【夕顔110-2】「せ」か「させ」か…?
源氏物語イラスト解釈です
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光源氏は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下した。帝の後妻である藤壺宮(ふじつぼのみや)が亡き母に似ていると聞き、思い焦がれるようになる。
ただ今、「4.夕顔(ゆうがお)」の巻。中流階級の空蝉(うつせみ)との仮初めの恋を経て、現恋人の六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)にも、正妻の葵上(あおいのうえ)のもとにも心が向かないでいる光源氏は、惟光(これみつ)の実家の隣家にひっそり住まう、夕顔の君に心惹かれています。
【今回の源氏物語】
惟光、いささかのことも御心に違はじと思ふに、おのれも隈なき好き心にて、いみじくたばかりまどひ歩きつつ、しひておはしまさせ初めてけり。
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☆ 本日の入試対応問題 ☆
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惟光、いささかのことも御心に違はじと思ふに、おのれも隈なき好き心にて、いみじくたばかりまどひ歩きつつ、しひておはしまさせ初めてけり。
問)傍線部の説明として不適切なものをすべて選べ。
1.「おはします」は、「行く」の尊敬語である。
2.「させ」は、尊敬の助動詞「さす」の連用形である。
3.「初め」は「そめ」と読み、光源氏が夕顔のもとへ通い始めたことをさす。
4.「て」は、強意の助動詞「つ」の未然形である。
5.「けり」は、間接体験の過去の助動詞である。
このような文法事項は、
よく大学入試に出題されます。
特に、今回のように、
見分けに苦労する重要文法事項が
組み合わさっている場合は、
かなりの頻度で出題されます。
おはしまさ/せ/初め/て/けり
まずは、この品詞分解ができましたか?
【おはします(御座します)】
【自動詞:サ行四段活用】
①(「あり・をり」の尊敬)いらっしゃる
②(「行く・来」の尊敬)おいでになる。お越しになる
③(尊敬の補助動詞)~ていらっしゃる
【そむ(初む)】
【補助動詞:マ行下二段活用】
…~し始める
全訳古語例解辞典(小学館)より
この2つの動詞で、
「通い始め―なさる」という意味になります。
光源氏が、夕顔のもとに通い始めたんですね!
1.「おはします」は、「行く」の尊敬語(○)である。
3.「初め」は「そめ」(○)と読み、光源氏が夕顔のもとへ通い始めた(○)ことをさす。
また、助動詞を見てみましょ♪
(σ・∀・)σ
「させ」じゃなくて、
「せ」が、今回の助動詞なんですね!
しかも、
「せ(す)」の後に尊敬の補助動詞が来ていないので、
この「せ(す)」は、尊敬じゃなく、使役の意味です。
─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ
2.「させ」は、尊敬(×)の助動詞「さす」(×)の連用形である。
さらに、
「―てけり」となった場合の「て」は、
決まっていますよん!
あとに、過去の助動詞「けり」がついてるので、
完了じゃなく、強意の意味となるんですね!
あ、それと、「けり」との接続から、
連用形であることも、お忘れなく!
4.「て」は、強意の助動詞「つ」の未然形(×)である。
5.「けり」は、間接体験の過去の助動詞である。…○
正解…2・4