「小泉純一郎首相はヒトラーより最悪」亀井氏発言 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

「小泉純一郎首相はヒトラーより最悪」亀井氏発言


Nick Lowe
Jesus of Cool



レニ ブレンナー
ファシズム時代のシオニズム


須崎 慎一
<日本ファシズムとその時代―天皇制・軍部・戦争・民衆


宮田 光雄
ナチ・ドイツと言語―ヒトラー演説から民衆の悪夢まで


斎藤 貴男
安心のファシズム―支配されたがる人びと


ルイ・アルチュセール
再生産について―イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置

【このコンテンツは批評目的によるニック・ロウ氏の音楽の引用が含まれています。音楽の著作権は著作権者に帰するものです。また、個人的耳コピのため音楽的には間違った解釈である可能性もありますが、故意に著作権者の音楽の価値を低めようとするものではありません。著作権者主体者の権利、音楽の美学を侵害した場合いかなる修正・削除要請にも応じます】

> 「悲しいことだが、今の日本ではファシスト政治、強権政治が行われている」

> 「小泉首相は非情な人。ヒトラーより、もっと独裁的な政治をしている」

> 「ヒトラーより最悪だというのは、ヒトラーでも全権委任法を作ってから独裁政治をしたこと。小泉首相はルール無視だ」

> 「今回出馬を断念した議員や私たちは、小泉首相に政治的な毒ガス室に入れられたようなもの。私は生き残るがね」

               (サンスポ記事 より引用)

                

 8月30日、衆議院議員選挙が公示された。広島6区で堀江貴文氏と激突する、国民新党の亀井静香氏。8月31日、都内で行われた日本外国特派員協会主催の講演会に出席し、以上の発言を行ったということだ。


 のっけから話は変わるが、僕は洋楽ポピュラーと、邦楽ポピュラーの根本的な違いは、政治に対する姿勢だと考えている。これは西洋とわが国の民主主義の成立の仕方の違いから派生した文化の違いだと考えている。


 例えば、こんな事実。ヒトラー(Hitler)について書かれた曲が、英米で何と多いことか。allmusic.com で、「Hitler」→「Song」を指定して検索してみて欲しい。何種類もの曲がヒットしただろう。彼ら、彼女らは、権力に対して物申す、あるいはオチョクルことを音楽活動の一部と考えている。これに類似した例は日本では、あまり考えられない。ハレとケを区別する文化(参照 )は、「今、国家のなかで生活していること(=ケ)」と「音楽を作ったり聴いている時間(=ハレ)」を明確に区別しているんだろう。「ええじゃないか」運動などを除いて。


 今日はそんなヒトラー曲のなかから、僕が大好きなニック・ロウ(Nick Lowe)「リトル・ヒットラー(Little Hittler)」を採り上げたい。では、曲&詩の解析を。キーはAメジャー、4/4拍子、ゆったりしたフォークロック曲だ(←Amazonで試聴可能)。


 試聴された方は、あまりの牧歌性に「え? 別に権力を批判するような曲じゃないジャン」と思われるだろう。また、この曲は「ディスコ」を批判したものとされていて、明確な狙いが判らない曲である。しかし、だからこそ、そこに高尚なウィットとアイロニーを感じる。僕はソレが好きだ。


【A】
Little Hitler, what you doin' Is the passion inflamed again, again.
|4/4 A |E |E |A-D-E7|
Little Hitler, what you doin' Is it go go night again tonight?
|A |E |E |A-E7|


 ちっちゃなヒトラー、何をやってるの?

 情熱の炎は燃え盛ってるみたいだけど。

 ちっちゃなヒトラー、何をやってるの?

 今日はノリノリの夜のはずじゃなかったっけ?


 コード進行は、Ⅰ-Ⅴ-Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ。スリーコード。特に解説の必要なし。


【B】

Ever searchin' for the action. But the action don't want to know.
|D |A |D |A|
I said all along you're a tough one. Little Hitler,
|A |D-E7 |A |D-E7|


 何か行動しようとしてきたけど、見つからない。

 ちっちゃなヒトラー、君はタフだよ。


コード進行はⅣ-Ⅰの繰り返し、プラス、Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ7の繰り返し。以上【A】【B】パターンを以下の歌詞で繰り返す。


 ちっちゃなヒトラー、何をやってるの?

 みんなの注目の的になれないんだ。

 ちっちゃなヒトラー、僕は真面目に

 何故君が僕に八つ当たりするのか考えたいんだ。

 

 君の大事なゲストばかりで

 世の中は動いているわけじゃない。

 深夜おそくには、

 種がばら蒔かれるだろう。

 僕自身、ちいさなヒトラーになってしまうようだ。


 ここから【C】に向かうが短6度上のキーFメジャーに転調する、という珍しい手法を使っている。おそらく、Aメジャー→同主調転調したAマイナー→Cメジャーから4度上のFに転調ということなんだろうが、よくわからない。よって、【B】の8小節目は繰り返し時のみC7になる。


【C】

When the goin' gets tough The tough get goin' Every now and then l can see 'em runnin', runnin'
|F |C7 |Dm7 |Am7|
You can talk with them You can be shot with them. But you'll get no change , Only shootin' at 'em long range.
|Dm7 |Bb |Bm7 |E7|


 状況はどんどん厳しくなるばかり。

 何時でも彼らが走るのが見れる。

 君は彼らと話し、彼らと撃たれるだろう。

 君は何も変わらない、長距離から撃たれないだけ。

 

 コード進行はキーFメジャーで、

 Ⅰ-Ⅴ7-Ⅵm7-Ⅲm7

 Ⅵm7-Ⅳ-#Ⅳm7…

と7小節目に短2度上昇で進んだ後、元のAメジャーに転調、Ⅱm7-Ⅴ7-Ⅰで解決する。その後【A】をインストルメンタルで挿入、【B】を繰り返して終了。ニック・ロウは高度な作曲能力を持っている人だ。


 さて。理解に苦しむ歌詞だ。巧く訳せない。メタファー(暗喩)を読み解いていくと様々な解釈ができそうだが、一つだけ、亀井氏と、ニック・ロウの大きな違いは何か?

> 僕自身、ちいさなヒトラーになってしまうようだ。

ロウ氏の「ヒトラー」は誰の心にも潜んでいる種。亀井氏の「ヒトラー」は社会敵を貶め、他人を中傷するための「ヒトラー=とにかく悪い奴」という記号。ここが違う。


 「ファシズム」を大学時代、研究したことがある。ファシズムは決して、強権的で暴力的な為政者が、人々を圧迫して完成するものではない。一部の許すべからざる暴虐(アウシュビッツ)を除けば、多くの一般の人々は、ファシズムに関与し、ソレを翼賛した共犯者でもある。それを、ニック・ロウの歌は、語っている。「悪人の記号」という低いレベルではない。


 音楽はその構造上、知的なもの。色んなことを真面目に考えないと作れないもの。政治家はどうか? 責任ある立場にある人の、知的でない発言は、本当に勘弁してもらいたい。


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