「共生に向けたアジアにおける精神障害者の実践:TCI-A2015報告事業」を聞きに行きました | 女医の国際精神保健

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精神保健および公衆衛生を軸に、韓国、ロンドン、ジュネーブ、ニース、フィジー、赤道ギニア、東京、インド。
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「精神障害と人権」の部分で興味関心が共通であるとして、このブログを読んでくださった弁護士さんからメッセージを頂き、それ以来、よく情報交換をしております。

今回の報告会もその情報交換の一環でご一報頂き、聞きに行きました。

 

会場には20名-30名いらしたと思います。

東京、京都の二カ所で報告会を実施とのことで、素晴らしい。

日本中でこの問題を解決すべく関心が高まるといい◎

 

議題は以下の4つで進みました。

1 TCI-ASIAに参加して(TCI-ASIA2015を報告する有志の会)

2 日本でいかに障害者権利条約を履行していくか(全国精神病者集団)

3 地域人権裁判所構想とインクルージョン(東京アドヴォカシー法律事務所)

4 共生社会を切り開くために、これから大切なこと

 

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1991年にヨーロッパ精神医療ユーザーサバイバーネットワークが立ち上がり、World Network of Users and Survivors of Psychiatryが会議を開き、2005年にアフリカにもネットーワークが生まれた後に、2014年にアジアにも生まれ、TCI-ASIA(Transforming Communities for Inclusion for Asia) となったとのことです。

TCIAの理念支柱は「障害者権利条約(CRPD)」と「インチョン戦略」とのことです。

(やっぱりCRPDはよりどころだなと思うのと同時に、インチョン戦略を勉強します)

 

参加してみて、他国のモデルから解決策のヒントをもらえたり、他国の参加者から希望をもらったりと非常に有意義だった様子が伝わってきました。日本から伝えたり、他国から日本に伝えたりしたいとのこと。(私も非常に共感する感覚です)

 

次回のTCIAは11月にインドとのことで、参加費を集めたり、通訳を探したりして是非行きたいとおっしゃっていました。(是非行ってきて感想をまたお知らせしてほしいなあと思うと同時に私もご一緒したいなあと思ってみたり、インドはこのあたりの話題で登場することが多いなあと思ってみたり)

 

日本の病床数の多さ、隔離や拘束の多さ、と合わせて「精神科病棟での虐待の多さ」のお話もされていました。

また、「病院の精神医療の水準は低く、入院して病院でしか受けられない治療や医療を受けているとはとても思えない」「それならば地域で生活しながら治療なり介護なり支援を届けてほしい」とのお話でした。

国際的な条約に則った国内法の整備や国内人権機関の必要性もおっしゃっていました。

さらに、精神障害者が自ら作り上げた既存の保健医療福祉に変わるものを提案したいともおっしゃっていました。そこで参考になるのはJudi Chamberlin, Mary O'Haganだそうです。

 

(いろいろ同意しますし、「その患者自らが欲しいと思うもの」に私は非常に興味がありますし、それを是非軸にしたいと思います。そのために、それが何であるかを明確にして、その効果を明確にして、日本のどこにいてもそれを活用出来る体制に持って行きたいなと思います。ご紹介のあった2名の出版物を読んでみたいと思います。)

 

インクルージョンの特異性、人権と統治機構の関係性、多数者支配型民主主義、などを非常にわかりやすくご説明いただき、日本やアジアに必要な解決策と方向性は「国内的に人権委員会が必要であり、地域的には地域人権裁判所が必要である」というご提案でした。

 

「平等権は、それぞれの個人の権利だが、インクルージョンは一人一人の権利というよりも、社会全体のあり方を規律する原理。措置入院・医療保護入院は「精神障害者」をターゲットとして、差別的な自由剥奪を行うものなので、平等権侵害になり、強制入院させられた「精神障害者」は、権利条約違反を根拠に解放を求め得る。反面で、入院させられていないピアやすでにピアは、入院させられている仲間のために退院を要求する権利はない。しかし、多くの「精神障害者」が強制入院させられている社会はインクルーシブな社会でなく、そのような社会、たまたま自分だけが退院できたり、入院させられなかったとしても、多様性が保障された社会で生きていくことはできない。」

「アメリカ型司法は事件性、当事者適格などの訴訟要件により抽象的違憲審査ができない」

「裁判官の出自がマジョリティーの社会文化を背景としている」

 

(このお話は、私がILSでinernational diploma in mental health law and human rightsを履修した際に、教科書として使用した一冊の筆者で非常に素晴らしいと思っていたご本人の公演でした。全体として、非常に勉強になりました!)

 

 

 

精神症状を持つ人々が主導の会合に出席したのは初めてだと思います。

TCIAも含め、もっとそういう機会があるといいなと思います。

会場での発言の中には「精神科の医師を敵視」したものもあり、どこまで自分の素性を明かせるのか具合を図りかねるところもありましたが、もっと参加するとそのあたりの温度感や立ち位置もわかるのかなと思います。

演者に自己紹介・ご挨拶をできたことは非常に光栄でした。今後、ご一緒できたら素晴らしいです。

 

そして、会場内に友人を発見!

国際精神保健への想いの熱さは私たちは日本でtop2だと思うのよね!という友人。

帰りにお茶をしながら、夏以降は非常に近いところで仕事をすることを喜び、日本で国際精神保健を盛り上げるための仕掛けを一緒にしていこう!と約束しました!楽しみ。

 

自分が来たところを確認し、これから向かっていくところを確認できた、そんな素晴らしい時間でした。本件を紹介してくれた弁護士さんに感謝!そして、彼女の帰国も楽しみにしています!