公園でいつも会うおばさまが、アンパンマンのチョコをヒルマに差し出しました。

 

大好きなチョコに行儀悪く飛びつくかと思いきや、ヒルマはまったくの無反応でした。

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「ちょこどうぞ、だって。ありがと、は?」

 

わたしのフォローにも表情ひとつ変えません。まるでヒルマの目の前には誰もいないかのようです。

おばさまは困ったようにこちらを見ました。

 

わたしは丁寧にお礼を言って受け取ると、ヒルマの手にチョコを握らせ、足早に公園を出ました。何かヘン…何かヘン…、と思いながら。


当時、保健師さんにこの不可解な出来事を報告すると、


大きな声でヒルマを呼び、「目が合うから大丈夫よ」と笑い飛ばされました。

 


「ちっとも大丈夫じゃなかったですよ」

 

いつか機会があれば、そう報告したいのです。

【つづきを読む】第9話「1才~こだわり行動とひとり遊び
 

* * *

 

 


さて、保健師さんには相手にされなかったものの、どうにも引っかかる出来事だったので、2才の再健診でも話してみました。


あの時、ヒルマの目はおばさまを見ていました。見ていたけれど、少し不思議な感じがしたのです。

 

向いているけど視線が通り抜けているような、見ているのはもっと、別のモノのような…。


5才になった今でも、この無視はたびたび起こり、わたしを疲れさせています。

 

ヒルマのすぐ目の前で、目線を合わせて話しかけても、聞いていないので驚きます。


これは最近気づいたのですが、そんな時よく見るとヒルマの口元が小さく歌っていたりします。

目と目は合っているけれど、あたまの中は他のことに夢中─。

 

ヒルマの無視の正体は、そういうことかもしれません。