心の垣根
心の垣根を音楽でこわすやぎりん
(漫画:小澤一雄)

音楽家の はしくれの やぎりんは
佐村河内事件をどう思うか?と
訊かれることがある。
実はやぎりんは佐村河内氏にはあまり
興味がない。
影武者だった新垣さんに関心がある。


「新垣隆さんに
寛大な処分をお願いします」と
桐朋学園に請願する署名が、
音楽関係者からネットでまわってきて、
やぎりんは賛同署名をした。

このような事件が起こった背景を、
新垣さん側の立場で考えてみたい。

佐村河内氏の名誉欲みたいなものは、
誰にもわかりやすい。

ではなぜ新垣さんが、
良心の呵責に耐えながら
18年間も影武者として
素晴らしい音楽を書き続けたのか?

本名で作曲するときは、
一般人には難解な、
いわゆる「現代音楽」を書いていたという。
やぎりんはそれを聴いたことがないし、
聴いてもおそらくその「良さ」は
わからないだろう。
やぎりんも結構軟弱な聴き手なのだ。

やぎりんの想像から導いた結論は、
自分の名前が出なかったから
堂々と、
わかりやすい感動的な音楽が
書けたのだ。

本名でそのような曲を書いたら、
作曲の世界では「堕落した」とか
「大衆に迎合した」などと、
非難を浴びるだろうから。

やぎりんが大好きな日本の現役作曲家に
吉松隆さんがいる。
大河ドラマ『平清盛』の音楽を書いた人。

やぎりんが日本フィルの企画制作時代、
日本フィルでは
吉松隆さんにいくつもの作曲を依頼した。
三つの楽章からなる交響詩的な
《鳥たちの時代》は心にしみる名曲。
ヨーロッパ公演でも絶賛を浴びた。

これを日本フィルの定期会員だけに
聴かせるのはもったいなくて、
一般音楽ファンに聴いてもらいたいと思い、
「バードウイーク・コンサート」というものを
企画したこともあった。
吉松隆作品だけのコンサートも企画した。
これはさすがにオペラシティの客席の
半分しか埋まらなかった。
しかし交響曲第3番のフィナーレは、
血湧き肉躍る興奮のるつぼ。

彼は音楽大学ではなく、慶応義塾の出身で、
独学で作曲家になったので、
どんな先生にも気兼ねなく、
自分の信念に基づいて、
自分の聴きたい音楽を書くことができた。
それは同業者や「現代音楽」の世界では
評価されない音楽だった。
最初に認めたのは、
聴衆とオーケストラの人々だったと思う。


吉松さんは
「佐村河内守作曲」交響曲第1番 HIROSHIMA
を聴いて、絶賛した。
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ドキドキ「同時代の作曲家に初めて嫉妬を感じました」と
インタビューで応えている。
「嫉妬」するほどの素晴らしさを具体的に
書いている。


ドキドキ「すべての聴き手を巻き込む魅力に富む
と同時に
見事に設計された傑作だと確信する」


そして次の言葉がかなり重要だと思う。

ドキドキ「現代音楽という脈絡では(私同様)
まったく評価され得ない作風だ」


「現代音楽」の作曲家たちは
このような曲は全く評価しない、ということを
吉松さんは明言する。そしてそういう見方は
自分に対するそれと同じだと。


吉松さんは続ける。

ドキドキ「辛らつな批評家なら
『ここはチャイコフスキー』
『ここはマーラー』と全編にわたる
模倣の痕跡をピックアップすることだろう」
しかし
「とにかく徹頭徹尾まじめで正攻法な
(そして宗教的な真摯さを持った)
ロマン的情熱の発露と、
終始一貫した情念の持続力は,
聴くものの襟を正さずにはおかない」と。

吉松さんはゴーストライター発覚後も
評価を下げることはない。
ドキドキ「『誰もが初めて聴く』しかも
『オーケストラだけ』の音楽が
『歌も映像も何もなく』1時間もの間
延々と流れるのを、ホールを埋めた聴衆は
(少なくとも)飽きることなく
ずっと耳を傾け、曲が終わると同時に
万雷の拍手を浴びせていたのである。
これは(実を言うと)
現代の新作オーケストラ曲としては
希な事態であり、
これだけでも充分『事件』だった」
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やぎりんの日本フィル時代、
吉松隆さんに何度かインタビューした。
その中でこんな話が印象的だった。

東京文化会館での『現代の音楽展』
(民音主催)というコンサート。
日本の現役作曲家たちの作品だけを
オーケストラで演奏する企画で、
現代日本の作曲家としては、
この公演に自作が採り上げられることは
大変名誉なこと。
この公演で、吉松さんの交響曲が演奏され、
お客様には大好評だった。

しかし作曲界の重鎮の先生(桐朋学園)と
ロビーで会ったら
「吉松くん、いまどきドミソで終わる曲なんか
書いちゃいかんよ!!」とおっしゃったという話。
それを笑い話として語ってくれた。

「ドミソで終わる」とは、
ハ長調の交響曲がハ長調の主和音で終わる
という古典的な手法のこと。

そもそも「何長調」などと、
調性があること自体がタブーで、
百歩譲ってそこまでは認めたとしても
主和音で堂々と終わるなどということは
「現代音楽」ではない! ということ。

もちろん吉松さん自身は、
重鎮からそれを言われても気にしなかった。

しかしそこでやぎりんが感じたのは、
このような重鎮の影響のもとで
作曲活動をしている人たちは、
わかりやすくて、美しくて、
エキサイティングで、一般音楽ファンが
喜ぶような音楽を書きたくても、
書けないのだろうな、ということ。
「書いてはいけない」という不文律!!
とでもいうのだろうか・・・

だからほかの人の名を借りることで
聴衆と感動を分かち合える音楽を
思う存分に書けたのだ。


佐村河内氏が「現代のベートーヴェン」なら
新垣隆さんは
「音楽界のシラノ・ド・ベルジュラック」だ。

他人の名を借りて聴衆に
音楽(=愛)の本音の手紙ドキドキを送り続けた人。

シラノ

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「なにも知らない。なにもできない。
なにもない。
なのに、なにかを求めている。
自分の微力は、よく承知している。 
とるに足りない才能についても自覚している。

でも、せっかく生まれて来たのだから
感動したい。共鳴したい。
おなじ心のひとに会いたい。

それがせめて
みじかい生命の軌跡の中で
ぼくらが望むものではないか。

ところであなたは・・・。


★『詩とメルヘン』サンリオ刊
1982年4月号 編集後記 やなせたかし  
◎やなさたかしさんの限りない優しさ
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★エーリッヒ・フロムの愛の論理と音楽

★スコットランド民謡の名曲
《広い河の岸辺》について


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パンダ池山由香バースデイ・コンサート
ゆかバースデイ
3月13日(木)7:00p.m.
東京オペラシティ3階 近江楽堂
前売¥3000/当日¥3500
学生¥1500(一律)
お申込み
arpayuka@gmail.com


世界最小管絃楽団
たかこ・やぎりんバンド♪
第3回シーズン・コンサート〈春〉in 浦和
◎今夜は十五夜!

浦和チラシ
2014年3月15日(土)
午後3:00開演
スタジオ・プラネット[浦和駅西口5分]
生音専用のおしゃれな
サロン・コンサートホール(定員50人)
ゲスト:大前恵子(歌)

【前売券】¥3000(学生¥1500)
【当日券】¥3500(学生¥1800)
残り5枚(3月10日現在)
●お申込み
やぎりん
【電話】080-5379-4929
【FAX】(03)6759-3297
【E-mail】yagirin88@gmail.com



4.5チラシ
エンリケ・やぎりんバンド♪
チャペル・コンサート「かなたより君を想う」
2014年
4月5日(土)
午後2:00開演(4:00終演)
東京オペラシティ 3階
近江楽堂(おうみがくどう)
【定員120人】京王新線初台駅下車すぐ。
★料金(全自由席)
一般前売¥2800(当日¥3300)
学生前売¥1400(当日¥1800)
★お申込み(主催)
やぎりん
【電話】080-5379-4929
【FAX】(03)6759-3297
【E-mail】
yagirin88@gmail.com



木星音楽団「おやぢ」コンサート
木星おやぢチラシ
4月19日(土)午後2:00
埼玉県寄居町「おやぢ」ホール
(寄居町用土5865-5)
料金(休憩時、茶菓つき)
一般¥3000/小中高生¥2000
お申込み
電話 048-584-4535(菅原)
メール:oyadi-concert@live.jp



エンリケ・やぎりんバンド♪
母の日カフェタイム・コンサート

5.11ラルゴチラシ
5月11日(日)午後2:30
地下鉄赤塚駅すぐ。
自家焙煎コーヒーの
「カフェ・ラルゴ」
コーヒーとケーキつき
前売¥3000(当日券あれば¥3500)
お申し込み:やぎりん
yagirin88@gmail.com



ピアニスト/作曲家 小笠原育美×やぎりん
「風のコンチェルト」

5.25チラシ
5月25日(日)午後2:00
水天宮前駅から1分
サロン・ド・モデラート(定員50)
前売¥3000(当日券あれば¥3500)
お申し込み:やぎりん
yagirin88@gmail.com