- Q&A (幻冬舎文庫)/恩田 陸
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***2008年10月頃読了しました***
都下郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。
死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず―多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。
防犯ビデオに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?
そもそも、本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。
(Bookデータベースより)
これからあなたに幾つかの質問をします。
ここで話したことが外に出ることはありません――。
この物語、タイトルの文字通り「Q&A」、つまり問答式で最後まで進んでいくのが特徴的です。
この問答式で、色々な人々が登場し徐々に事件の全貌が明らかになっていきます。
しかし、いろんな人の口から語られる言葉はその人にとって事実であっても、それが真実とは限らないものです。
作中でも
「自分が見たこと、知っていることを必ずしもきちんと言葉にできるとは限らないし、自分が見たと思ったことが見た通りのものでないことがある」
「事実も嘘をつく。事実はいっぱいあるってことを認識するしかないんじゃないの。人の目の数だけ事実はあるんだからさ。」
といったような記述がよく見受けられます。
いろんなバックボーンをもった登場人物がいろんな主観の事実を述べる、つまりこの小説には色々な事実が描写されていますが、真実は一体なんだったのか最後まで明確に表現されません。
まぁ俺的には、どうしてもそこがスッキリせず、尻つぼみ感に襲われましたが・・・。
序盤は何が起き、なぜ起きたのか、という箇所に焦点があてられ、非常にスリリングで面白かったです。
普段いつも何も考えずに足を運ぶ場所、そこに起きた突然の悲劇。
何も起きないのが当たり前のその場所が音をたてて崩れ、いつ何時、何が起きてもおかしくない、と言う恐怖をこれでもかっ、と言うくらい繰り返し再認識させられます。
突然に誰のせいでもなく、不条理で、やりきれない出来事が起こるかもしれない。
集団パニック心理の恐怖、目に見えないものへの恐怖が時として救いようのない悲劇を生む。
誰でも行く場所なんだよ、特殊な場所じゃない。
あなたやあなたの妻だったかもしれない。あなたの母親や、私だったかもしれないんだ。
それでも、どんな事件でもどんどん人々の記憶から忘れ去られ、風化していく。
忘れられない、そして忘れない関係者たちを除いて・・・。
忘れられない、忘れない人たちは明快な悪者がいないと、憎しみや悲しみの矛先が失われ、自己嫌悪に陥っていく。
それでも淡々と進んでいく問答、物語。
作中の時間が淡々と流れていくかのごとく。
ただ、当初からあった歪みは、物語が進むにつれ一気にその歪みを加速させてゆく。
ラストは、そっちに持ってくのかぁ、と個人的にかなり残念でした。
前述の通り、事実は人の目の数ほどあるのと同じく、本作の終わり方もまた、色々な可能性を持ったまま終わっているのだろうけど・・・。
前半がすごく良かっただけに、後半の失速感が個人的にイマイチでした。
意外と世の中、冗談みたいなことが本当だったりするんだよね。
みんなの考えてるリアルが、完全に虚構と現実で反転してるんだよ、今の世の中。
ひょっとすると、リアルなんてものは存在しないのかもしれないね。
みんなが、自分の知ってる虚構の中を生きてるだけで。
★★★
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