ガダルカナル戦書籍一覧


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西部戦跡へ より続いております。
カミンボ・ビザレ教会前で倒木に前進を阻まれ次に向かった戦跡は山月丸擱座位置。

↓は一昨年末から数度の訂正を加えほぼ間違いないであろう輸送船擱座位置


↓は山月丸の擱座位置を特定してくれた 参考資料・戦史叢書より


ここで山月丸について触れたいと思います。

世の戦史の多くには
山月丸(山下汽船 6,438㌧)
第二次高速船団輸送十一隻のうちガ島に辿り着いた四隻のうちの一隻。
※四隻はいずれもタサファロングで擱座
昭和十七年十一月十四日未明ガ島タサファロングに於いて米軍機の空爆を受け擱座。

とあります。



山月丸には後に西飛行場を爆破した寺沢挺身隊中澤挺身隊さらには帰らざる挺身隊と呼ばれた大野挺身隊の工兵第三十八連隊・岩淵部隊が乗船していたとされる。

※高橋辰雄著「護衛船団史」平成元年発行 より山月丸谷山二等航海士の記録。

第二次高速輸送船団は出撃前軍より次の命令を受けていた。
①本船団はガダルカナル島に強行上陸する。
②各船は午前三時には令なくして帰投すべし。
③船長は船舶並びに乗組員の最後措置に関し、あらかじめ十全の考究を要す。

山月丸はタサファロング突入後も擱座せず、兵員食糧を揚陸している内に軍命令の午前三時となってしまった。
兵員の揚陸は完了していたが物資は未だ揚陸中、それまで作業を見ていた工兵三十八連隊・岩淵連隊長は午前三時になるとブリッジに登って来て
「船長、いろいろお世話になりました。ありがとうございます。あなた方の武運長久を祈ります!」
と挙手の敬礼をしながらニッコリ笑った。
吉野船長は岩淵部隊長に尋ねた。
「現在、午前三時ですが弾薬食糧はまだ揚げ終わっていませんが、どうしましょうか?」
これに対し岩淵部隊長は冷静に
「いや、午前三時で作業を打ち切れとの命令ですから、やめて下さい。あれだけ揚げれば充分です。我々のほうは何とかしましょう。」
そう言って岩淵部隊長は舷梯を降りて行った。それが永遠の別れとなった。


この場面の後、山月丸は北方へ舵を取り帰投を開始するも沖合いには六隻の敵艦・・・
山月丸の幹部達は脱出か擱座かの激論を交わすも船長は擱座を決意、谷山二等航海士に擱座を指示する。

山月丸の航路「船舶砲兵」より

此の資料をもっと早く入手していれば各輸送船の擱座位置特定が容易に出来たものをと残念に思いつつも、自分の特定した擱座位置の再確認が出来た貴重な資料であります。
この資料より揚陸地点はドマ湾東方だと知る事が出来ました。

谷山航海士の回顧
そのとき私は当直航海士でしたので、私が船を操縦することになりました。
なにしろ浅瀬の多いところですから、岩に乗り上げぬよう微速で進みました。
遠浅の砂浜を見ながら此処だと思ったとき「取舵一杯!」と返針を命じまこと静かに擱座しました。
昭和十七年十一月十五日午前四時十六分、タサファロング岬の南方(西方?)テナロの砂浜で
した。


特殊潜航艇と共に写る山月丸


擱座の後、米軍機は爆撃・雷撃・銃撃とカサにかかって攻撃を開始し最初に砲弾の残っている六番艙より出火、急ぎ揚陸隊・船舶砲兵・乗組員とやっとの思いで全員の上陸を完了。
最後に船橋で仁王立ちで動こうとしない船長を引き摺り下ろし伝馬船に乗せている。
山月丸から伝馬船を漕いで離れたとき、飛来した雷撃機が魚雷を二本投下、轟音。

山月丸が擱座した浅瀬で魚雷が使用可能だったのかと大いに疑問に思っていたのでありますが・・・
この写真が現実を裏付けております。

以降、船長以下七十八名、七十八日間、ガ島で苦難の飢餓生活を強いられることとなった。
駒宮七郎氏著「船舶砲兵」昭和五十二年発行には山月丸船舶砲兵の回顧録と共に、山月丸 船員関係 七十二名戦死、帰還六名と残されている。

飢餓の島、ガダルカナルで糧秣交付も無い中、前線への糧秣・弾薬運搬に徴用され病魔・空爆・艦砲射撃により櫛の歯が欠けるが如く冥府へ旅立たれたのは容易に想像がつくのであります。

山月丸船員のご冥福を祈念申し上げつつ向かった擱座位置の現在は・・・

カミンボより東進、対向車を待つこの橋・・・


降り続く雨で荒ぶるアルリゴ川


さらに東進、車を突っ込める林間を発見し


海岸線、現在地の座標は


取り急ぎ海に向かって右(東方)

丁度、突端でありました。

左(西方)


嗚呼・・・黄丸付近に居なければならない山月丸の姿を・・・

見ることは叶いませんでした。

足許を見れば

御慰霊に訪れた御遺族が御骨と見間違えたという珊瑚・・・

降り続く雨の中で山月丸乗組員のご冥福を祈り・・・黙祷・合掌

事前に村人より「今、山月丸無い」と聞いてはいたものの目の当たりにすると何ともいえない寂しさを感じたのでありました。

つづく


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石坂准尉の八年戦争さま
と相互リンクさせて戴きました。



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