<艶が~る、妄想小説>
「十六夜の月」 第4話
私なりの沖田さんと新撰組、そして主人公との物語どす…。
今回は、池田屋事件の続きから、屯所引き上げ後までを描きました
新撰組しか出てきません(笑)
続き、良かったら…
(≧∀≦)ノ
沖田総司や新撰組のことを調べて、私なりに書かせていただいてます。池田屋事件での斬りあいや、沖田さんの体調などにも触れて書いていますのでご注意ください
(続きものにつき、良かったらこちらからどうぞ)
*「十六夜の月」 第4話*
「おい、生きてるか?」
土方さん率いる隊士達は、一階で孤軍奮闘していた近藤さん達に加勢し、土方さんは、颯爽と刀を抜き払い、向かってくる浪士を無言で瞬時に斬り捨て、近藤さんと切り結んでいた浪士の背中を斬り払った。
「歳!」
「待たせたな」
土方さんは刀についた血を払い、なおも向かってくる浪士と切り結びながら、その近辺にいる他の隊士達に目を向け、その場にいる隊士達が無事であることを確認すると、容赦なく見つけた浪士を切り捨てていく。
「遅かったじゃねぇか…」
「……すまねぇ」
二人は背を合わせながらそう呟き合うと、近藤さんはその場で浪士と切り結び、土方さんは中庭に飛び出した。
一方、裏庭に待機していた奥沢栄助さん、安藤早太郎さん、新田革左衛門さんの三名は、裏口を出て北へ300mほどのところにある長州藩邸へ逃げようとした浪士たちを相手に切り結び、一階から逃げてきた浪士たちだけではなく、沖田さんから逃れた浪士たちを含め、数十人の浪士が二階から飛び降りてきた為、ふいな戦いを強いられていた。
当時の藩邸は、治外法権が認められ幕府の警察権も及ばなかったこともあり、腕に自信の無い浪士たちはそこへ逃げたいという一心だった。逃がさんと向かってくる彼らに対しては浪士たちも命がけの剣を振るってきた為、何度も危うい状況を迎えていた。
そんな時だった。
奥沢さんは、背後から斬りかかってきた浪士に背中を一刀された。
「ぐあぁっ」
「栄助!」
安藤さんが切り結びながら彼の前に立ちはだかると、奥沢さんは壁にもたれ掛かりながら悲痛な声を漏らしはじめる。
「おい、しっかりしろ!」
そう言うと、安藤さんは彼を庇いながら向かってくる浪士たちを斬り捨てていく。傍で奮闘していた新田さんもまた、ギリギリの戦いを強いられ大声を張り上げながら戦っていた。
多勢に無勢。
その後まもなくして、安藤さんと新田さんも重傷を負ってしまうのだった…。
そして、ようやく一階を一掃した近藤さん達は、藤堂さんの怪我を確認し見守りながら、裏庭の様子を見に行くと共に、二階から降りてこない沖田さんを気にかけ始める。
「総司はまだ二階にいるのか?」
近藤さんの問いかけに、皆顔を見合わせた。
そのうち、永倉さんが二階へ急ぐと、ぐったりしながら倒れ込んでいる沖田さんを見つけ驚きの声をあげる。
「総司!おい、大丈夫か!」
永倉さんは、彼の目の前に跪きその弱りきった身体を支えながら、真っ赤な血が彼の手を染めているのを見て驚愕した。
「お、おい……お前…斬られたのか?」
永倉さんは半ば呆然とし、階下にいる仲間の元へ急ごうとその場を立ち去ろうとしたが、沖田さんに腕を掴まれ立ち止まる。
「待って…ください……私は大丈夫です…」
「んなわけねぇだろ!血ぃ出してやがるのに…」
「……大丈夫ですから!」
「総司……」
永倉さんは、顔面蒼白な沖田さんの顔を心配げに覗き込みながらも捜査が終了した事を伝えると、肩を貸しながらゆっくりと立ち上がり、彼の身体を気遣いながら長い廊下を歩き出した。
「すみません……数名、取り逃してしまいました…」
「そんなこと気にするな…この暑さの中、具合悪いのに一人で切り結んでたんだ…」
「……………」
黙り込む沖田さんを横目に永倉さんはゆっくりと裏階段を下り、やがて二人は一階で待つ近藤さんたちと合流すると沖田さんは、裏庭で倒れた奥沢さんたちと共に抱え込まれるようにして運ばれたのだった。
五人は応急手当を受けるため祇園会所に運ばれたが、奥沢さんは手当も空しく死亡が確認され、重傷を負った藤堂さんと安藤さんと新田さんは、傷口が深いながらも何とかその命を取り留めていた。
討ち入り開始から、約二時間後の午前零時までには屋内の捜査は完了し、池田屋に残された遺体の中には、尊皇攘夷派の活動家である宮部鼎蔵らの姿もあり、捜査が終わる頃までには、数百人にも及ぶ会津藩の兵らが池田屋の周りを取り囲んでいたが、池田屋内で起こった事件のすべては、わずか34人の新選組一手で行われたのだった。
そして、倒れ込んだ沖田さんもまた、自分の身体の異変に気づき始めていた…。
屯所引き上げ後、土方さんは就寝前に永倉さんを呼び出し、討ち入り時の報告をさせていた。
「しかし…土方さんたちの来るのがもう少し遅かったら危なかったかもな。いや、討ち死にしてたぜ…」
「四国屋が蛻(もぬけ)の殻だったとはな…」
「平助、早太郎、左衛門は重傷だしよ…特に、左衛門の傷は酷いもんだ…」
「ああ…。ところで、総司の具合はどうなんだ?」
土方さんに尋ねられ、永倉さんは眉を顰めて呟いた。
「相変わらずただの貧血だって言い張って医者に掛かろうとしねぇんだが、俺が思うに呼吸器のどっかを患ってんじゃねぇかと思うんだよな…」
永倉さんは、沖田さんがここ数日、ずっと咳き込んでいたことと、暑さの中戦ったことが災いして起こった発作なのでは無いかと説明した。
「昨日の今日なのに…あいつ、咳も治まりピンピンしてたから…まぁ、大したことはねぇと思うんだが…」
「だが……なんだ」
言いよどむ永倉さんの顔を見つめながら、土方さんが鋭く尋ねた。
「俺が二階に駆けつけた時、酷く咳込んでて…少量だが手や口元に血がついてやがったんだ」
「斬られたのか…」
「いや、返り血だろ…あいつが雑魚相手に斬られるとは思えねぇ…」
「…………」
「ま、近いうちに医者に診せねぇとな…これ以上酷くなる前によ」
そう言うと、永倉さんは苦笑しながらゆっりと立ち上がり静かに部屋を後にした。
「…ったく、世話の焼ける野郎だ」
土方さんは、溜息をつきながら立ち上がり障子を開けて縁側へ出ると、少し離れた場所で月光浴をしていた沖田さんを見つけ声をかけた。
「まだ起きてたのか…」
「……熱くて眠れなくて」
「そうだな…今夜は特に蒸す」
言いながら、土方さんは沖田さんの隣りに正座をすると、また静かに口を開いた。
「体調はどうだ」
「ええ、もう大丈夫です。今日は咳も出ず調子が良かったですし…」
沖田さんは視線を月に戻し、「綺麗な三日月ですね…」と、言うと、土方さんも同じように月を見上げながらポツリと呟いた。
「お前、俺に隠し事とかしてないだろうな…」
すると、沖田さんは何かを思い出すような顔をし、楽しげに話し出す。
「それなら沢山ありますよ。この間、原田さんたちと土方さんの発句を盗み読みしてしまったとか、土方さんが大切にしていた盆栽を落して壊してしまったのは私ですし…」
「…な…んだと?」
沖田さんは、見る見る鬼の形相へと変わる土方さんを見ながらくすくす笑うと、「隠し事などありませんよ」と、微笑んだ。
しかし、その清々しい笑顔はすぐに消え、節目がちに一点を見つめながら、「でも、私が倒れなければ浪士たちを逃がさずに済んだはず…」と、小さく呟いた。
「分かってるならちゃんと診て貰って来い…いいな」
「……はい」
「やけに素直じゃねぇか…」
土方さんは、ふっと微笑むと、ゆっくり立ち上がりまた自分の部屋へ戻って行った。
そして、彼は膝を抱え込み悲しげに目を細めながら呟いた。
「月が紅色に染まって見えるのは…私だけなのか…」
月明かりに照らされた彼の瞳は、美しくも儚げに輝いていた…。
~あとがき~
今回も、読んで下さってありがとうございました!
しかし、いろいろ調べてみると面白い!
池田屋事件には、いろいろな説があるみたいですね♪
私は、近藤班に原田さんを登場させてしまいましたが…原田さんは土方班に同行していたとか、土方さん班は四国屋方面を視察したあと、池田屋へ向かったが加勢はしていなかったとか、その代わり、井上源三郎班が近藤班に加勢していたとか!
それに、沖田さんの病にもいろいろあって…。
永倉新八の手記には、「呼吸器疾患」とだけ、書かれていて…池田屋事件の際も、血を吐いたとかいうことは書かれていなかったとか…。
それじゃ、池田屋では、ただ咳き込んでいただけなのか?みたいに思ってみたり。
新撰組、かっけー!!
それが、今回の一番の感想でした。
まだまだ説明不足な妄想小説ではありますが…。
。・゚・(ノε`)・゚・。