ロバート・ワイアット「広島、長崎、ありがとう」 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

ロバート・ワイアット「広島、長崎、ありがとう」


Robert Wyatt
Cuckooland



大江 健三郎
ヒロシマ・ノート


広河 隆一
パレスチナ新版


池上 彰
大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」


山本 芳幸
カブール・ノート 戦争しか知らない子どもたち

 今年の夏休みはフェリー に乗れたが、昨年の夏休みはフェリーに乗れなかった。2004年7月末、四国を直撃した台風10号(Namtheun)が高知行きフェリーを欠航させたためだ。私たち家族4人は自動車で東京→九州、日本を横断する無謀な旅に出た。台風の接近をかわしながら。


 1日目は滋賀で宿泊。2日目広島尾道(参照 )に宿泊。3日目、広島市街地に出、原爆ドームへ向かう。弟によれば「子供の頃、行ったやんけ」なのであるが、原爆ドームを見た記憶がない。記憶史上、初めて訪れる、原爆ドーム、平和記念公園、平和記念資料館であった。


 衝撃だった。ドロドロに溶けて一塊になった一升瓶。髪の毛が燃え尽きた少女。焼け焦げた眼鏡、学生服、弁当箱、水筒、女学生の制服、シュミーズ。私たちの生活に潤いを与える全てのものが、一瞬のうちに焼け、溶け、消えたのだ。そして熱線被害を受けた人々の写真。


 思わず、頭の中に、あの曲が流れる。当時、会社で毎日聴いていたCD、2003年10月リリースのロバート・ワイアット(Robert Wyatt)「クックーランド(CockooLand)」収録曲、「フォーリン・アクセンツ(Foreign Accents)」だ。ロバート・ワイアットの物悲しい声が、原子爆弾の悲劇を憂いて歌う。


【A】

広島 長崎 こんにちは ありがとう
|4/4 Cm |Cm add9 |Bb |Bb add9|
長崎 広島 長崎 広島
|Cm |Cm add9 |Bb |Bb add9|

【B】

ありがとう バヌヌ こんにちわ モサデグ
|C sus4 |C |Bb/D |Bb/D|
ありがとう モルデハイ こんにちわ モハムド
|C sus4 |C |Bb/D |Bb/D|

 コードCmまたはCとBb、Ⅰ-♭Ⅶ(トニック-サブドミナントマイナー)曲。モルデハイ・バヌヌ氏は、元イスラエルの原子力科学者。1986年イギリスの新聞にイスラエルの核開発機密を暴露。反逆罪で18年の懲役刑を言い渡されたが、2004年釈放。核兵器廃絶を呼びかけて活動中である。


 イランの元大統領(任1951~53)モハムド・モサデグ氏は、石油の採掘・精製・販売を独占していたイギリス系企業に抗して、石油国有化運動を推し進め、中東の平和を求めた英雄だったが、英米秘密情報機関に生涯軟禁されることとなった。


 野坂昭如氏が「朝まで生テレビ」で言っていた名言。「別に戦後じゃない。今も僕らは戦争の中を生きている」(大意)。焼け焦げた1945年の女学生のシュミーズと、中東の石油から作られた2005年の女学生のキャミソールは、決して遠いものではないのかもしれない。忘れていいことは山ほどあるが、僕らは、広島、長崎だけは絶対に忘れてはならない。


 昨年の日本横断(by 軽自動車)であるが、恥ずかしいことに自分は免許を持っていない。女房一人が気合で、東京→九州を運転した。上司G氏から「免許とって、運転くらい奥さん孝行しろよな」と言われ、「エロジャケ」と「耳コピ」を称して馬鹿なことを書き散らし、下手クソな楽器演奏をしながら日々過ごす私であるが、せめて、広島、長崎だけは忘れないようにしたい。正気であることが戦いだ(by ニーチェ)。


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■関連リンク:平和記念資料館  バヌヌ氏に関するページ