『光の帝国―常野物語』  恩田陸 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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光の帝国―常野物語 (集英社文庫)/恩田 陸
¥520
Amazon.co.jp

***この本は2006年3月頃読了しました***


膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。
穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。
彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?
不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。
優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。
(Bookデータベースより)




不思議な能力を持った『常野一族』と言うの人々を描いた短編集。
「権力を持たず、群れず、常に在野の存在であれ」という言葉の由来を持つ『常野』。


設定はよくある、「昔、存在した特殊な力を持った一族の生き残り」といった感じ。
ただし、表現がうまいので、自分の身近に感じられたり本当に存在しているかのように容易に想像できた。
短編一つ一つが独立してる訳ではなく、共通の登場人物が複数の短編に出てきたりしてリンクしている。
その繋がりを深読みする面白さもある。



ところどころに人間のエゴイズムが描かれ、そのメッセージ性に心を打たれ切なく、哀しくなった。
しかし同時に心温まるシーンやセリフも多く書かれていて、救われた気分にもなれた。


特殊・特別と言うのはこの国では生きにくいんだろうな、と容易く共感できてしまえる自分がいるのが少し寂しい。


著者の作品は、いつもどこかでノルタルジックな気持ちにさせてくれる。
本作もやはりまた、そうでした。


でもこれ一冊だけだと物足りない。
どの短編も「end」ではなく、「to be continued・・・」と言った終わり方だったから。
あとがきで著者も言っていたけど、掘り下げれば短編ひとつで本が一冊かけちゃう題材だったし。
常野の存在意義や使命、これからやろうとしていることの内容がもう少し明らかにして欲しかった。
ほんとうに序章だけで終っちゃった感じかな。
でもそれだけ続編を読みたくなる作品だったと言う事かも。
内容はすごく良かったけどその点が欲求不満だった。
続編も出てるようだし、続編にも期待します。



常野一族を包み込むゆるやかだが、大きな流れが動き始めた。
世界は新しい局面を迎えようとしている。
常野の人々が時代の表面に出なければならないような世界に。
自分も一緒に流れにのって、見守っていきたい。
そんな気分になりました。






――やがては風が吹き始め、花が実をつけるのと同じように、そういうふうにずっとずっと前から決まっている決まりなのだ。
僕たちは、草に頬ずりし、風に髪をまかせ、くだものをもいで食べ、星と夜明けを夢見ながらこの世界で暮らそう。
そして、いつかこのまばゆい光の生まれたところに、みんなで手をつないで帰ろう。




★★★★



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