- 陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)/伊坂 幸太郎
- ¥660
- Amazon.co.jp
***この本は2009年9月に読了しました***
嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった・・・はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス。
(Bookデータベースより)
嘘を100%見抜く名人、スリの天才、演説の達人、正確な体内時計を持つ女。
特殊な能力を持つ4人の銀行強盗たちが、いつの間にか巻き込まれた、愉快爽快痛快なドタバタ活劇。
まず設定からして著者っぽい。主人公達の銀行強盗がせっかく奪ったお金を、別の強盗に横取りされる。
著者の「ラッシュライフ」や「重力ピエロ」に出てくる黒澤と同じで、空巣泥棒が自分の家に空巣に入られるようなものです。
泥棒もまさか自分の家に泥棒が入るとは思わない。そういう盲点を突いてます。
黒澤の言葉を借りれば「自分が考えているようなことは、別の人間も考えているってことだ。大抵の企みは自分に返ってくる」、こういうことですかね。
そんな訳で、今回の四人組の天才銀行強盗たちも、まさか自分達が銀行強盗したお金を他の強盗に掠め取られるとは思ってもいません。
しかも犯人は、最近巷で噂の現金輸送車ジャック。
しかしなぜ、現金輸送ジャックは、自分達が銀行強盗を決行する日時を知ったのか?
そしてなぜ、逃走するルートが分かったのか?
4人組の主人公達は横取りされた現金を追ううちに、さらなるドタバタ劇に巻き込まれ・・・。
イジメに悩む息子や、さらには死体までも出てきて・・・。
さぁ、天才4人組み強盗は、横取りされた現金を取り戻すことができるのか?
洒落たユーモアやウィットのきいた言い回し、そしてなぜかすんなり受け入れられるキャラ設定で、軽快に面白おかしく読めました。
やっぱり著者の作品の魅力はこういうところにあるんだろうなぁ、と思うのです。
プロットがしっかりしてるところや、無用な伏線がないところはもちろんさすがなのですが、寓意を含んだ言い回しやらがお洒落でスタイリッシュに写り、読み手自身も読んでるうちにスタイリッシュな気分になれる、そんな感じなのかなぁ、と。
ただ、今回はほとんどオチが読めてしまったのが少々残念。
オーデュボン・ラッシュライフから立て続けに読んだので、著者の伏線の引き方と回収の仕方のパターンが読めてしまったような感じでした。
でもここまで分かりやすいと、著者がワザと分かりやすくしたんじゃないかと思えました。
それにしても、本当なら悪者の銀行強盗が、なぜか愛らしく思えてしまう。
「当日の銀行員と客に恐怖さえ与えないように気を配れば、これはもう、迷惑などではなくて、ショウだよ。サーカスと同じだ」
こんなどこか非常識な発言なのに、段々その気にさせられちゃうんですよね。
著者と主人公達が醸し出す空気みたいなものが、とても緩やかな感じなので、それをいつの間にか感じ取らされてるのかな。
死体なんかも出てくるのに全然陰気でもスリリングでもない。
まさにタイトル通り、「陽気なギャング」たちに自分を回されました。
ん?でもそういえば、別に「陽気なギャング」は地球は回してないんじゃないか?笑
ま、それも一つの寓意なんでしょうがね。
「ロマンはどこだ」
さて、おれのロマンはどこにあるかな?
ちなみに映画は観てません(´・ω・`)
★★★★
その他の伊坂幸太郎作品
◇『オーデュボンの祈り』 ◇『ラッシュライフ』 ◇『陽気なギャングが地球を回す』
読書INDEXはこちら
にほんブログ村