死後の世界―「あの世」とはなんとすごい世界なんだ
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地獄の舞踏会



小悪魔は広場の砂の上に飛び降り玉座の前に並ぶ罪人の群れに合図した。

すると、他の悪魔が叫びや悲鳴と共に'広場の中央に罪人たちを引いてきた。

それから、無数の炎が交叉しながらへあらゆる方向に向かって地面から吹き出した。

何千という数の、色と-どりの火の玉が空中に上った。

燦然たる照明がホール全体を照らし出した。

残りの罪人たちと悪魔らが、耳を覆いたくなるような大声を上げ、口笛を鳴らす中、突然、数千人のバレリーナが入場してきた。

みな同様に短いスカートをはき、背をはだけて'イバラの花冠を被っている。

踊るたびに、冠が激しい痛みを起こした。

バレリーナは悲しげにサタンの玉座を回りながらへ練習を重ねた古典バレーを演じた。

そこに見る複雑なステップの意味が、私にはわからなかった。

彼女たちは、前の世ではバレリーナだったが、享楽のためにしか生きず、罪を罰する霊界の存在をまった-考えなかったのだ。

それから、数百人のプリマドンナが広場に踊り出てきた。

世界が輩出した重商のバレリーナばかり。

彼女たちが地獄にいたのは快楽だけを追求したからである。
あらゆる国から集められていた。

目には悲しみが宿り、辛さを覆い隠すかのように、唇を噛んでいる。

それが言葉以上に苦しみを物語った。

だが、彼女たちは舞踏の技術を忘れていなかった。

透き通った亡霊のように'やかましい地獄の伴奏に合わせ、軽く、優雅に、舞台の上をつま先で飛んだ。

誇らしげに顔を上げ過去の栄光に浸る者もいれば、失われた過去の栄光に泣-者もいる。
陰気な主人の前で、ときどき絵のような美しいポーズをとったが、サタンは喜ばず冷笑するだけだ。

小悪魔たちも主人に倣gHi 観客はだんだん見るのに飽きてきた。

数人の踊-子が途中で力尽きて倒れると、冷酷な小悪魔が馬乗-になって、顔が変形するほど殴-つけた。

脆いて許しを願うが'聞いてもらえない。

サタンは

「つまらん。悲しい!」

と突然大声を上げた。

彼は'巨翼を広げて立ち上がり、目から火花を散らして周囲を見回すと'深く眉を寄せた。

すると、彼をなだめようと羽音を立てて虫が飛んできた。

それがきれいな聖歌に変わったが、サタンは悲しい思いに浸っているようで、開こうとしない。

その目は遠くに向けられていた。

それから,サタンを喜ばそうと'聖歌隊が立ち上がると'火の矢が彼らの胸を突き刺した。

次に,さらに多くのバレリーナ、曲芸師へピエロ、奇術師が繰り出し、演芸に力を入れた。

私は一人の赤毛の道化師が気になった。

彼が難しい動きをして、転び'顔を歪めると、笑いが起きたが'私は彼の胸の苦しみを感じて同情を覚えた。

彼は、灰色の悪魔によってへ他の者とl緒に連れ出された。

喜びはない。

ただ、恐怖だけが歌と舞踏を支配している。

すべてが恐怖と暴力に包まれていた。

突然、緑色の目をした半透明の奇怪な生き物が、クモの子を散らすように飛び散り、罪人たちを噛んで'耐えがたい苦しみを与えた。
広場は断末魔の叫びに包まれたが'それでもサタンは満足せず、さらに多くを求めた。

彼は目から火花を散らしながら、王者のように手を振って'小悪魔
に合図した。

小悪魔は罪人の群れに飛び込んで、彼らを叩き男も女も狂った踊りに駆り立てた。

何もかもが、目を覆いた-なるほどぎらぎら輝いている。

それから、空中にあった火の玉が'踊り狂う群れの上に落下し'溶けた熱い金属となって体にかぶさり、音を立てて焼き焦がした。
地面から火の手が上がと蛇が火の帯を巻きつけるかのように'罪人たちの体を覆った。

私は騒音で耳が聞こえなくなってきた。

大広間の目に見えない亀裂からは'硫黄の煙が霧のように立ち昇り、場所を埋め尽くした。

光が消え,翼をさする音が聞こえたときに'私は震え懐いた。

サタンが、巨翼を広げて飛び立ったのだ。

彼は、緑色の煙に包まれた罪人たちと小悪魔全員の上に来た。

何かを咳き、勝利の笑い声を上げたが、言葉を聞き取ることはできなかった。

最後に,濃い霧が晴れたときに、次に起こることを'ほっきりと見ることができた。

苦しみに耐えかねた罪人らが'魔物に立ち向かったのである。

激しい戦いが起きたが'容赦ない魔物たちが勝ち'罪人たちは鎖に繋がれた。

これが,サタンの祝う年に一度の祭りだった。


ゴロゴロという無気味な音が頭に響いたときに'視界が霞み,一陣のつむじ風が、わたしを洞窟から吹き出した。


それは未知の力によるものだった。