<艶が~る、二次小説>


新年、明けましておめでとうございます音譜

今年も、宜しくお願い致します獅子舞


ヾ(@^▽^@)ノ


今年一発目は、「十六夜の月」からキラ


沖田さんと春香の新婚生活は?山南さんを追いかけた沖田さんは…。


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【十六夜の月】第16話



冷たい風が容赦なく頬を掠め、息苦しさを増していく。


京を発ってからどれほどの時が流れただろうか、想いだけが交差する中、私はひたすら馬を走らせ続けた。


(……見つけることが出来るだろうか)


東海道をひた走り、大津に辿り着いた頃。とうとう、咳が止まらなくなり馬を休ませがてら、一軒の宿で身を休めることにしたのだが、


「沖田くん」

「や、山南さん!」


そこで私に声を掛けて来たのは、山南さんだった。


「大丈夫かい?」

「大丈夫ですと、言いたいところですが…」

「すまない」


伏し目がちに呟き、すぐに私の笠を奪うようにして持つと、少し離れた場所にいた店主に何やら話を済ませ、私に着いて来る様に促し。


やがて辿り着いた部屋で、私達はお互いに向かい合って腰を下ろした。


「君が来てくれるのではないかと思っていたよ」

「…………」

「聞かないのかい?脱走の理由を…」


(聞かずともだいたい分かるが…)


「どうしてこんな真似を…」


視線を逸らしながらそう尋ねると、山南さんは静かに語り出した。


それは、私が予想していた通りの事柄で、どれだけの葛藤があったのかが窺える。


「以前も言ったが、新選組は同志だ。誰かが誰かを憎んだりするなんてことがあっては…」

「私も同感です。ただ、」

「ただ……?」


山南さんの鋭い視線が私を捉える。


「誰かが嫌われ役を担わなければ、やっていけなかったことも事実」

「…………」

「そんな鬼でさえも、貴方の脱走に戸惑ってらっしゃった」

「土方くんが…」


頷くと、山南さんは瞳を細め次第にゆっくりと目蓋を閉じた。


「それに、本物の鬼になろうとしていたようです」


またやんわりと開けられたその眼は、酷く哀しげで。


「…それでも私は、」


やがて、いつもの微笑みが再び私に向けられる。


「我慢ならんかった。彼らのやり方が…」

「…………」

「総司、」

「これで二度目ですね。私のことを名前で呼んでくれたのは…」


真っ直ぐな眼を見つめながらそう言うと、山南さんは俯きながらまた静かに口を開いた。


「君に偉そうなことを口走っていたが、誠の武士とはどうあるべきなのか。その真意を見つけられぬままだ…」


膝の上の握り拳に滴が零れ落ちる。


(…涙……)


その水滴を横目に、私は無言のまま耳だけを傾け続けた。


悔しかっただろう。

情けなく思われたことだろう。


私達の変わりゆく姿を目にし続けて…。


だけど、どんなことをしてでも愛する人を守りたいという気持ちは、誰もが同じ筈。


「いつの日か、人の心は変わっていくものです。哀しいかな、受け入れなければならないことのほうが多い。それでも私は、」


───この命続く限り、武士として生き続ける。


当たり前のことを口にしていると思いつつ、そう告げると山南さんは目元に涙を浮かべたまま、再び私に微笑んだ。



私は、この夜のことを忘れないだろう。


最初で最後の涙を。



 ・


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───翌朝。


夜明けと共に私達は宿を出立し、ゆっくりと馬を走らせた。なるべく早く戻ると言っていたにも関わらず、いまだにあの方の元へ戻れぬもどかしさを感じながら。


深い眠りに誘われるまで語り合ったのはいつぶりだっただろうか。


改めて、愛する人を守れる幸せを噛み締めながら、心のどこかで“このまま屯所へ辿り着かなければ良い”と、思っていた。


「沖田くん」

「総司でいいですよ」

「……総司」

「はい」

「急いでくれ」

「…はい」


手綱を掴んだままもう片方の手で馬を愛撫すると、私達は無言のまま屯所を目指した。


ちらちらと舞い上がる粉雪を頬に受けながら。



艶が~る幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~


やがて、屯所に辿り着くと、偶然玄関を通りかかった土方さんに迎え入れられた。


「只今戻りました」

「ご苦労だったな、総司」

「大津の宿で休もうとした時、偶然お会いしました。いや、私を待っていてくれたようです…」


訝しげに眉を顰める土方さんの顔を見つめ、私と山南さんはゆっくりと草履を脱ぎ、土方さんの後を追うように、歩みを進める山南さんの背中を見送る。


(…どうしたって切腹は免れない)


局中法度は絶対なり。


総長が破ったとなれば、とうてい免れる訳もないことくらい承知の上だというのに。


「沖田さん」

「え…」


突然、背後から声を掛けられ振り返ると、そこにいたのは斉藤くんだった。


「春香さんの元へ戻らなくて良いのですか?」

「もう、夜まで戻れまい」

「ほんの少しでも顔を見せてやって下さい。当番なら、俺が引き受けますから」

「そういう訳にはいかないよ」


あの方なら、きっと私を信じて待っていてくれるだろうという自負もあった。


「ただ、今夜は何もない限り早く帰らせてもらうけれど」

「そうして下さい。では、私が戻って来た旨を伝えに行ってきます」

「よろしく頼む」


薄らと微笑む斉藤くんを見送り、沈んだままの気持ちを奮い立たせながら、仕事を片づける為にその場を後にした。



 ・


 ・


 ・



斉藤さんが訪ねて来たのは、丁度昼餉を用意した頃だった。


外から聴こえる聞き慣れた声に安心し、戸を開ける。


「こんにちは」

「ようこそいらっしゃいました」

「沖田さんが無事戻られました」

「……良かった」

「一刻も早く帰るように言ったのですが、今日は当番であり撃剣師範としての稽古もあるので、代わりに自分がその旨をお伝えに参りました」

「そうでしたか、わざわざありがとうございました」


ではこれにて、と言って踵を返す斉藤さんを見送ろうとして、私はお昼を食べて行かないかと声を掛けた。


「これから帰るのにまた時間が掛かるだろうし、帰った頃にはもう屯所内の昼餉も終わっているでしょう?」

「しかし…」

「昨夜作った煮物が余るほどあるのです。是非、食べて行って下さい!」


それに昨夜、どうして沖田さんが帰って来られなかったのかという事も知りたくて、その理由を尋ねたいという気持ちでいっぱいだったから。


「では、お言葉に甘え、少しだけ」

「どうぞ」


斉藤さんを迎え入れ、台所で配膳の用意を済ませると、まず斉藤さんの前に置いた。


「お口に合うか分かりませんが…」

「いただきます」

「はい」


自分の分も持って来ようと、土間に降りて間もなく。


「もしや、沖田さんよりも先に春香さんの手料理を…」


箸を持った手が一瞬、躊躇っていた。


「そうなりますけど…」

「やはり、頂けません」

「え?」


箸を戻す斉藤さんに苦笑しながら、「遠慮なくどうぞ」と、また勧めるがその手は躊躇ったまま。私も、自分の分を彼の隣に置き、もう一度笑顔で勧めた。


「沖田さんより先に貴女の手料理を頂いたとあっては…」

「そう言わずに、さ、どうぞ」


(…沖田さんからも聞いていたけれど、斉藤さんって本当に真面目で誠実な人なんだな…)


しぶしぶまた箸を握り直し、躊躇いながらも煮物に手を伸ばす斉藤さんに微笑んで、私も食べる前の挨拶を済ませ煮物をつつく。


「……美味い」

「斉藤さんの口に合って良かった…」

「春香さんは、料理の腕もおありだったのですね」

「普段は、そんなふうに見えなかったってことですか?」


少しおどけた顔をしながら微笑むと、斉藤さんは箸を持っていない方の手の平をこちらに向けながら一生懸命言い訳をし始めた。


「いえ、そういう意味では…」

「ふふ、沖田さんからも同じように言われそうですけどね」


お互いにまた微笑み合い、食べ続ける中。私は、昨夜のことを尋ねてみた。


「ところで、どうして沖田さんは帰って来られなかったのですか?」

「昨夜、市村から聞いていなかったのですか?」


逆に、そう尋ねられ私が首を横に振ると、斉藤さんは少し訝しげな表情を浮かべながら箸を置き、伏し目がちに静かに口を開く。


「じつは、昨夜。山南さんが脱走なされたのです」

「えっ?!山南さんが…」

「それで、沖田さんが真っ先にご自分が連れ戻しに行くと、仰られて」


(沖田さんが、山南さんを…)


「どうして脱走なんて…」

「それは…」


俯く斉藤さんに食い入るような視線を向けていたことに気づき、すぐに一呼吸置いた後、また心を落ち着かせながら問いかけた。


「沖田さんは…」

「先ほどはいつものように接してらっしゃいましたが、相当辛かったに違いない。それに、山南さんの切腹は免れないでしょう」

「そんな…」


箸を握る手が軽く汗ばんでいくのが分かる。


山南さんと沖田さんは、新選組となる前からの同志で、土方さんや近藤さん同様、兄の様に慕っていたと聞いている…。


そんな山南さんがどうして脱走したのか。

その山南さんを追って、沖田さんがどんな想いで連れ戻しに行ったのか。


沖田さんの心中を考えただけで、胸が張り裂けそうになる。


「詳しくはお話できませんが、今、屯所内ではそれぞれが自分の生きる道を選択せざるおえなくなっているのです。何が正しくて、何が間違っているのかを…」


(何が正しくて…何が間違っているか…)


女の私がしゃしゃり出て何が変わるというものでもないのかもしれない。でも、こんな私でも何かの役に立ちたいと思わずにはいられなかった。


「きっと、今夜にでも沖田さんからお話があるでしょう。それまでは、心の中にしまっておいて下さい」

「分かりました…」

「今夜こそは、何があっても貴女の元へ帰らせますから」


そう言ってまた、斉藤さんは汁をすすり煮物に手を付けながら微笑む。


“自分の生きる道を選択せざるおえない”と、言った斉藤さんの言葉が気になって仕方が無かったのだけれど、微笑み返しおかずに手を伸ばした。





【第17話へ続く】





~あとがき~



今年一発目にUPとなりました、「十六夜の月」ですが、はよう沖田さんとの結納や初夜を描きたいところであります(●´ω`●)ゞ


当たり前ですけど、本編では描かれることがなかった二人の新婚生活。もう私の勝手な妄想物語ではありますが、いつも、「こうだったらいいなぁ」と、思いながら書いて行きたいかな~ときらハート


次回は、山南さんの「私の分も幸せになって欲しい」という言葉通り、沖田さんと土方さんの葛藤も描いていくつもりです。


彼らの葛藤を描くのは、難しいけれど…。

やっぱ、これも「こうあって欲しい」という、私なりの解釈で書いていきたいと思います音譜


そして、新しい年を迎えて、いかがお過ごしですか?うちは今日、パパの実家へ行って来ましたラブラブ!家から、結構遠いので、行き来は大変でしたがあせる


でもって、昨夜は辻本くん出演の、「御鑓拝借~酔いどれ子籐次留書~」を観ましたキラ


辻本くん、めっちゃかっこよかったラブラブ!ヤバイくらい和装が似合ってて、血風録の沖田総司役を思い出しましたドキドキ観てた方、いますか??(/ω\)



今回も、遊びに来て下さってありがとうございましたpnish