これまで「眠る旧日本海軍」シリーズとして幾つもの軍艦を、その海底写真があれば併載しながら艦種別に紹介して来ました。

ただし駆逐艦と巡洋艦は数が多いので海底写真があるもののみ記事にしてきたところ、巡洋艦の写真がなかなか見当たらず、軽巡洋艦「酒匂」を紹介するに留まっています(「すずさんの見た旧日本海軍の艦艇たち」シリーズを除く)。

 

そんな中、1ヶ月ほど前に「こちら」のサイトを通して、重巡洋艦「羽黒」への海底ダイビング動画を発見。ブックマークをして記事にする機会を伺っていたのですが、モタモタしているうちに何と動画が消されてしまう事に。せめてチャプター画像を幾つか切り取っておけばよかったと後悔しきりでした。

 

ところがすぐに「羽黒」の別の海底動画が見つかりました。

2014年8月14日にNHKニュースウォッチ9で取り上げられていたんですね。

当時のニュース動画は→こちら

 

 

ニュース映像なので画質は悪いですが、主砲が印象的です。

沈没地点はマレーシアのペナン島沖で、2003年にダイバーらによって発見されました。この海底映像は2010年に撮影されたものと紹介されています。

 

 

 

 

 

なぜNHKのニュースに取り上げられたのかというと、サルベージ業者による違法な鉄屑目当ての無断引き揚げ、つまりは船体まるごとの盗掘に遭っていたからです。業者は2014年5月にマレーシア海運当局の摘発を受けました。

 

 

 

 

まあ、最初に動画を見つけたサイトで「羽黒」の無断引き揚げは知らされていたもののの、改めてニュース動画を見ると、やるせない気持ちになります。

現在、「羽黒」がどれぐらい海底に残っているかは分かりません。近くで沈んだ軽巡洋艦「球磨」、特設砲艦「長沙丸」も、同様の被害に遭っているそうです。

 

マレーシア「Star online」2014年5月22日付 より (被害に遭った日本軍艦の解説あり)

 

何だか「眠る旧日本海軍の巡洋艦たち」というシリーズ題名にそぐわないような「羽黒」の悲惨な現状ですが、気を取り直してこの巡洋艦を振り返ってみます。

 

「羽黒」は「妙高型」重巡洋艦4番艦として1929(昭和4)年4月に竣工。

対米英開戦初頭のスラバヤ沖海戦では、僚艦たちと共同で敵重巡洋艦1、軽巡洋艦2、駆逐艦2を撃沈しています。その後も珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦、第二次ソロモン海戦、マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦などを戦い抜きました。

 

1943年、ラバウル空襲下の羽黒 (Wikipedia より)

 

「羽黒」最期の戦いは1945年5月、輸送任務中に起きたペナン沖海戦で、出港時に修理も満足に出来ないまま、艦上にも物資を満載した状態で交戦(おかげで砲塔の旋回すらままならなかった)。加えて故障で速力が落ちていた事により、随伴していた駆逐艦「神風」を離脱させる為に自らの離脱を断念し、英海軍駆逐隊からの魚雷3本の命中が致命打となって沈没。約400名余りが戦没しています。

 

以下、沈没地点データは「Googleマップで見る軍事的スポット」参照。

 

 

 

【関連記事】

眠る旧日本海軍の巡洋艦たち⑥ 重巡「摩耶」もフィリピン近海にて発見さる(2019/07/07)

眠る旧日本海軍の巡洋艦たち⑤ 日本の重巡洋艦の始祖「古鷹」(2019/05/11)

眠る旧日本海軍の巡洋艦たち④ ソロモン海で奮戦した「神通」(2019/05/10)

眠る旧日本海軍の巡洋艦たち③ 長年日本海軍を下支えしてきた「球磨」(2018/04/16)

眠る旧日本海軍の巡洋艦たち① ビキニ環礁に沈む「酒匂」(2016/02/29)