ついに出た「解雇」宣言。明日なき戦い。第11節。VSレアル・エスパーニャ。ホーム。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

ついに出た「解雇」宣言。明日なき戦い。第11節。VSレアル・エスパーニャ。ホーム。




あってはならない試合。第10節。VS最下位ビダ。ホームの続きです。



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -VSエスパーニャ。2013年10月5日




 このレアル・エスパーニャ戦に勝てなければ、監督を解任する



 ついに恐れていた事態が起こりました。前節のビダ戦に敗れた後、激怒したチームの会長がメディアに「解雇」を公然と宣言したのです。「最下位」相手にホームで大失態…。あってはならない試合をしてしまったチーム…。会長の怒りは頂点に達しました。

 「監督の解任」はすなわち、GKコーチである自分を含む、コーチングスタッフ全員の解雇を意味します。なぜならチーム幹部から前もって「新監督が来たら、新監督が新しいコーチングスタッフを連れてくるので、今のコーチングスタッフには去ってもらう」と明言されていたからです。文字通り「最後通告」…。



 パリーヤス・オネで「解雇」の絶体絶命の危機に陥ったのは、これで2回目。

 第5節にも「負ければクビ」という崖っぷちの状況がありました。当時はそこまで3連敗しており、会長からの「解雇宣言」こそなかったものの、「ホンジュラスで4連敗して解雇にならなかったチームはない」事から、解雇は「暗黙の了解」としてコーチングスタッフ全員が覚悟を決めました(実際、負けていれば100%確実に解雇になっていた)。


 そして今回…。「暗黙の了解」だった前回とは違い、チームのトップである会長がメディアに解雇を「公然と宣言」。会長も試合会場に新監督候補を連れてきて共に観戦するなど、解雇はもはや「既定路線」となっていました。これを覆せるのは、この日の「勝利」のみだが…。

 会長はもう、今回のレアル・エスパーニャにパリーヤス・オネが勝てるとは思っていない。

 なぜならこの「ホンジュラス4大ビッグクラブ」であるレアル・エスパーニャは今季、絶好調。アウェーであの最強オリンピアに完勝を収めると、前節は首位争いをする我が古巣レアル・ソシエダを「3-1」で粉砕。現在、首位と「勝ち点2差」で「3位」。今、ホンジュラスで最も勢いに乗っているチーム…。しかも、第2節に対戦した時は、今季最多の4失点を喫してボコボコにされています…。昨年のロンドン五輪で「背番号10」を背負い、決勝トーナメント1回戦のブラジル戦でスーパーゴールを決めるなど、ホンジュラスを初の「ベスト8」に導いた天才MFマリオ・マルティネスも居ます。そんな相手に「現在、最悪なチーム状態」である我々が勝てるわけがない…会長のみならず誰もがそう思っていました。コーチである僕自身も、正直「奇跡でも起きない限り勝つのは難しい」と感じざるを得ませんでした。


 そしてチームはビダ戦のショッキングな敗北の後、この試合までの2日間…その「奇跡」を起こすための「最大限やるべき事」すら放棄してやらなかった…。いつもは厳格で自信満々の監督も、結果・内容ともに「今季最悪」だったビダ戦の敗北に意気消沈したのか…?それまでは必ず行なっていた試合前の「セットプレー練習」も行わず、代わりに行ったのは、知り合いの牧師を連れてきて「ありがたいお言葉」をチームメイトに聞かせるのみ。「やるべき事」を放棄し、あとは「神頼み」だけって…。勝ちたいけど、勝てる「根拠」が全く見当たらない…。


 前回、「解雇」の危機に陥った古巣のレアル・ソシエダ戦では、当時「無敗」で「首位」だった「最強」の相手に「アウェー」で奇跡の勝利を飾り何とか「解雇」の危機を脱しましたが、今回はさすがに厳しい…。「奇跡」なんて、そうそう何度も起きるものじゃないのに、その「奇跡」を起こす「準備」すらしなかったチーム…。さらに「引き分けでもOK」だった当時と違い、今回は「勝利以外は解雇」となります。ホームで戦えるとは言え、今季、我々は3試合をホームで戦い「1勝2敗」と負け越しており、ホームを得意としていない。むしろ、苦手…。


 この試合に向けてのポジティブな要素は、残念ながらどう探しても、ない。


 今度こそ、これがパリーヤス・オネでの「最後の試合」となってしまうのか?


 勝利以外は解雇」…。勝たなければ「明日」は、ない。


 人生が懸かった試合。


 果たして、「結果」は…?




※黄色がパリーヤス・オネです。









 パリーヤス・オネ、「3-2」でレアル・エスパーニャに勝利


 「解雇」の絶体絶命の危機を、何とか土俵際で脱する!!



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -パリーヤス3-2エスパーニャ



※試合後、歓喜するパリーヤス・オネサポーター!サポーターに今季「ホーム2勝目」をプレゼントする事ができました!いつもありがとう、サポーター!感謝!

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -VSエスパーニャ。2013年10月5日②


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -VSエスパーニャ。2013年10月5日③



 当事者である自分でも「なぜ勝てたのか?」…分からない。「奇跡」というのは、それに向けてやれる限りの準備を行なってきた者のみが起こせるもの。しかし、今回のパリーヤス・オネは前述したようにその「準備」を行わなかった…にも関わらず「奇跡」を起こしました。こんな事って、あるんだな…。

 「奇跡」を起こせた要因を強いて挙げれば、2つ。1つはやはり、「絶対に勝たなければならない」という我々の強い気持ちと魂が、この試合で爆発した事。もう1つは、あまりにも我々の状況・状態が酷すぎて(「奇跡」を起こす準備をしなかった事も含む)、逆に「開き直って」無心で戦えた事…。


 窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ)。人生、本当に何が起こるか分からない。



【第11節を終えてのホンジュラスリーグ順位表】
※開幕戦以降「今季最高順位」の「5位」に浮上!!(6位までが「上位プレーオフ」進出

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -第11節ホンジュラスリーグ順位表



 ひとまず「勝てなければ解雇」というクビが懸かった大事な試合に勝ち、解雇の絶体絶命の危機を脱する事ができて本当に良かった…。ふぅ~…。いつも崖っぷちに追い詰められながらも「奇跡」が起きてかろうじて助かっています。まだまだ神様はパリーヤス・オネを、そして僕を見捨ててはいません。それにしても…。まさか2度も「解雇」の危機を脱する事ができるなんて…このチームはやはり「何か」もっているのか…?自分にとってこのチームは「何か」特別なものがあるのか…?目に見えない不思議な力を感じています。

 ただ、本来なら崖っぷちに追い込まれる前に、もっと実力を発揮しなければならない。そうすれば今頃、首位争いをしていてもおかしくないはず。それがちょっと良い試合をして勝ったらすぐ調子に乗って気が緩み、勝った後は必ず負けて一度も連勝できず、自ら良い流れを壊して崖っぷちに追い詰められていく…。これではあまりにもったいないし、話になりません。詰めが甘すぎる。それでどれだけの「取れる勝ち点」を失ってきた事か…。いい加減ここら辺で学習し、同じ過ちを繰り返さないよう成長しなければなりません。もう「崖っぷち」はこりごりです…。


※「パリーヤス・オネVSレアル・エスパーニャ」の入場チケット。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -パリーヤスVSエスパーニャのチケット



 確かに今回のレアル・エスパーニャ戦には勝つ事ができましたが、次節以降の事を考えると、僕の中ではむしろ不安が増す試合となりました。なぜか…?それは、自らが「決定権」をもって指名しスタメンに定着した、GKサンティ二の「パフォーマンスの低下」です。

 この日もスタメン出場した「自身が高く評価するGK」サンティ二のプレーは…終始不安定でミスを連発。勝ったから良かったものの、出来自体はこれまで出場した6試合の中で「最悪」でした。しかもその「ミス」というのが、サンティ二の悪い癖であり普段からずっと指摘していた「ハイボール処理」と「バックパス処理」のミス。常日頃から「サンティ二は、ボールに触れないのにハイボールに飛び出してしまう悪い癖があるから、100%触れる確信がないボールには飛び出すな。もし飛び出すなら、少しでも良いから必ずボールに触れ」、「バックパスは相手が前からプレッシャーをかけてきて味方へのパスコースがなかったら、安全第一でロングボールで逃げろ」と繰り返し話していて、実際にそこを強化する練習も何度も行なってきていたのに、この日の試合ではそれらの「約束事」を無視してミスを起こしました。ありえない…。それでも勝ててしまうのは、サンティ二のもった「運」の強さだが…。

 サンティ二は以前までは「素直によく言う事を聞く」選手だったのです。実際、最初に出場した3試合では忠実に指示を守ってくれ「2勝1分。1失点。無失点2試合」と結果も出ました。それが、【落とし穴。…】でも書いたように、結果が出た事で勘違いして調子に乗ってしまい、練習も100%でやらなくなれば指示も聞かなくなり…試合でのパフォーマンスは徐々に低下していきました。この日の試合後も「なぜ指示を聞かなかったんだ?勝ったから良かったが、もう1回、同じミスをしたら次は取り返しがつかない事態が起こるぞ」と忠告するも、「俺は何もミスしていない。完璧だった」と反論してきて、全く言う事を聞かない…。このホンジュラス人のメンタリティー…。どう対処すれば良いのか…?ホンジュラスでGKコーチをする上で、一番の頭の悩ませどころです。そして、このサンティ二の姿勢が、次節ついに…「取り返しがつかない事態」を起こす事となってしまうのです…。


※僕がその能力を高く評価し、厚い信頼を置いていたGKサンティ二ですが…。ホンジュラス人特有のメンタリティーにより、自らパフォーマンスを低下させていく事に…。そして、とうとう次節…恐れていた「取り返しがつかない事態」が…。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -サンティ二と。2013年10月5日。



つづく


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