め、倒れたヤクザに追い打ちパンチをぶち込む。
女刑事は女刑事でドニーさんと空気銃でキャッキャッしたかと思えば、攻殻機動隊の草薙素子みたいな動きで暗殺者を追う。
ジャージおよびパーカー、そしてピュアな瞳で「背中の復帰と言う刺青は警官への復帰という願掛けなんだ♪」 と真っ当な警察官への憧れをジンに語ったかと思えば、サニーとカーチェイスを繰り広げ、建設中の橋で壮絶なタイマンを張る。
このアクションシーンとドラマ部分の温度差。
アクション部分が激辛だとすればドラマ部分はまろやかな鶏がらスープ とでも言おうか。
俺が今作を「ドニーさんの火鍋映画だ!」というのを少しは理解していただけただろうか。
そもそも、このブログ自体も変なブログだしな!
しかし、今作を見るにつれ、昔の香港映画は大体こんな感じだったなあ、と思わず郷愁を誘う。
だが、明日から真似したくなる要素がないわけではない!と断言しておきたい。
なにより俺火鍋好きだし!
例えば、こうだ。
サニーと会う為、行きつけの火鍋屋へいくドニーさん。
久しぶりの再会も早々に、戯れ合いからの、やや本気の喧嘩で場を暖める二人。
「まあ、とりあえず火鍋をつつこうや」とドニーさん。
ようやく席についたかと思いきや「オマエ、実は俺を殺しに来たんじゃねえのか?」 と急にイチャモンをつけるサニー。
落ち着いたかと思いきや、些細なきっかけで急にブチ切れる辺りが実にヤクザらしい。
それに伴いザブングルの片割れみたいなヤクザが馬鹿でかい声で「食えるもんなら食ってみろやー!!」 と酒やらなんやらを火鍋にドボドボ入れる。
何で!?
まあ、この突拍子のなさも黒社会ってことにしておこう。
グツグツと煮えたぎる火鍋。
海原雄山なら、あれこれ文句を言って怒って帰る所だが、ドニーさんは違う。
「俺は辛いものが大好きさ!」というと色々ブレンドされた火鍋のスープをゆっくり味わって飲むドニーさん!!
固唾を飲んで見守るヤクザ達!!
そして、飲み終えたドニーさんが一言!!
「ふぅー・・・美味いなあ!」
もうヤクザ達も、ドニーさんにドン引きするしかなかった。
まさに真の美味しんぼだ。
出された食べ物を粗末にしない、この姿勢。
男なら明日から真似したくなる姿勢だ。
そんな激辛なシーンに対しての、鶏がらスープ(ドラマ部分)。
人一倍、「真っ当な警官になりたい」という思いを抱きながら周りからは「そんな刺青なんか入れてたら、どう見てもヤクザじゃねーか!警官なんかに戻れるはずないだろう! 」と散々言われるドニーさん。
だが、それでもくじけない姿勢。
そんな息子を「あなたが悪人じゃないのは知ってるわ。」と支えるお母さん。
女刑事ジンとの関係性でもドニーさんは奮っている。
最初は反目しあいながら、徐々に友人以上恋人未満な関係を築く、不器用かつピュアなドニーさん。
とくに犯人を射殺して落ち込んでいるジンにあえて空気銃を持たせて叱咤激励したり、これでもか?というほどピュアゆえの不器用さが描かれる。
この一連の流れはロッキーの第一作を俺に思わせた。
これも男なら是非明日から真似したくなる姿勢だ
ラストの後味も爽やかだ。
情熱大陸のようなドニーさんのナレーションに乗って披露されるラストのドニージャンプに至っては「仕事も腕力も大事だけどプライベートも大事にしような♪」 というドニーメッセージを見る者に送るのだった。
ここで笑うか笑わないかで男の価値を求められると言っていい。
俺は大爆笑したが。
というわけで、あながち変な映画と一言で終わらせることのできない本作。
少なくとも今年の(俺の中での)火鍋映画№1だ。
どっちの意味でも火鍋好きには溜まらない。
そんな明日から真似したくなる漢の映画である。
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