【53】繰り返した夏 | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


彼が、車を変えた。

前々から、その意思があることは聞いていたけれど、
まさに青天の霹靂。

車種や色も聞いていなくて、プールデートの日に
彼との待ち合わせ場所に行ったら・・・ ドーン、と。

以前の赤いスポーツカーと、同じメーカー。

青い四駆に変わっていた。

車高の低い、あの車からコレ・・・?
こんなに極端に、趣味が変わるもの?

私はこっちの方が好きだし、とても良かったけれど、
何かひとこと言ってくれたら嬉しかったのに、なんて思ってしまう。

突然変えて、驚かせようと思ったのかも・・・しれないけど。

.
.

新しい自慢の愛車で、二人の友達を迎えに行った。

沢田ちゃんも、岩田さんの友達も、
人見知りをするタイプではないようで、会ってすぐに意気投合している。

無理をしている様子でもないし、ひとまずは私も安心した。


・・・が、ひとつだけ、平静でいられないことがある。


岩田さんが提案したプールとは、数年前に “デート” で来た場所。
あのテーマパークに、併設されているのだ。

プールへ行くにも、遊園地へ行くにも、同じゲートをくぐる。


きっと、これも試練なんだよね。

いつまでも想い出を切り離せない私への、罰なのか。
いい加減忘れろと、戒められているのか・・・。


ゲートを抜けると現れた、正面の大きな花壇。

あの日は、夏の終わりかけだった。
でも今日は、夏の真っ盛り。

ずっと先を見つめ、想い出を瞼に映す。

しかし、そうもしていられない。
案内板に従い、すぐ右側に曲がり進んでいった。

.
.

だだ広い、ロッカールーム。

子供の頃、従姉などと遊びに出掛けたとき、
こういう場所に来た覚えがある。

やっぱり何か、落ち着かない。

自分と同じ年頃の女の子は、露出度の高い水着を着ていて、
しかもそれがとても似合っている。

そして、沢田ちゃんも・・・


「わ~!似合うね!!」


薄い青が基調のビキニ姿に、目が点。
以前、試着姿を見たけれど、こういう場所だからか、
何倍も可愛く見える。

私も、沢田ちゃんと選んだ水着に着替えたけれど、
逃げ出したくなってきた。


「やっぱ、その色いいよ。うん、似合ってる!」

「・・・大丈夫かなぁ?
 って、このパレオは、こんな感じでいいのかな」

「うん。そうそう。ここをこうして・・・ OK!」


形はワンピースで、色は赤に近いオレンジ。
エキゾチックな柄の・・・ というと、
抽象的すぎて解り難いが、そんな感じの水着。

それに、同色のパレオがついている。

ワンピースって、ウエストに自信がない人が着たら
ダメなんだなぁ・・・。


沢田ちゃんは、少し考えるようにして呟いた。


「椎名ちゃん、前よりも痩せたよね?」

「ん・・・うん。少しね」

「やっぱ、恋をすると変わるのかな~」


茶化すように言われたが、そういうことではない。

再就職をしてから、少しずつ体重が落ちていった。
丁度良いダイエットになっているが、
思い返せば、あまり良い痩せ方ではなかったと思う。


「待たせても悪いし、そろそろ行こう」


沢田ちゃんは、大きな鏡の前で最終確認をするように、
背中や横を、クルクルと見ている。


「何度も見なくても、バッチリだよ。
 あの彼も、沢田ちゃんに惚れちゃうんじゃない?」

「ええっ!?どうしよう~」


二人でおどけて見せるが、本当は、
彼に笑われないか、何か言われないか・・・
笑顔で頷いたが、内心は緊張して吐き気がするほどだった。




・「この人誰?」と思ったら → 登場人物
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