「ホンジュラスVSチリ」  <その2> | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

「ホンジュラスVSチリ」  <その2>


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -「ホンジュラスVSチリ」2010年6月16日(水)8


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -「ホンジュラスVSチリ」2010年6月16日(水)9



 ついに「28年ぶり」にW杯の舞台に戻ってきた、我らがホンジュラス…。

 その「喜び」や「感動」に浸りたいところだったが、試合後は大きな大きな「失望」ばかりが残る事となる…。いや、失望は「試合前」から始まっていた…。

 「ありえない!がある!ホンジュラス

 このブログをずっとご覧になって下さってる方ならよく分かると思うが、今回のホンジュラスはそれが完全に「悪い方向」に出てしまう…。

 <我が心の故郷・ホンジュラス。「28年間」の想いを胸に…いざ出陣!>で書いた不安が現実のものとなってしまった。ホンジュラス代表で最高のテクニックを持ち、イタリアで10年以上も活躍している司令塔フリオ・セサル・デ・レオンが、何と試合前日に負傷し、この日のチリ戦どころかW杯自体を棒に振ってしまう…。「試合前日」なんて、軽めの調整しかしないはず。それでどうして、W杯を棒に振るような大怪我が起こってしまうのか!?考えられない事態だし本当「悪夢」としか言いようがない。北京五輪で国民の期待を一身に背負いながら競技途中に負傷で棄権した劉翔と同じくらいの衝撃と絶望をホンジュラスに与えた…。


※W杯予選アメリカ戦の、デ・レオンの2ゴール!!!彼の南アフリカW杯は、戦う「前日」に終わってしまった…。





 しかし「悪夢」はまだ続く…。2005-06シーズンのセリエA「得点ランク3位」で、これまでイタリアで通算100ゴール以上も決めてるホンジュラスの「英雄」ダビド・スアソまでもが怪我でチリ戦に出場できなくなってしまったのだ。デ・レオンにしてもスアソにしても、南ア入り直前に行われた親善試合には、揃ってスタメン出場していた。僅か2週間前までは普通にプレーできてた選手が、今は試合に出場する事さえできないほどの悪コンディションに陥っている。一体、どれだけ酷い調整をすればここまで選手を破壊できるのか!?チームスタッフに強い怒りを感じずにはいられなかった…。(しかも2人の怪我は誰かと接触したとかではない)


※「セリエA得点ランク3位」に輝いた2005-06シーズンのダビド・スアソ全22ゴール!!しかし彼も怪我でチリ戦に出場できない…。





 僕はホンジュラス特有の「酷い調整」というものを、現地で実際に経験していた…。大事なリーグ初戦まで、ただの1日も休日をとらず1ヶ月以上、2部練をするなど、スポーツ生理学を完全に無視した調整をしていた。…で、肝心の試合が始まる頃には、すでに選手全員が満身創痍でグロッキー状態になっていた。 ※詳しくは→ <「休養」の重要性

 ホンジュラスを「28年ぶり」のW杯に導いたコロンビアの知将・レイナルド・ルエダ監督ならそんな事は無いと信じてたし、実際、彼がどういう調整をしたかは定かではないが、最近までプレーできる状態だった2選手が、今は怪我でW杯に出場できないという事実。ホンジュラス国民が受けたショックは計り知れない…。

 W杯メンバー発表の数日前には、予選でMVP級の活躍をしたFWカルロス・コストリーが所属先のルーマニアのチームで負傷してW杯に出場できなくなるなど、ただでさえ攻撃陣の戦力ダウンが懸念されていたのに、ここにきてデ・レオンとスアソまで失った…。さらに予選で大活躍したベテランMFダニ・トゥルシオも負傷離脱…。

 ホンジュラスが南アフリカW杯・北中米カリブ海地区予選の全18試合で挙げたゴール数は合計「32得点」。その内…


 フリオ・セサル・デ・レオン=「4得点2アシスト」

 ダビド・スアソ=「4得点5アシスト」

 カルロス・コストリー=「6得点3アシスト」

 ダニ・トゥルシオ=「3アシスト」


 実に「27得点」が負傷離脱した4選手によって生まれている。ホンジュラスの得点の約9割を占める4選手が試合に出れないなんて…これじゃあ得点なんてできないよ!!


※ESPN「南アW杯予選のホンジュラスベストゴール10」!!10位:デ・レオンのCKから。9位:コストリー→デ・レオンとつないで、最後はスアソのヘディングゴール。8位:コストリーのアシスト。7位:これまたコストリーのアシスト。4位:コストリーの豪快ゴール。2位:コストリーのスーパーロングシュート。1位:デ・レオンの芸術FK。…実に、全10ゴール中7ゴールが、負傷離脱した選手によって生み出されている。ホンジュラスが今回どれだけの痛手を負ったかが窺い知れる…。





 さらに信じられない事に、監督のレイナルド・ルエダまでもが、予選の退席処分の持ち越しで重要なW杯初戦であるこの日のチリ戦にベンチ入りすらできない!!「W杯で監督不在」なんて、聞いた事がない!!前代未聞だ!!


※重要なW杯初戦のチリ戦でベンチ外となった、ホンジュラス代表監督レイナルド・ルエダ。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -「ホンジュラスVSチリ」2010年6月16日(水)14



※デ・レオンもスアソもコストリーもトゥルシオも、そして監督さえもいないホンジュラス…。

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→?」 -「ホンジュラスVSチリ」2010年6月16日(水)11



 これで、どうやって勝てと言うのか!!!???

 いくら「ありえない!がある!ホンジュラス」と言えども、こんなのありえなさ過ぎる…。

 万全どころか、予選時の半分以下の力しかないホンジュラスの、あまりにも苦しい戦いが始まった…。



<つづく>



※一番下の右から3番目、サングラスして写真を撮ってる人物は「万里男」では…?(現在、万里男はホンジュラスを応援するために南アへ行っている)

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