「阿呆船」
15世紀のドイツ作家セバスチャン・ブラントによって書かれた「阿呆船」または「愚者の船」は、ありとあらゆる種類の愚者や狂人の群れが一隻の船に乗り、阿呆国ナラゴニアを目指して出航するという話です。
大量の文書を集めながらそれを一切読まずに本を崇拝する愛書狂、欲望に目がくらんだ金持ち、権力に固執する者など、当時のカトリック教会や政治界の退廃を寓話的に表現したこの本には社会に実在する様々な「愚者」が登場します。
この本が出版されて以来、「阿呆船」の題材は西洋文学や絵画に幾度となく取り上げられてきました。最も有名な例はヒエロニムス・ボッシュの作品です。
「阿呆船」の寓話を、辛味の効いた風刺として現代風に解釈した作品もいくつかあります。
社会の不条理な一面を捉えた描写は可笑しくもありますが、「笑っていてもいいのだろうか」と、ふと疑問に思ってしまいます。
先日の記事で触れたグレートフル・デッドは Ship of Fools という歌で、ジプシー族のように世界中を旅する自分達を「愚者の船」に乗った旅人に喩えています。
【関連サイト】
Wikipedia: 阿呆船
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