『うつくしい子ども』  石田衣良 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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うつくしい子ども (文春文庫)/石田 衣良
¥530
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***この本は2006年5月頃読了しました***

緑豊かなニュータウンを騒然とさせた九歳の少女の殺人事件。犯人として補導されたのは、ぼくの十三歳の弟だった!崩壊する家族、変質する地域社会、沈黙を守る学校・・・。殺人者のこころの深部と真実を求めて、十四歳の兄は調査を始める。少年の孤独な闘いと成長を痛ましくもみずみずしく描く、感動のミステリー。(Bookデータベースより)





緑多い新興住宅街で9歳の少女が殺害される事件が起きた。その犯人は、ぼくの一つ下の13歳の弟だった!
なぜ弟は殺したのか?弟をその状況に向かわせた何かがあったはずだ。
最低の人間だって、誰かがそばに寄り添ってあげてもいいはずだ。
それがぼくの弟ならなおさらじゃないか。
・・・兄の孤独な闘いが始まる。




平凡な日常から一気に地獄のような闇へと転がり崩壊していく一家の一夜の出来事がリアルにかかれている。
さらに周りを取り巻く環境の変化はもちろん、社会や報道の冷徹さ、学校・町内での容赦ない扱われ方の描写がすごくうまいと思った。
そして主人公の成長過程も見事に描写されている。
ちょっと大人び過ぎている気がするけど、文中の「周囲の大人たちの最低の行動が、少年に素晴らしい成長を強いることもある。」と言う文は共感できる気がした。




本作品は兄からの視点は葉っぱマークで、新聞記者からの視点は鉛筆マークで始まる段落で書かれ、当初はそれが交互に書かれている。
しかし物語が進むにつれいつの間にか、兄の視点である葉っぱマークである主観的視点からの記述が多くなり、それがクライマックスに向けてスピード感を与えているようで良い。
それに新聞記者も主人公に負けず劣らず、自分のしていることに葛藤し、新聞記者として成長している。



全部で3章から成っており、終章である第3章の題名。その題名自体は第1章で出てくる。
しかしクライマックスのシーンと最後のシーンを読んだときに、その意味が一つではなく幾重にも重なっていることに気付くと、その奥深さを感じることができる。
そして本書のタイトルである『うつくしい子ども』。
主人公である加害者の兄はニキビ面で容姿自体はかっこよくはない。
うつくしい子どもとは誰のことを、そしてどんな内面を意味して指してるのか?
その意義を自分なりに考察するのも面白い。




被害者や、被害者の遺族の視点ではなく、だからと言って加害者自身の視点ではない。
加害者の一番近い存在である兄の視点から書かれた物語は自分にとって新鮮だった。
こういった事件は、被害者はもちろんのこと、加害者の家族をも被害者にさせてしまうのだ。



もし自分だったら、と考えると心が折れてしまい、兄のようにあんなに強く優しく居続けられないだろう。

クライマックスの展開と最後の兄の選択の動機がはっきり明記されていないとこが少し残念・・・。




誰しもがそれぞれの星に住んでいて「夜の王子」になる可能性を秘めているのかも知れない。

そして自らの命の火を自分自身で付けてしまうのは、ほんの些細なことがその始まりなのかも知れない。

     『夜の王子はきみのなかにきっといる』





★★★★★

今現在放映してる、『アイシテル-海容-』ってドラマがこの本と似たような内容かな。
ドラマは少年が近所?のもっと小さい少年を殺してしまった、という設定だったはず。
今のところ飛び飛びな感じで見てます( ´艸`)



その他の石田衣良作品
『うつくしい子ども』  ◇『娼年』  ◇『波のうえの魔術師』  ◇『4TEEN』


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