<艶が~る、二次小説>


もう一つの沖田総司物語も、何だかんだともう15話目きらハート艶が~るの沖田さんを意識しつつ、新選組のことを勉強しながら本編とは違った展開、本編では描かれなかった二人の想いなんぞを書いて来ました。


もう、これまた私の勝手な妄想物語ではありますが…良かったらまた、お付き合い下さいきらハート


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【十六夜の月】第15話



「これからどうするつもりだ?」

「歳、そう焦るな」


近藤と土方は、伊東らの動向について話し合っていた。


「あの門流には討幕派が大勢いる」

「そうだな。だが、お前は大袈裟過ぎる」

「何だって?」


土方は、近藤の言葉に耳を疑った。


新選組の幹部の中で、北辰一刀流といえば、総長の山南と助勤の藤堂がそれにあたり、どちらも、江戸の近藤道場の頃からの同志である。


だが、天然理心流である、近藤、土方、沖田、井上からすればどこか色が違っている。分かりやすく言うならば、北辰一刀流が幕閣(幕府の最高首脳部)であるなら、天然理心流は一般庶民のような違いがあるのだ。


「このままじゃ、新選組は討幕攘夷論者の集まりになっちまう」

「そのことに関しては、もう少しだけ様子を視て貰っている」


(手遅れにならなけりゃいいがな)


土方は心の中でそう呟きながら、ゆっくりと立ち上がりその場を後にした。


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一方、屯所へ戻ってきた沖田は真っ直ぐ土方の部屋を目指した。両手に団子を持って。


「沖田です」

「入れ」


沖田は、団子の乗った皿を片手で持ち、もう片方の手で襖を開閉すると、嬉しそうな顔をしながら土方の前に腰を下ろす。


「これ、いつもとは違う店で買ってきたのですが、美味しそうでしょう?」

「おめぇ、いい度胸してやがるな」


土方が苦手だと知りつつ、本人の前にお皿を置き一口頬張って見せた。


「うん、美味い。土方さんもお一ついかがです?」

「てめぇ、どういうつもりだ」

「怒らないで下さいよ。食が細くなってからは、こうでもしないと大好物の団子でさえ喉を通らなくなっているのですから」

「…………」


(…ったく…)


「嫌な野郎だ…」


そんな言葉でさえ気にしないとでもいうように、沖田は次々と団子を頬張り続ける。


「そんだけ食えんだから、もう大丈夫だな」

「ええ。でも、本当に要らないのですか?」

「要らん!」

「美味しいのに…」


土方の怒り顔を逆に楽しむように、沖田はくすくすと笑った。


「土方さん」

「なんだ」

「山南さんも悩んでらっしゃるようですね」

「それがどうした」

「いえ、いつだったか山南さんが言っていたのですが…」


──沖田くん。私達は同志であり、主従の関係を築きたいが為に上洛した訳では無いんだ。


山南は、局長も隊士らと同等であるべきだと話していたのだ。


「正直、私も同感でした」

「…………」

「土方さんもそう思いませんか?」


沖田の問いかけに、土方は平然と答える。


「俺は、近藤さんについていくだけだ。お前はどうなんだ?」

「局長や副長が、幕閣気取りでは困ります」

「俺が?阿保か、柄でもねぇ」


仏頂面のまま言い放つ土方に沖田は安堵の息を漏らして、


「それを聞いて少し安心しました」

「そんなことより、いつ祝言を挙げるつもりか知らねぇが、今のお前には守らなければならない命が二つある」

「二つ?」


沖田は、柔和な笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がる土方を見上げた。


「だから、お前はなるべく長生きすることだけを考えろ」


そう言って、その場を後にする土方の背中を見送り、


「まったく、うちの副長には敵わないなぁ…」


沖田は、庭に目を向けながら薄らと微笑んだ。


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空が藍色に染まり、星々が瞬き始めた頃。


春香は、早目の夕餉を済ませた後、沖田の為に風呂を沸かしていた。


「ふぅ~、ふぅ~…」


薪を焼べながら一生懸命息を吹き込む。


(…早く帰って来ないかな…)



そんな小さな願いすら天に届かず。


その夜、沖田が家に戻って来ることは無かった。




艶が~る幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~



一方、その頃。


「山南が…」


土方は、目の前に正座する山崎を見つめながら呟いた。


慶応元年、二月二十七日。新選組総長、山南敬助が近藤宛に書状を残して脱走したのだ。


監察方の山崎から詳細を聞くにあたり、次々とその真実味が増していく。


「副長にもお知らせしたほうが良いかと思いまして」

「ご苦労だった」

「いえ」


静かにその場を後にする山崎を見送ると、一点を見つめながら山南の心情を考えた。


(…山南…)


「土方さん」


山崎の代わりに部屋へと入って来たのは、沖田だった。


「もう帰るのか」

「はい、これから…」


春香の待つ新居へ戻ることを告げようとして、沖田はすぐに言いよどんだ。


「どうかしたのですか?」

「…何でも無い」

「顔色が優れないようですけど」


そう言いながら、沖田は土方の前に腰掛け風呂敷包みを横に置いて静かに口を開く。


「何があったのです?」


(…こいつに嘘はつけねぇか…)


「山南が脱走した」

「え…」


一瞬、鋭い視線が土方に向けられる。


「…そうですか」

「驚かないのか?」

「驚いていますよ。大変なことになりましたね」


どんな時も、笑顔でいようとする沖田が哀しげな表情を浮かべている。二人は江戸の道場にいた頃からの付き合いで、酸いも甘いも噛み分けた仲だった。


「山南さんがどんな想いで脱走したのか…」


そう言いながら、沖田は土方を見た。


「…………」


(…だんまりですか…)


「土方さんも、山南さんも…私にとってはある意味兄のような存在で…いつも、こうならなければいいのにと、思っていた」

「こればかりはしょうがないことだ」

「それはなんとも…」


沖田は、その後の言葉を丁寧にしっかりと伝える。


「鬼らしい言い分だ」


(こんな表情、久しぶりに見たな…)


沖田は心の中で呟くと、


「申し訳ありません、それほどまでして鬼になろうとしていたとは…」

「何が言いたい」


土方は、からかうような沖田に苦虫を噛み潰したような顔で言うと、沖田はそんな土方に微笑んで、


「私が」

「…総司」


今度は、瞳に驚愕の色を浮かべる土方に真剣な眼差しを向けた。


「私が連れて参ります」




それから、沖田は隊士を新居へ向かわせ、江戸を目指して馬を飛ばした。山崎から詳細を聞いていた土方が言うには、「まだそう遠くへは行っていない筈。東海道を行け」とのことだった。


真冬の寒さが沖田の体から熱を奪い。冷たすぎる夜風が鼻から口から容赦なく入りこみ、大きく咳き込んだ。


「くそっ…」


(…山南さん…)


沖田は、口元を朱色に染めながら独り、山南への想いを胸に抱いていた。





【第16話へ続く】





~あとがき~


まずは、東北関東にお住いの方へ!昨夜の久しぶりの大きな地震、大丈夫でしたか?あせるうちは、夕飯の支度をしていましたあせる


テレビから、あの嫌な音がして…すぐに火を消しましたともガーンこれからも、大きな余震が来るかもしれません。気を付けたいですね…。


山南さんを連れ戻しに行く沖田さん…。いろいろ調べていましたが…真実はどうなのだろう?本当に、山南さんは切腹したのだろうか?


俊太郎さまに引き続き、謎だらけでありました汗


また良かったら見守りに来てやって下さいキラキラ