INTAR2016に参加しました1 | 女医の国際精神保健

女医の国際精神保健

精神保健および公衆衛生を軸に、韓国、ロンドン、ジュネーブ、ニース、フィジー、赤道ギニア、東京、インド。
他にも、旅行、馬術、音楽、写真などについて記載しています。

研究で「当事者の声・経験」に着目しているため、今年はいつもの医療者の会合ではなく、当事者の会合へ積極的に行くことにしております。

前回は こちら

今回は こちら でも勧められた INTAR2016

INTAR (The International Network Toward Alternatives and Recovery)は精神的な苦悩を医療ではなく全人的・倫理的に乗り越えようとする集まりで、2003年より国際展開しているようです。

 

会合は、当事者、家族、人類学者、社会福祉士、医療者など多様な人々の参加で、数百人規模でした。個人の経験、啓発活動、学術的発表、行政の動きなど多様な形態での活動が共有され、議論されました。

インド人、英語圏人が目立ちましたが、東アジアからの参加も結構多かったです。

 

参加者の想いはそれぞれで、目指すものもそれぞれですが、受けた医療への不審も強いようです。

また、精神保健での医師の力が強く、一般的診療に加えて、入院・加療、行動制限を含めて強制力を持っていることも強く問題視されていましたし、社会要因も絡んだ多様な症状や日常への影響なのに、解決策が処方薬に特化しすぎていることも不足を強く感じているようでした。そして、「私のことは私が決めたい!」という想いも強く感じました。

 

これらは全て私も同意することですし、だからこそ臨床・公衆衛生・人権と学びましたし、勤務もしております。

しかし、「あらゆる精神科医」「あらゆる精神科医療」は全部ダメと強烈な否定も多く、また精神保健の中にあらゆる状態・状況もまとめていて、その乱暴な一般化に歯がゆさを感じることもありました。

一方で、いろいろあるうちの一つとして「医療」を捉えている参加者もいて、それぞれ想いや信念は多様でした。

「精神科医にも支援が必要」「精神科医も法律を守る存在なので、法律へ一緒に働きかけるべき」という声があったのは前向きで嬉しいと思いつつも、「あまり精神科医を追い詰めると、反撃されるから、手負いにしない」とか「精神科医は自分の仕事を奪われないように必死」とか言われたのは悲しかったなあ。

精神科医療も自己成長をしないといけないし、していることを見せないといけないとは思います。

 

既存の医療が目立つモデル以外のもっと生活に密着した自然な解決策はないかと模索や共有がなされており、まさにこれは私が聞きに行ったものでした。

peer supportとかopen dialogueとか幅広く知ることができました。(日本でも時々話題になっております)

欧州発生のモデルも多いですね。

私としては、そのモデルでどれくらい効果的だったのか、安全なのかとかの検証を聞きたいのですが、そこまで踏み込んでいるのは少なく、踏み込んでいたとしても結果の解釈が一方的だったりして、再現性、普遍性などを議論するに至らなかったのが残念です。

 

力強く当事者活動をしていらっしゃる本分野の有名人もいて、発表は興味深かったですし、食事や休憩時間にさりげなくお話できたりして貴重な経験でした。

その中で、自然と話が弾み、研究への助言を頂いたり、引き続き助言役を引き受けて頂いたりもして、大きな収穫でした。

 

CRPDに絡んで、WHOでの元上司も講演とワークショップを開催しておりました。

お会いできたのも、2013年に私が去ってからの同分野での進展を聞けたのも嬉しかったです。

よくも悪くも変わらない!ってのは興味深いです!

当時は こんな こんな こんな

 

動画がアップされました↓

 

 

 

 

 

そもそも今回の参加を促してくれた方の一人ですが、研究への助言をくれている先生にもお会いしました。

研究への有益なご助言をくださりつつ、講演や座長の様子も大変勉強になりました。

私と同様本分野に関心を持つ精神科医療を専門とする先生ですが、著名人であり、出版物も多いことから、「標的」にされ、攻撃されているのを見かけます。

学術的に文献上や講演でのこともあれば、個人レベルであることも。

その正に攻撃を仕掛けていた先生との対談もあり、これは聞き応えがありました。

こんな

説明をし、誤解を紐解き、相手の意見を引き出し、説得力もあり、相手の先生も会場も腑に落ちて、一部ファンになっちゃったりして!

晩ご飯の時もすっかり囲まれて、疑念を投げかけられても、丁寧で理路整然と説得力あるから、最も怪訝風だった人がとっても支持的になったりして。勉強になります!

ちなみに、trans culture psychiatryの分野の人はもっと攻撃的らしいです。

 

動画がアップされました↓

 

 

 

 

 

 

 

 

いろんな人と話すと「なぜこの会議に参加したの?」と聞かれ、私の興味を話すと「心ある医師がいるのは嬉しいわ!インスピレーショナル!」とか言われて、嬉しくなりつつ、研究がまとまったらここに発表に来て、皆の感想を伺いたいなあって思ったり。

 

経験や解釈や信念や希望が少しずつ異なって、完全に同意できるわけではないけれど、「現状を変えたい!」という強い思いには非常に共感し、そのエネルギーをもらえたのは嬉しかったです。

帰りのタクシーは米国のソーシャルワーク学の助教とご一緒して、「会合から何を汲み取ったか?自分の仕事に戻ったら、どの点が生かしたいか?」なんて話をして盛り上がりました。

 

立場を変えて精神保健を見れて良かったです。

このコミュニティが「そうそう、それそれ!」と言ってくれるような研究を目指します。