あと20時間後には本物の直木賞が発表されます!

まずはその直前に、あもる一人直木賞(第156回)の受賞作の発表をご覧ください。
 →第156回の選考会の様子はこちら・・・

 あもる一人直木賞(第156回)選考会ースタートー

 あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過1ー

 あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過2ー

 

今回もなんだかんだでギリギリだったねえ。

私ったら帳尻合わせの天才だわ〜。

それもこれも全て、候補作のうち3作も秀作が出たからなのだ。

うえ〜ん、嬉しい悲鳴!

しかしむむむと悩んで悩んですんごく悩んだわりには簡単に結論が出ました!

・・・でも〜・・・いやいや・・・。

 

この羊毛より軽い決心が揺るがないうちに、さっさと発表してしまおう。

それではあもる一人直木賞選考会(第156回)の受賞作品の発表です!!!!!


はいっっ!ドラムロール、スタ~ト!!!!


ドロドロドロドロドロ~~~~~~



ジャン!!!

 

 

須賀しのぶ『また、桜の国で』(祥伝社)

です!!

 

 

おめでとうございま〜〜〜〜〜〜す!!!!

 

須賀さん、初めてのノミネートにして即受賞、本当におめでとうございます!!

 

前から述べているとおり、

須賀しのぶさん、恩田陸さん、森見登美彦さんの三つ巴ならぬ三すくみの戦いであった。

誰が獲ってもおかしくない、そんな団子状態の中、

最終的には初ノミネートというハンデをはねのけ、

怜悧な文体と冷静な描写で心をえぐってきた須賀さんにあげたい、と思ったのだ。

 

そう、初のノミネートというところが弱点ではあるんだよねえ。

しかし私は、恩田陸が『蜜蜂と遠雷』の菱沼先生に言わせていた、

「君ら(選考委員)にあの異端児を評価できるのか?」

という台詞が、このたびの直木賞選考委員らの心を突いたに違いないと信じ、

初ノミネートでも授賞させるという勇気ある行動(当たり前なのだが)に出ることを信じたい。

私はまだ、できそこないの文学界をどこかで信じているのだ。

そうでなければ毎度毎度、こんなくっだらないことやってられっかつーの。←口が悪い。

 

そんな尊厳と良心を取り戻したであろう文学界の重鎮らによる(あ、バカにしてます)、

選考会の様子をいつものように私が予想してみたい。

 

まず

▽垣根涼介『室町無頼』(新潮社)

▽冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』(文藝春秋)

の2作品が速攻で落ちるであろう。

 

垣根さんには多少の賛辞と次回に期待といういつもの美辞麗句が並べられるも、

一方の冲方さんには酷評が待っていると思われる。

垣根さんのノミネートはとりあえず選考委員らへのご挨拶も兼ねていたと思うが、

冲方さんは出版が文藝春秋でもあるし、早々の落選は多少イタイのではないか。

(文藝春秋からもっと他にいい作品は出てなかったんかい。)

 

この2作品が落ちたところで、いよいよ本命3作品について話し合われるのだ。

これはきっと長くなると思うな〜。

私が選考委員なら意地になってどれもこれも推しちゃうかもしれない。

そんな私以上のあまのじゃくがうじゃうじゃいそうな魔窟では、

1〜2回の投票では決まらないのではないか。

 

な〜んてやっている間にとうとう1作品が落ちるのだ。

きっと・・・

▽恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)

が・・・。

 

ああああああ!!!

私のイチオシの作品だったのに〜〜〜〜〜〜〜〜。

恩田陸と音楽についてたくさん語り合いたかったのに〜〜〜〜〜。

でもきっとこれが最初に落ちると思うんだ〜。

いいところもたくさんあったんだけど、他の2作品に比べると個性がない。

読みやすくて、万人受けするいい作品ではあったんだけど、欠点もたくさんあった。

とか言われちゃうの。

天才少女あ〜ちゃんの描き方が不安定で足りない、とかさ。

林のオバハンとか言いそう〜〜〜〜〜。うわ〜言いそう〜〜〜〜。

すんごく見える!視力2.0の私にはまるっとお見通しだ!!!

 

そして

▽須賀しのぶ『また、桜の国で』(祥伝社)

▽森見登美彦『夜行』(小学館) 

の初登場須賀さんとベテラン森見さんの一騎打ちで最終決戦に突入するのだ。

 

クセのある森見さんを強く推す選考委員が何人がいそうなんだよな〜。

ああ、須賀さんの戦況アヤウシ!!

それでも浅田次郎さんあたりが、

第二次世界大戦前後のポーランドが舞台であるにも関わらず、

小説の底に時代小説的な流れもあって味わい深い、とか言って、

強く須賀さんを推してくれそうな気がする!!

 

そして見事、須賀さんサクラサク。

というめでたい結果になるのです!!!

 

以上、そんな私の妄想に長々とおつき合い下さりありがとうございました。

 

以下、私の順位の発表と各作品の簡単な総評を行っていく。

 

 

1位 須賀しのぶ『また、桜の国で』(祥伝社)

 

 

いわゆるハーフである主人公が日本の外務書記生として欧州に赴任する。

極東では知り得ない『真実』を見た主人公がたどる道を丁寧に描いた秀作。

大変デリケートな問題に真摯に向き合い、丁寧に描きながらも、

読んでいるこちらが嫌になるようなドロドロをなるべく取払い、

冷静に、時に冷徹に最後までその姿勢で描き続けたことに私は賞賛を送りたい。

単なる史実を書き付けただけではなく、

それをベースに架空の人物と実在する人物をうまく絡め、ポーランドという国を描いた。

それはある意味、時代小説を読んでいるようであったとも言えよう。

主人公をハーフにした設定した点も、後々色々なところで生きてくる。

単なる歴史物語、戦争と平和物語に終わらせない作者の上手さが

今回の受賞を決めたポイントである。おめでとうございます。

 

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過2ー

 

ちなみに私、この作品を読んでショパンを聞く姿勢がちょっと変わった。

というより、ポーランド人にとってショパンがどういうものなのかということを知り

ショパンとポーランドに敬意を払いながら、最近ワルツをよく聞いている。

作品によく登場する革命のエチュードは相変わらず好きじゃないんだけどさ。

 

 

2位 森見登美彦『夜行』(小学館) 

 

夜行夜行
 
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煙のように消えてしまった友人を巡って、仲間たちが過去について語っていく不思議で怖い作品。

これは好きな人は好きだと思うのだが、最後まで「?」が消えない人も多いと思う。

それが森見作品の特徴でもあり、愛すべきいいところなのだが、

直木賞のような権威ある(ぷ〜くすくす)場面では説得力がない、と弱点にもなる。

私はこのなんともいえないモヤモヤが好きだったなあ〜。

手に触れたら溶けてしまいそうな不安定な物語の数々。

私が今いる世界は本当の世界なのか?誰しも一度は朧げに感じるささやかな疑問。

それを見事に描いている。

夜の尾道と、雪国の津軽の描写のすごみに私はやられた。

そして最後の「夜行と曙光」が交差する神秘的かつ恐怖の描写もすばらしかった。

 

・・・ってまるでこっちが直木賞獲ったみたいじゃないか(汗)

この作品もとくに欠点が見当たらないのだ。

雑でもないし、人を静かにひたひたを脅かす手法も本当にうまい。

じゃあなんで2位かって、そりゃもうなんとなく、です。

 

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過2ー

 

今気づいたが、1位と2位は読む順番が最後の2作だったということに。

やっぱり後半の方が印象が強く残っちゃうんだよな〜。

恩田陸が『蜜蜂と遠雷』で描いたコンクールの話ではないが、

ここまで接戦だと読む順番も順位にわりと関係してくるのかもしれない。

 

 

3位 恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)

 

 

クラシックファン必見の音楽コンクールをめぐるピアニストたちの戦い。

クセの強い作品も書く恩田陸だが、今回は直球勝負の作品を書いてきた。

この幅の広さが多くのファンを獲得している理由であろう。

気負うことなく、それでも熱い思いで描いているのが手にとるようにわかった。

そこまで詳しくないであろうクラシックについて勉強し、

作家恩田陸も登場人物とともに物語が進むにつれて成長していっている。

まだ成長していくんだなあ、恩田陸。

そこが評価されてしかるべきなのだが、

あえていうなら、ちょっと詰めが雑なところが気になるといえば気になった。

前に触れた二次予選の設定が混乱していることはともかく、

登場人物の描き方が雑といえば雑かもしれない。

選考委員に指摘されるところはそれくらいだろう。

しかし私は忘れない。

恩田陸がこの作品で『選考委員に彼(異端児)を評価できるのか』と一石投じたことを。

このコンクールでその異端児が本選に残り、周りの奏者も成長していく様子を描き、

まだまだ文学界も音楽界も希望はある、と示したことを。

これについて誰か指摘してくる勇気ある猛者はいるだろうか。

 

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過1ー

 

ちなみにこちらの作品でわたくし、プロコフィエフのピアノ曲に大変興味を持った。

そういう意味でも40過ぎた、カチカチの石頭の私でも、

まだクラシックについて、ワクワクと興味を抱けるいい作品であったのである。

でも3位〜。でも好き〜。

 

 

4位 垣根涼介『室町無頼』(新潮社)

 

室町無頼室町無頼
 
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初ノミネートの垣根さんの作品、おもしろく読んだ。

しかし登場人物が総じてあまり魅力的でなかったことが今回の敗因。

設定もおもしろかったし、ドキドキハラハラするところも多くあり、

もっとおもしろく、もっと魅力的に書けた気がするのだ。

1位の須賀さんは時代小説ではなかったものの、史実と虚構の絡め方が大変巧く、

登場人物も皆、魅力的であった。

時代小説を書くなら、すべからく魅力的に描くべし。

今後どう時代小説を書いていくのか、楽しみに待っていたい。

 

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過1ー

 

 

5位 冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』(文藝春秋)

 

 

これが私の中では今回の問題作。

冲方さんの作品、私は結構期待していたのだ。

巷でも話題になっていたし、タイトルもインパクトがある。

時代小説ではないが、きっとさぞかしおもしろく描かれているのだろうと。

それがそんなに、いやほぼ全く、おもしろくなかったことに残念な思いだった。

設定は奇抜だったが、それが活かしきれていない。

思春期の若者はこれを面白く読むんだろうか。という思いがかすかによぎったが、

私が高校生の時、果してこれを面白く読んだだろうか、と考えてみたが、

きっと面白くは読んでないだろうなあ。

あ、でもさすがだな、と思ったのはスカスカながらも最後まで読ませたところである。

作品の内容についての詳しい説明はこちら→

 『あもる一人直木賞(第156回)選考会ー途中経過2ー


冲方さん、次の作品が良くないとしばらく直木賞から遠ざかる気がする。


◇◆
 

今回の選考会は本当に幸せだった。・・って最近よく言ってる気もするが。

語りたいことが尽きないという良作に、それも3作品も出会えたからだ。

読後、じ〜んとするあの感覚に私は幸福を覚えた。

 

ぜひ恩田陸の作品は、主な登場人物の課題曲が最初に全て書かれているので、

YouTubeなりで聞きながら読んでみてほしい。

ポーランドにおけるショパンといい、音楽コンクールといい、

新しい音楽の世界に目を向けられたのも幸せだった。
やっぱり本も音楽もいいなあ。

 

私が愛した3作品、どれが直木賞を獲っても異論なし!

でもできれば外したくないから、須賀さんが受賞して〜〜〜〜〜!!!

天まで届け!!あもちゃんの切なる思い!!


さあさ、お立ち会い!
19日の夜、ガースーしのぶこと須賀しのぶさんが登場いたします!!