『資本主義の預言者たち』・その2 | くらえもんの気ままに独り言

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 今回も前回に引き続き中野剛志氏の『資本主義の預言者たち―ニュー・ノーマルの時代へ』(角川新書)のまとめをやっていきたいと思います。


 前回の話はコチラ


『資本主義の預言者たち』

その1 http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11991966963.html


 前回はプロローグについてのまとめで、ここからが本編になるのですが、中野氏は本書におきまして、資本主義の行き詰まりを予見していた5人の経済思想家にスポットをあてております。それは


ハイマン・ミンスキー(1919-1996)

ソースタイン・ヴェブレン(1857-1929)

ルドルフ・ヒルファーディング(1877-1941)

ジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946)

ジョセフ・アロイス・シュンペーター(1883-1950)


 の5人です。


 というわけで第2回目の今回は中野氏が注目した5人についてまとめてみることにしました。


①ハイマン・ミンスキーの場合


 資本主義は均衡せず、かならず金融危機を引き起こす(byミンスキー)


 主流派経済学においては市場は必ず均衡点を目指すとされているのですが、ミンスキーはそうは考えませんでした。


 資本主義経済において価格には製品価格資産価格という別々の論理で変動する二種類の価格が存在しますが、特に資産価格に関しては将来に対する期待という不確実なものによって変動します


 そして好況を呈すると投資ブームが起こり、返済能力の疑わしい者への貸し出しもどんどん行われるようになりがちだと。


 結果、バブルの醸成へと繋がり、そして崩壊するというわけですね。


 ただし、最後の貸し手としての中央銀行大きな政府によってバブル崩壊後の恐慌の発生を食い止めることは可能であると。(現実は小さな政府が志向されてしまっているわけですが・・・。)


 現在の資本主義の形態はマネー・マネジャー資本主義と呼ばれる形態ですが、これは資本主義の堕落形態と言われます。戦後の経済的繁栄から楽観的になり、現代では投機に走りがちになる状態になっているというわけです。


 ミンスキーはグローバリゼーション新自由主義的な金融政策の二つが証券化商品を発達させ、それが金融危機へと繋がっていくということをサブプライム危機よりも20年前から危惧しておりました。


 資本主義のシステムに金融を不安定化させるシステムが内在されているというわけですが、政府支出の拡大や大きな政府はそれを回避するのに重要です。


 しかしミンスキーの没後、ミンスキーの警告を無視して、ついに金融恐慌を起こしてしまった国が現れるのです!


 そう、日本です。


 恐慌を防ぐ手段を示し、「2度と恐慌は起きない」という旨の論文まで残したミンスキーですが、その甲斐むなしく、緊縮財政により日本経済は金融恐慌とも呼ぶべきデフレ不況へ叩き落とされてしまったのでした。


 しかも、その後もなお日本ではミンスキーの名は語られることなく、緊縮財政が続けられているのでありました。


②ソースタイン・ヴェブレンの場合


 ビジネス・ライクな経営は止めなければならない(byヴェブレン)


 現代では資本と言えば産業の元手となる設備や原材料のことではなく資金のことを指しますし、資産と言えば原材料、設備、工場ではなく商権、取引関係、フランチャイズ、商標、特許、著作権、ブランド、評判などの無形資産が主な価値をもっております。


 このように資本主義の概念が変化する中、企業システムの変化が起きました。


 それが「所有と経営の分離」というわけです。


 所有者=株主は個人的な営利のみを目的に資金を提供しますが、元々企業には社会的ニーズに応えるという産業組織としての役割がありました。


 しかし、所有と経営が分離したことにより、営利が産業を支配することになることをヴェブレンは心配しました。


 ヴェブレンは過剰生産、過少消費、過当競争ということに思いを馳せます。(主流派経済学の論理では過剰生産はあり得ないのですが。)


 過剰生産は価格の下落を産み、適正価格での販売が困難となり、適正な利潤が得られない状況となってしまうというわけで、ヴェブレンはこれもまた不況であると考えたわけですね。


 ヴェブレンの提示した不況対策は政府による支出拡大過当競争の抑制でした。これによって適正価格の維持を図るというわけですね。


 しかし、経済は「営利」の原則に汚染され、人々に不況を強いる結果となっておりました。そこで、ヴェブレンは「所有と経営の分離」を問題視して、株主の判断よりも経営者の判断を重視させるような経済システムを打ち出すのですが、それは受け入れられることもなく、ヴェブレンがこの世を去った直後に「世界恐慌」が発生したのでした。


③ルドルフ・ヒルファーディングの場合


 価値を生み出すのは、金融ではなく、あくまでも生産であり産業である。(byヒルファーディング)


 ヒルファーディングもヴェブレン同様、「所有と経営の分離」に注目しましたが、彼は営利よりも産業の方が優位に立つだろうと考えていました。


 しかし、投機という問題が発生します。ヒルファーディングは投機的な株式取引はゼロサムゲーム(つまり、誰かが損をすることで誰かが儲かるということ)であることを喝破していました。


 しかも、将来に対する不確実的な期待によって動くものであり、これはもはや賭博と変わらないものであると。そして企業の株式に限らず、商品の先物取引も賭博の対象になっていきます。


 信用取引の拡大、市場の発達、利潤志向が金融危機を生み出すと考えたヒルファーディングですが、それを抑制するために銀行資本が発達し、それが金融を支配し、独占資本主義へと至ると。


 産業はその国固有の文化と結びつく一方で、所有と経営の分離によって金融はグローバル化していきます。この資本輸出が帝国主義に結びつくのではないかと考えたヒルファーディングはなんと世界大戦の勃発も第一次大戦の4年前に予見していたと。


 ヒルファーディングは「組織化された資本主義」という構想を打ち立て、秩序ある資本主義が国家間の紛争、あるいは国内における国家と労働者との対立も抑制すると考えましたが、世界恐慌の衝撃に耐えられず、全体主義の台頭も防げなかったことで否定的な評価がなされてしまいました。


 ただ、ニューディール政策や戦後の経済的繁栄を見るとヒルファーディングの理論が正しかったのではないでしょうか。


④ジョン・メイナード・ケインズの場合


 経済活動は、将来の不確実性に向かって行われるものである(byケインズ)


 そんなことは当たり前ですが、将来の不確実性などは主流派経済学には組み込まれていないのが現状です。主流派経済学によれば人間は合理的計算により行動することになっていますが、そもそもそれ自体が無理筋な話でして(;^_^A


 健全な投資が行われるには市場の安定が必要なのですが、所有と経営が分離した結果、市場が不安定化し、そこに湧いて出た投資家や投機家がさらに困難を招いたのです。


 ケインズは世界恐慌前は巨大な産業組織の誕生により営利よりも産業が優位に立つと考えておりましたが、その後は所有と経営の分離は営利原則の汚染をもたらし、株式市場の賭博化と不安定化をもたらすと考えるようになりました。


 株式市場を活性化させようとする政策(手数料や課税の引き下げなど)は賭博を奨励するのと同義であり、市場が不安定化し、経済成長の足を引っ張るとケインズは言います。


 また、ケインズは主流派経済学から曲解され、その枠組みに組み込まれたりしてきたのですが、ケインズは自らそれにきちんと異を唱えております。


 つまり、「お前らはバーベキューじゃなくてポテトチップスだ!勝手にバーベキューを名乗るな!」と言いたかったわけですね(笑)。何の話か分からない人はコチラを↓


ニューケインジアンという似非ケインジアン

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11868858487.html

 

 ケインズの言う「不確実性」予測不可能なものを指すのに対し、主流派経済学の連中は予測可能なリスク(危険)で計算可能なものであると曲解していたわけですね。


 主流派経済学がなすすべなく金融危機を何度も引き起こしているのはご存知の通りです(-"-;A


 ケインズは将来の不確実性を軽減するためには公共投資などの超長期の投資契約公益事業の独占を挙げております。さらに財政出動による内需拡大は海外市場からの収奪を抑制し、国際平和にも貢献すると。


 ケインズ政策について「共産主義者ガー」とか言う人がいますが、ケインズは自由と伝統を守るためにその環境を国家が整備するべきというだけで、本質的には自由主義者なんですけどね。


 しかし、現代では「ケインズは死んだ」とか言われ、人々は投機に明け暮れる日々を送っているのですが・・・。


⑤ジョセフ・アロイス・シュンペーターの場合


 資本主義はいずれ滅亡する。(byシュンペーター)


 シュンペーターは金融による不安定化だけでなく産業内の自己破壊メカニズムにも注目していました。


 シュンペーターは技術革新によって資本主義経済が発展するという理論で有名ですが、彼は生産という活動に特に注目していました。彼による「生産」の解釈は事物と生産力の「結合」を意味していました。


 シュンペーターによれば経済発展は自発的・内在的に起こる非連続的な変化であり、安定からの逸脱であるとも言えます。そして、イノベーション(革新)は生産者によって起こるものとされます。


 この革新はいわゆる「新結合」であり、これを担うのが「企業」で、それを実行する個人が「企業家」であるとシュンペーターは定義します。シュンペーターも産業と金融の分離に着目しますが、産業については経営と企業にさらに分けて考えておりました。


 企業家にとって必要なものは意思と行動であり、不確実な将来に飛び込む気概が必要というわけです。つまり、企業家に革新をもたらすのは非合理的な直感とも言えるわけです。


 ということは社会が合理化すればするほど、自由な競争が展開されるほど、技術革新は起こらず、経済発展は不可能になるというわけですね。


 また好況時に企業家が多数現れると生産価格が吊り上がり、開発投資が困難になりますし、新製品が開発されると既存の製品の価格が下落してデフレを招くし、企業家は負債を清算するために信用収縮を引き起こしてしまうということで、好況は不況をもたらしてしまうメカニズムを内在していたのです。その他にも好況は新企業が多く現れて過当競争を産みますし、革新は不確実性を招きます。


 シュンペーターは通常経済時には政府の介入に否定的だったりしますが、好況から不況に移り変わる時の危機的パニックやデフレ不況時には積極的な政府の介入を推奨しております。具体的にはケインズと同じように政府による財政金融政策です。


 シュンペーターによれば技術革新が資本主義の肝ですが、その一方で旧来の経済構造を破壊します(これがいわゆる「創造的破壊」です)。そして、「所有と経営の分離」という技術革新は企業家精神を破壊し、家族を破壊し、最終的に資本主義は社会主義に取って代わられると分析しました。


 その後、シュンペーターの予測した流れを歩みかけていたのですが、社会主義化をを食い止めようと新自由主義が奮起します。しかし、それが創造的破壊に拍車をかけ、資本主義の寿命を縮める結果となってしまったのです。



 以上、本書第1章~第5章までのまとめでした。


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