松田直樹選手に捧げる『魂』のゴール。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

松田直樹選手に捧げる『魂』のゴール。


 2011年8月4日(木)。元日本代表の松田直樹選手が他界しました。

 そして、同日…松田直樹選手が亡くなってから7時間半後…我々アルビSはTanjong Pagarとのリーグ戦を戦いました。

 松田選手の死に誰よりもショックを受けているアルビSの選手がいました。FWの斉藤陽介です。実は陽介、昨年まで横浜F・マリノスで松田選手とチームメイト…。お世話になった憧れの先輩の突然の死…。試合前の陽介の表情は、鬼気迫るものがありました。

 試合がキックオフされました。この日の陽介はベンチスタート…。僅か4日前まで、「7日間で中2日3連戦(全て延長戦。内2試合はPK戦)」のSリーグ杯を戦った影響か、疲労で体が重く、なかなか自分たちのサッカーをする事ができないアルビS…。「0-0」膠着状態のまま試合は終盤を迎えました。「Sリーグ優勝」のためには、絶対に勝たなければならない試合。しかし、時間は無い。このまま引き分けに終わってしまうのか…。


 84分。残り時間、6分…。ここで、サブだった斉藤陽介が投入されました。


 そして、その僅か3分後…。


 味方からのループパスに鋭く反応した陽介は、熱い「気持ち」を込めて右足を一閃!!




「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -2011年8月4日(木)陽介ゴール!VS TJP!1



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -2011年8月4日(木)陽介ゴール!VS TJP!2



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -2011年8月4日(木)陽介ゴール!VS TJP!3



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -2011年8月4日(木)陽介ゴール!VS TJP!4




 87分。途中出場から僅か3分後…ファーストタッチで陽介が決めた!!!!!!

 昨年までのチームメイト…松田直樹選手に捧げる、陽介の『魂』のゴール。

 このゴールが決勝点となり、アルビSは「1-0」で勝利をおさめました。



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -2011年8月4日(木)陽介ゴール!VS TJP!5




 戦術云々とか、技術云々だけが、「サッカー」じゃない。

 選手1人1人が本当に様々な「想い」を抱えてピッチに立っています。一瞬一瞬に「気持ち」を込めてプレーしています。陽介の松田直樹選手に対する熱き「想い」と「気持ち」が、この日の『奇跡』を呼び起こしたのです。

 松田直樹選手が亡くなった正にその日にゴールを決めた斎藤陽介。彼の『魂』は必ず天国の松田直樹選手に届いたと信じています。


 ピッチ上で選手は、己の『人生』そのものを表現していると言っても過言ではありません。

 ピッチ上で選手が見せる姿は彼らの「生き様」そのものであり、「人生」そのものなのです。



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -2011年8月4日(木)陽介ゴール!VS TJP!6


 
 今年は、「世界一、大好きな、おじいさん」の突然の死もありました。人の「命」や「人生」について考えさせられる事が多い年になっています。

 松田直樹選手の死は、僕にとっても非常に大きなショックでした。面識はないけど、年齢が近いし、誰よりも元気そうに見える人がこんな何の前触れもなく、突然、亡くなってしまうものなのか…。人生、本当に、何が起こるか分からない…。その日の夜は、怖くてなかなか眠れませんでした。

 2002年日韓W杯。「六月の勝利の歌を忘れない」というDVDの中で松田選手が中田英寿選手に「中田が飛ぶーぞ、中田が飛ぶーぞ!」と満面の笑顔で楽しそうに言っているシーンをフッと思い出しました。(下に<動画>掲載)

 「いつ何が起こるか分からない人生だから、今この瞬間を笑顔で思いっ切り楽しんで生きなければならない」

 松田直樹選手から「人は何のために生きるのか」…その「答え」を再認識させられました。







 松田直樹選手のご冥福を、心からお祈りいたします。