『養生訓』 早起きの効(巻五15) | 春月の『ちょこっと健康術』

春月の『ちょこっと健康術』

おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

五更に起きて坐し、一手にて足の五指をにぎり、一手にて足の心をなでさする事、久しくすべし。此の如くして足心熱せば、両手を用いて両足の指を動かすべし。右の法、奴婢にも命じてかくのごとくせしむ。或いはいう、五更にかぎらず、毎夜起きて坐し、此の如くする事久しければ、足の病なし。上気を下し、足よはく立ちがたきを治す。久しくしておこたらざれば、脚のよはきを強くし、足の立ちかぬるをよくいやす。甚だしるしある事を古人いへり。養老寿親書、及び東坡が説にも見えたり。


五更に起きて座り、一方の手で足の五指をにぎり、他方の手で足の心(足の裏)を長くなでさするとよい。このようにして足心が熱くなったら、両手でもって両足の指を動かすとよい。以上の方法は下男に命じてやらせるのもよい。あるいは、次のようにもいう。五更にかぎらず、毎早朝暗いうちに起きて座り、長くこのようにすると、足の病いにかからない。上気(のぼせ)を下ろし、足が弱く、立ちにくい状態を治す。これを長い間続けて怠らずにいるとと、脚の弱いのを強くし、立たなかった足を癒す。古人も大いに効能があることを認めている。『養老寿親書』の中に、また蘇東坡(そとうば)の説の中にもいわれている。


五更というのは、夜明け前あたりで、今でいう午前3時~5時くらいです。さすが益軒先生、かなり早起きですね。導引術は、寝る前だけでなく、起きたときにもやると、気のめぐりがよくなって、特に足にとてもよいということ。交通手段が歩くことだった時代ならでは、なのかもしれません。


導引とは、古代中国道家の健康術で、健康体操のようなものや益軒先生のいうような按摩術に近いものがあります。気功体操や太極拳などの基礎になっています。


1973年に湖南省の馬王堆(まおうたい)漢墓から発掘された帛書(はくしょ)には、東洋医学の文献とともに、鳥や獣の動作をまねた「導引図」がありました。


春月の『ちょこっと健康術』-導引図


映画「レッドクリフ」に登場する魏の曹操は、片頭痛持ちだったと言われています。その曹操の主治医を務めた華佗(かだ)は、『五禽戯(ごきんぎ)』という導引術を考案して、「虎、鹿、熊、猿、鳥の動作をまねて身体を動かし、汗をかくと食欲増進によい。」と説きました。華佗は名医であり、医書や特効穴として今でも使われる華佗夾脊穴にその名を残しています。TVゲームの三国志では、隠れキャラとして登場するらしいですね。


これまで『養生訓』に登場した導引に関するものはこちら↓

「導引」

「導引の方法」

「膝から下の導引」

「導引、按摩をしてはいけないとき」