気のよくめぐりて、快き時に、導引按摩すべからず。又、冬月按摩をいむ事、内経に見えたり。身を労働して、気上る病には、導引、按摩ともにあしし。只身を静かに動かし、歩行する事は、四時ともによし。尤も飯後によろし。湧泉の穴をなづる事も、四時ともによし。
気がよくめぐっていて、快適なときは、導引や按摩をしてはいけない。また、冬季の按摩を避けたほうがよいことは、『内経』に書かれている。身体を動かして気が上がる病いには、導引、按摩のどちらもよくない。ただし、身体を静かに動かして、歩行運動することは、四季のいずれでもよく、食後にするのがもっともよい。湧泉穴(足心)をなでることも、四季を問わずいつでもよい。
益軒先生のお好きな導引・按摩ですが、やらないほうがいいときについても書かれています。気がめぐって快適なときは、やっちゃいけないというよりも、やらなくていいってことでしょうね。
『内経』は『黄帝内経』(こうていだいけい)のことで、中国古代の医学書であり、『素問』(そもん)と『霊枢』(れいすう)の2部構成になっています。東洋医学の基礎理論は、この『内経』から始まっています。
身体を動かすと気が上がる病気としては、高血圧症や狭心症などの心疾患があてはまりますが、導引・按摩がよくないとされる根拠はどこにあるのでしょうか。少なくとも、益軒流導引では、気を下げるのですから、反っていいような気もしますが。これについては、調べてみますね。