『蒲公英草紙―常野物語』  恩田陸 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)/恩田 陸
¥500
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***この本は2009年11月に読了しました***

青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから…、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。
(Bookデータベースより)



不思議な能力を持った『常野一族』と言う人々を描いた、常野物語。
「権力を持たず、群れず、常に在野の存在であれ」という言葉の由来を持つ『常野』。
その常野物語の第二弾です。ようやく読みました。第一弾は、「光の帝国―常野物語」


今回は「しまう」「響く」能力を持つ春田一家。
でも春田一家がメインではなく、とある村の「槙村」と言う富豪お屋敷の聡子お嬢様(遠目の素質がある)に仕える峰子という女の子が語り手となっています。
その峰子が「蒲公英草紙」と言う名の自分の日記を回想していく、と言った形式です。



時代設定は、にゅう・せんちゅりー(20世紀)を迎えた時代。
古きよき日本の描写。なんだかとてもイメージしやすかった。
こういう描写をどこか懐かしく身近に感じられるのは、日本と言う国を生きてきた先祖が代々受け継いできた記憶のなせる業なのかな、なんてことを思いながら読み進めていく。
全編に漂うのんびりとした昔ながらの古い空気。まるでたんぽぽの綿毛が中を舞うようです。
しかし、いつの時代も変化を迎えるもの。
日本自体が世界の中で大きく変革している時代。その時代の流れを生き抜く人々。
古い時代と新しい時代。人々は意識しつつも逃れることの出来ない大きな流れに沿っていく。



世界はより近く、より狭くなりつつある。
どこかで台風が起きれば、風を受けずには済まないのさ。世界はまさしく一蓮托生になりつつあるんだ。

皮肉なものだね。どこに何があるか分からない昔の方が、我々は幸せだったと思わないか?
今はどこに何があるか分かっているのに、そのことがますます我々を不安にさせ、心配事を増やしている。



利便性や機能性等を追求した結果、得られたものと失ってしまったもの。
これを今の時代に置き換えると、さらに得られたものあり、そして同時に失ってしまったものも大きいのだろうか。
答えは人それぞれかもしれない。



あたたかく包みこむような雰囲気の中に、悲しさと憂いが漂ってる常野物語。
今回も根底に流れているものは一緒でした。
のんびりとした時代背景から、大きな流れと言う名の濁流に飲み込まれていくクライマックスでは頬に涙が流れ落ちました。
未来を見通せる力を持ちながら、運命の日に向かって逆らわず生きていく。
小さく幼い少女の、内に秘められた揺るぎない強さが胸を打ちます。
優しさ・温かさ・強さ・切なさ・郷愁・警鐘・希望。いろんなことが胸をよぎり、独特な感傷に浸れました。




21世紀を迎えたばかりのこの国。
あと90年後の22世紀に、私達や私達の次世代は、この日本というと国を胸を張って素晴らしい国だ、と言えることができるだろうか。


光り輝く未来のためにできること・・・



「峰子さんだって、同じだよ。みんな一緒に作っていくんだよ。そうでしょう」



★★★★



その他の恩田陸作品
『光の帝国-常野物語』  ◇『Q&A』  ◇『夜のピクニック』  ◇『蒲公英草紙-常野物語』



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