2009-10-26 14:00:00

【書評】あの演説はなぜ人を動かしたのか

テーマ:コミュニケーション

本書は著者の川上徹也さんより献本いただいた。
まずは厚く御礼申し上げたい。


演説を聴いて心を動かされた経験ってあるだろうか?
それによって、実際の行動に何かの変化が起こるような、考え方が変わるような強い影響を受ける経験ってあるだろうか。
あるいは、演説によって人の心を動かし、行動を促した経験はあるだろうか。


そもそも日本にはここでいうところの「演説」という文化があまり根付いていなくて、比較的新しいそうで、本書の「はじめに」には次のように書かれている。


そもそも「演説」という言葉は仏教用語で、仏の教えを説くことを意味していました。それを明治になって福沢諭吉が英語のspeechの訳語として使うようにしたのが始まりだと言われています。福沢諭吉は著書『学問のすすめ』で「演説とは英語にて『スピイチ』と言い、大勢の人を会して説を述べ、席上にて我思うところを人に伝うるの法なり」と定義しています。(p.3)

こうした意味での「演説」としては、やはり政治運動や社会運動を展開する際に行われることが多いだろう。
逆に、そのような運動を行うに当たっては、大勢の人に自身の思うところに賛同いただき、共に行動していただく、あるいは行動を支持していただく必要があるから、演説はもはや必須と言える。


しかし、選挙運動の際の街頭演説のイメージが強いためか、僕の中にはあまりいいイメージはない。
聴きたくもないのに聞かされる演説は正直煩わしいという気持ちが先にたつ。
ただ、先に書いたとおり、「演説」はもともと支持して聴いてくれる人にだけ訴えかけても意味はなくて、新しい支持層、賛同者を増やしていくためにするものだろうから、ここに「演説」の内容以前に、シチュエーションなどの難しい問題があるとは思う。


僕がした数少ない経験では、中学生や高校生のときの生徒会長選挙のときの演説くらいだろうか。
もう昔のことなので、どんな内容を話したのかなんて覚えてもいないけれど、まともな演説ではなかっただろうなあとは思う。
(応援演説をしてくれた友人の演説内容も覚えていない・・・ 大変申し訳ない。)
無理やり講堂などに集められて聴かなくてはいけないのだから、そんなところでまともではない演説などされて、聞くほうにはもっと申し訳なかったなあと今更ながらに思う。
まあ、所詮若かりし頃の失敗だし、聞くほうも成熟し切っていないわけだから、誰も咎めはしないけど。
しかし、校長先生の話を詰まらないと文句ばかり言っていたくせに・・・ と思うと、過去の自分が恥ずかしい(汗)



話が少しそれてしまったけれど、では、そういった壁を乗り越えて、聴いてもらえるシチュエーションが整った場合には、その機会を最大限に生かして、話の中身できちんと人々の心をつかみ、動かしていかなければならない。
本書では、七つの歴史的な演説を取り上げ、それらの演説が人々の心をつかみ、動かした要因を分析している。


七つの演説とは


(1) 小泉純一郎 郵政解散演説
(2) 田中角栄 ロッキード選挙演説
(3) バラク・オバマ 2004年民主党全国大会基調演説
(4) ジョージ・W・ブッシュ 9・11直後の演説
(5) ジョン・F・ケネディ 大統領就任演説
(6) フランクリン・ルーズベルト 大統領就任演説
(7) マーティン・ルーサー・キング・ジュニア 「私には夢がある」演説

これらの演説が、多くの人々の心を動かしたことに異論はないと思う。


著者の川上さんは、これらの演説が大勢の人の心を動かした要因として、「ストーリーの黄金律」というパターンが組み込まれているということを強調している。


ストーリーの黄金律


(1) 何かが欠落した、もしくは欠落させられた主人公
(2) 主人公がなんとしてもやり遂げようとする遠く険しい目標・ゴール
(3) 乗り越えなければならない数多くの葛藤・障害・敵対するもの


前著『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』では、ビジネスにおける「ストーリーの黄金律」の重要性を説いたが、政治や社会運動など、すべて人々の心を動かし、感動させるための根本的な要因がここにあることになる。


※ご参考: 【書評】価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ


この黄金律は、いわば「人類共通の感動のツボ」のようなものだと川上さんは言う。
そして、七つの演説のそれぞれが、見事なまでにこの黄金律を含んだものになっていることが明かされていく。



僕は、日本人で、英語もまともに理解できないくせに、これら七つの演説の中で、バラク・オバマの演説と、キング牧師の演説が好き、というか心を動かされる何かを感じる演説だった。
言葉に乗せられた魂のようなものがあるのだろうか、何度聴いてもいい演説だと思うのである。


もちろん、スピーチのテクニックのようなものの影響もあるとは思うが、恐らくは、上記のストーリーに共感して創り上げられた「場の雰囲気」が、僕に例えテレビ越しであろうとも、何かを伝えているのだと思っている。
そういう意味では、ストーリーの黄金律によって作られた感動は、直接にその演説を聴いていない、理解できていない人にまで伝わるほどの感動を生み出すというパワーを秘めているのであろう。



本書でなされている分析をあらためて考えてみると、聴衆としては特に気をつけておかなければならない。
例えば、多くの方が後になって指摘しているように、小泉純一郎の郵政解散はその是非について議論のあるところではあるが、その当時は大きな渦を作り出して冷静な声が掻き消えてしまった感がある。
特にこうした政治演説においては、ストーリーの黄金律を意識した上で、冷静になって聴く姿勢を強く意識していないと、感動のツボを押されて流されてしまいかねないということだ。



「演説」を行う機会のある人には、その狙いを達成するために是非とも読んでおいて欲しい一冊。
代表的には政治家、政治家を目指す人がすぐに思い浮かぶところだが、お客様に対して、社員に対して語りかけなければならない経営者の方々も、それは立派な「演説」なのだから、是非ご一読のほどをお願いしたい。
(それらの方々のために原稿、草案をお書きになる立場にある方々も。)
聴く方としても、せっかくなら「いい演説」を聴きたいのだから。


その一方で、聴く立場としても、むやみやたらに感動させられ、流されてしまわぬよう、演説を聴く姿勢を身につけるために読んでおきたい。
「演説」の力が見直され、今後ますます素晴らしい演説が生まれ、文化として根付いていく中で、「演説を聴く姿勢」も新しい教養になるのではないだろうか。



【関連リンク】
著者ブログ: カワテツの「出版プロモーションの裏側、全部見せます」


バラク・オバマ 2004年民主党全国大会基調演説





【基礎データ】
著者: 川上徹也
出版社: PHP研究所(PHP新書) 2009年10月
ページ数: 208頁
紹介文:
すぐれた演説・スピーチには、人の心を揺さぶり、歴史を動かし、世界を変える力がある。小泉純一郎の郵政解散演説、オバマの民主党大会史上最高の演説、ブッシュが九〇%超の支持率を得た九・一一演説、キング牧師の「私には夢がある」演説……。こうした名演説には、必ずといっていいほど使われている手法がある。伝えるべきメッセージを、「人類共通の感動のツボ」を突くようなストーリーに託して語っていたのだ。ストーリーテリングの専門家が、ビジネスにも有効なスピーチの法則を、具体例をあげて明らかにする。


あの演説はなぜ人を動かしたのか (PHP新書)


川上 徹也
PHP研究所
売り上げランキング: 1249





【併せてお薦め】

CD2枚付[完全保存版]オバマ大統領演説/コスモピア編集部
¥1,554 Amazon.co.jp

オバマ大統領の全国大会基調演説だけではなく、ケネディ大統領の就任演説、キング牧師の「私には夢がある」演説も全文収録されており、ルーズベルト大統領の就任演説も抜粋で収録されているという、本書で分析した演説の半分が網羅されたお得な一冊。

【他の方の書評記事】

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=行動読書=多読書評ブロガー石井による月間読書量101冊中のおすすめ本 書評ブログ ~リード&アクションで人生を変えよう!!~: ■書評■講演録がリアル!!「あの演説はなぜ人を動かしたのか」川上徹也 多読書評ブロガーおすすめ本

★まいにち楽読(らくどく)★ ~TMstarの読書ブログ~: 【Yes we can だけじゃない】あの演説はなぜ人を動かしたのか:川上徹也

こちらは異色で、著者が行く本書の国会議員売り込みレポートの様子
女子勉: 【レポート】勉子 国会に行く!!
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2 ■Re:無題

>わんわんさん

初めて動画も貼り付けてみたりと、多分いつも以上に力の入った記事になったかと思います。
構成自体はいつもと同じで読みながらほぼ決まっていたのですが。。。

僕もわんわんさんの書評はいつも参考になっています!

1 ■無題

Takaさん。
こんにちは。
いつも拝読しております。
この著書を私も興味深く読みました。
Takaさんの書評も力作ですね!
参考になりました!

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