「10年間で2倍!精神科病院で増え続けている隔離・身体拘束について考える」 に参加しました | 女医の国際精神保健

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大学院での研究のためにネットワークを広げていて、「強制入院」界隈や「当事者の意見」界隈の情報が入ってくるようになってきました。

 

今回は、 「10年間で2倍!精神科病院で増え続けている隔離・身体拘束について考える」  に参加しました

 

中身を見てみると9年ほど前に隔離拘束の研究にお邪魔した際にご一緒した方も登壇しており、ご挨拶もしつつ今後情報交換やご助言を頂くことをお願いしてみたり。

 

会場が「衆議院議員会館」ってのも私的にはポイント。

この夏までの外務省勤務中に何度行ったことでしょう!

毎度、非常に緊張していたし、気が重い場所だったなあ。

今回は「一般人」ということで、誰にも責められることもないし、ふいに仕事を言いつけられることもないし◎

当日はスーツの省庁の役人達が一生懸命仕事している光景を見て、ちょっと知り合い探してみたりして。

 

上記は私の個人的なことで小ネタ程度ですが、議題としてこの会場を使えるというのはとても大切なことです。

「精神科病棟での処遇」は学術的な議論というよりも「精神症状を持つ人」に対する価値観がまず最初にあるものであり、このような政治的な会場で議論できることはとても素晴らしいことです。

応援してくださっている議員のお名前(コイケアキラ議員 アイハラクミコ議員 コウサカズコ議員)が紹介され、山本太郎議員及び川田龍平議員からはご挨拶もありました。

 

会合は、本件に関心を持ち活動をされている研究者、弁護士、当事者、看護師から講演・話があり、その後会場との質疑応答という建てつけでした。

感情と理屈が入り乱れる本議題を整理して方向付けもする司会もお上手でした。

当日の資料は こちら から。

 

結局私が話すことはありませんでしたが、「うまくタイミングが合えば話を振りますので、国際的な視点、公衆衛生の視点、医師の視点からお話し頂けますか?」と会場に到着するなりリクエストを頂きました。嬉しく思いながらも「ちゃんと話せるかしら」と動揺した私は自分にちょっとガッカリ。いつでもまとまった有意義な発言ができるように準備しておかないと!

 

話題になった点では、下記のような点が印象的でした。

ー 隔離拘束の件数や使用される器具などからの実態報告

ー 精神保健福祉法に「保護」を目的とあり、それは恣意的に解釈されている点

ー 病院内審査機関が任命した病院外委員は、治療・看護・介護の視点から妥当性を判断することを求められており、人権や法律など医療以外の視点が排除されている限界

ー 行動制限最小化委員会を設けたにも関わらず隔離拘束が大幅に増えているのは委員会が機能してはいないのではないかとの指摘

ー 法律や制度以外にも看護師の教科書に勝手な解釈で「身体拘束」にあたらない「抑制」という概念を紹介していることへの反対

ー 医療者が恣意的に判断できる範囲が広いことへの批判

ー 行動制限は人権侵害であり又生命に関わることであり、社会化し、国民・市民で考える必要がある点

ー 法律・制度などの前に思想が重要である点

ー 入院中に褥瘡ができるなんて言語道断

ー 入院中は医師の命令に従う構造

ー 「安心してかかれる精神医療」を目指す大阪精神医療人権センターの活動

ー 隔離拘束は病棟の人員不足を補うためだけのもの

ー 精神科特例で精神科病棟の職員の人員不足は隔離拘束が増える大きな要素

ー 個室が少ないのも問題

ー 人生で入院が一番辛い経験であった

ー 現場からの声を実施に移せないか

ー 感情と論理がぶつかる

ー 精神科病院は全廃にすべき

ー 下記の本も話題になりました

 

 

 

 

 

 

どの点も私も感じたことがある点であり、これらの「これおかしい!」を「こうしよう!」「これなら効果的だし安心」にどうにかしたいと思うし、そのための最も効果的な方法をいつも考えています。

会場では「病院は悪」「医師は悪」って声もあり、医師として「医師も批判を受けて自らを改善すべく弛まぬ努力を続けています」と言える状況作りは大事だなと思いました。患者のためである医療において、医師の力はやはり強い訳で、患者の力を強くすると同時に、医師の自己批判と自己改善はやる必要があると思います。

 

入院して症状が良くなった、症状安定して自分の生活のために薬は役立っているという声も聞こえて、ちょっと安心する瞬間もありましたが、全体として針の筵感は強かったな〜。でも、このあたり病院では聞こえてきにくい声なので、貴重なご意見でした。

 

医者としては針の筵に出向く機会の増える「精神保健と人権」に入って行っていますが、「そうそうそれを言いたかった」と患者さんに言ってもらえる論文が書けて、「そうか。なら、こういう方法にすれば、安心できる精神保健サービスが組み立てられる」と患者にも医療者にも政策立案者にも言ってもらえる論文及び説明(啓発?)ができる一人になれれば嬉しいです。しかも、日本国内のみでなく世界にも使える感じだと◎

がんばるぞー