イルミネーションが輝くイヴの夜
街に溢れかえる恋人達の間を縫うように
あたしは走った。
約束の時間はとおに過ぎてる。
待ってるはずない…でも…待ってて欲しい
自分勝手な思いを抱えながら、約束の場所に向う。
はぁっ・・
人通りのまばらになった広場
あたしは浅い息を繰り返した。
辺りを見回すけど…やっぱりいるはずないか…
「宿木の下でキスをすると幸せになれるんですって」
不意にあたしの耳に飛び込んできた、囁くような声。
思わず振り向くと、木の生い茂った下。
周りから死角になる場所に寄り添うふたつの影が見えた。
「願わくはお嬢の人生に幸多かりし事を」
背の高い男の人がかがみ込むようにして彼女に口づけた。
あたしはぎゅっと唇をかんで目を逸らす。
二人が肩を寄せ合い立ち去った後も、その場所から動けずにいた。
涙で景色が歪む。
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「うわぁ、すっごい…もっと良く見せてよ」
ランチタイムで混み合う狭い店内に、知世の声が響き渡る。
「やだ、知ちゃん…声大きいよ」
真紀がサラサラのストレートヘアーを揺らしながら
あわてて辺りを窺う。
「真紀がもったいぶるからでしょ」
知世は手を伸ばすと、真紀の手のひらに乗せられていた
小さなジュエリーケースを取り上げた。
「ほら、あきも見てみなよ」
フォークに巻きつけたパスタを口に運ぼうとしていたあたしの鼻先に
それを突き出す。
フォークをお皿に戻すと、ケースに収められた指輪をじっと見た。
プラチナ台に堂々と輝く一粒ダイヤ。
「…キレイ・・ずいぶん大きな石ね」
「そりゃそうよ！なんて言っても、真紀のフィアンセは大学病院の
若きホープだもの。おまけに、実家も大病院だし」
まるで自分の事のように、胸を張って答える知世が可笑しくて
思わず吹き出した。
あたしは小早川 あき。２５歳。
業界１，２を争う大手ワインメーカー『キャトル・レザン』に入社して３年。
お昼休みはいつも、同期の増山 知世と高橋 真紀の二人と
会社の目の前にある喫茶店『ciel』で過ごしている。
「はぁ・・年下の真紀に先を越されるなんて、ちょっと悔しいな・・」
あたしと知世は四大、真紀は短大卒なので、同期といっても実際には二つ違い。
「何言ってんのよ。知世だって大森くんと順調なんでしょ？」
知世にも同じ部署に年下の彼氏がいる。
「まぁね。でも、あいつ、すごい焼きもち妬きでさぁ…
この間も廊下で同期の柿崎くんと立ち話してるトコみられちゃって。
その後、超機嫌悪くて・・宥めるのが大変だったんだから」
知世は大袈裟にため息を吐くと、ブラックコーヒーを啜った。
あたしと真紀は顔を見合わせ、くすっと笑う。
「それはどうも。ご馳走様でした」
あたしの言葉に、コーヒーを噴出しそうになった知世は、あわてて左手で
口元を押さえた。
「ちょっと！別にノロけてる訳じゃ…」
乱暴に置かれたカップが、ガチャンと音を立てる。
まだ、くすくすと笑い合うあたし達を見ながら、僅かに頬を赤らめた。
「…まぁ、半分はノロケだけど・・そういうあきはどうなのよ」
「え？あたし…」
ずきんと胸の奥が痛む。
「”的屋さん”と別れてから半年以上経つでしょ？」
「的屋じゃないってば！あれは夏の間だけのバイトで龍の本業は・・」
…龍…
その名前を口にしただけで、息が苦しくなる。
あれから９ヶ月も経つのに…
→リディアさまver. Trois Noëlトロワ・ノエル【聖夜：La nuit sacrée】（１）
本日より１２月２４日のクリスマス・イヴまでの連載になります。
こちらはリディアさま との連動企画になっておりますので
併せてお読みいただければ幸甚でございます。
約１ヶ月、お付き合いの程宜しくお願い致します
あきまま
美月と真柴の二年後を描いたリディアさまの小説
どうぞ宜しくね❤
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柳
こちらも宜しくィー(｡･ω･)ゝ
