わたしが着物と同じくらいの年月を捧げております、
音楽。
その中でも、学生時代から興味をもって取り組んできたものに、調性があります。
調性というのは、西洋音楽に欠かせない概念でして、
ハ長調、
ト長調、
というものです。
♯や♭の数が変わると、調が変わる、という仕組み。
その調性ですが、現在では、12平均律という、オクターブを均等に12に割ったものがメジャーです。
でも、19世紀までは(この時期には諸説あり)、12に均等に割るのではなく、それぞれの調性で、ドレミ……の幅(音程)が違う調律法がメジャーでした。
簡単に言うと、
現在の調律法では、
シャープもフラットもつかないハ長調でも、♭1つのヘ長調でも、♯が7つの嬰ハ長調でも、
聞こえる音は理論的に、高くなるか低くなるかで、個々の音程はどの調でもすべて同じ。
けれど、一昔まえの調律法でいけば、
ハ長調にはハ長調の、ヘ長調にはヘ長調の、嬰ハ長調には嬰ハ長調の、
固有のドレミファソラシドの並びと、それによる、固有の響きをもっていた、
ということなのです
そして、その固有の響きから、
運命的な調性。
牧歌的な調性。
壮大な調性。
などの、各々の調がある種の性格を帯びることとなりました。
そして、その調の持つ、固有の響きとイメージを最大限に考慮し、イメージして、作曲家は曲をかくのだよ。
というのを、紹介したのが、こちらの本です
1冊でわかるポケット教養シリーズ
吉松 隆の 調性で読み解くクラシック yamaha
著者は、
プレアデス舞曲集
という、洒落たピアノ曲集を発表されている作曲家です。
(もちろん、他にも作曲数は多数です)
子供のころは、「手塚治虫のような漫画家かお茶の水博士のような科学者になりたい」と思いつつもクラシックに目覚め、慶応大学工学部を中退された経歴をお持ちです。
理数系の感覚をお持ちですので、文章は明確。
その上、本の中のイラストもご自分で書かれている、面白さ。
使用されているフォントも、砕けていて親しみやすいですよね。
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でも、内容はなかなかにしっかり
音楽が好きな方には、手に取っていただきたい一冊です。
なぜ、この曲はこの調で書かれているのだろう
そんな想像する楽しみを与えてくれます。
そして、音楽を専門とされている方には、有益、と、わたしは思います
また、この本の良いところは、軽くではありますが、西洋以外の音楽についても触れていること。
ジャズやアラブの音楽。
そこに広がる独特の音世界への入り口も示してくれています。
なおかつ、量子学を持ってくるあたり。
いかにも、工学部、理系の作曲家。
(作曲とは、元来、理数系のものでありますゆえ)
とはいえ。
この本は、表題にあるように、ポケット教養シリーズです。
調性についての入口の1つであり、一個人の見解、とも言えます。
そのため、巻末に付されるべき、参考文献のページはありません。
この本を読んで、調性や世界の様々な音律の世界に魅力を感じた方は、ぜひ、次のステップへとお進みください
少し深い調性についての本も、またご紹介させていただきますね。
ああ。
わたしも民族音楽好きの魂が、うずうずしてきます