『養生訓』 老後の楽しみ(巻八4) | 春月の『ちょこっと健康術』

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おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

老後は、わかき時より月日の早き事、十ばいなれば、一日を十日とし、十日を百日とし、一月を一年とし、喜楽して、あだに、日をくらすべからず。つねに時日をおしむべし。心しづかに、従容(しょうよう)として余日を楽み、いかりなく、慾すくなくして、残躯をやしなふべし。老後一日も楽しまずして、空しく過ごすはおしむべし。老後の一日、千金にあたるべし。人の子たる者、是を心にかけて思はざるべんけや。


老後は、若いときに比べて、十倍に相当する早さで日月が過ぎていくのだから、一日を十日とし、十日を百日とし、一月を一年として、喜び楽しみ、むだに一日を暮らすようなことをしてはいけない。いつも時間を惜しまなければならない。心静かにして、落ち着いてゆったりとして、残った年月を楽しみ、怒ることなく、欲を少なくして、残っている身体を養うべきである。老後はわずか一日でも、楽しまないで空しく過ごすことは、惜しまなければならない。老後の一日は、千金に値するものである。人の子たるものは、このことを心にかけて思わないでよいはずはないのだ。


昨日は「老人は小児を養うごとく」 で、若い人の老人に対する心構えを書いたものでしたが、今回は老人自身の心構えですね。


歳をとると1年間を短く感じるという話、以前「猫背は美容と健康の敵」 で取り上げたことがありますが、益軒先生も同じように感じられていたんですね。しかも、若いときの10倍とおっしゃっています。だからなおさら、養生して楽しく心豊かに過ごしなさいと。益軒先生は84歳で亡くなっていますが、養生訓の出版はその前年ですから、ぎりぎりまで楽しく過ごされたのでしょうね。


春月の『ちょこっと健康術』-百日草