最近、

1.短答過去問を

2.くり返し解くこと

について、関連する2つの質問・相談をいただきました。

結構多くの受験生が持つであろう悩みが現れていたので、記事にしようと思った次第です。


1.

まず、短答過去問に出ていない知識がこれから受ける短答本試験で出題されることの対策として、「より多くの問題に触れておくことが必要かと思いました。過去問にでていないところをどうカバーするかということについて、先生はいかがお考えになりますでしょうか。」という旨の質問・相談をいただきました(記事『合格者等によるアドバイスの信用性 』のコメント№5)。

私は、短答過去問を「完璧」にした上で、「より多くの問題に触れ」ることは否定しません。

(1)

しかし、論文対策もしなければならない以上、来年の本試験までに「より多くの問題に触れ」る余裕のある受験生は、ほぼ皆無だろうと思っています。

(2)

また、短答過去問を「完璧」にする前に、短答全過去問を1問単位で正答率100%にするとか、その先の肢単位で正答率100%にする途中とかで短答本試験に受かってしまう受験生が多いので、そもそも「より多くの問題」に触れる必要はないとも思っています。

なお、私のいう「完璧」概念については、記事『なぜ「完璧」にまでしなければならないか 』と『「潰す」とは?~実践編 』を参照してください。

(3)

さらに、「より多くの問題に触れ」たところで、短答本試験では、既存の知識の記憶(だけ)では解けず、現場思考で解かざるを得ない初見問題が、やはり半分くらいは出題されるはずです。

①毎年、文献に載っていない知識も出題されていますし、②事案分析力・国語力・論理力を問う問題も結構出題されていますよね。

これらの問題の対策はどうすればいいのでしょうか?

…「より多くの問題」としては、自分の受ける本試験の短答過去問以外ということになるので、予備校問題とか、他の試験の短答過去問とかが思いつきますが、いずれも、自分の受ける短答本試験に合格するための対策としては、自分の受ける短答本試験の短答過去問と比べると、足元にも及びません。

確かに、その問題で問われている“知識”という表層だけを見ると、変わらないように見える人もいるかもしれません。

しかし、少なくとも司法試験系では、短答本試験でも、“知識”の有無だけが問われているわけではないのです。このことは、上記①②のような問題が結構出題されていることからも分かりますし、一見単発的に“知識”だけが問われているように見える問題でも、私のような常軌を逸した過去問愛をもって分析すると、上記②の力や“常識”感覚、その知識が属する法分野の本質といったところから解けるようになっていることが見えてきたりします。

私も含めて、予備校がそのレベルまで達する問題を作ることは至難の業です(今年の予備短答模試を作るときにも、かなり苦労しました)。

また、他の試験では、司法試験系とは異なる能力・感覚が問われている可能性が高いです(他の試験までしっかり分析する暇はないので、断言はできませんが…)。

というわけで、初見問題を解くための能力・感覚を鍛える対策としては、自分の受ける本試験の短答過去問を解くことしか意味がない!と言っても過言ではありません。

(4)

それでも、上記(3)①②以外の初見問題をできる限り減らすために、知識を増やすという戦略は考えられます。

しかし、「より多くの問題に触れ」たりインプットしたりして知識を増やせば増やすほど、それまでに持っていた知識も含め、全ての知識の精度が反比例して落ちることに危機感を持つべきです。

知識の精度は、記事『なぜ「完璧」にまでしなければならないか 』の、特に2の観点から重要です。


2.
そして、「最後は、過去問を解きまくり、平成20年から25年までは、9割取れるほどになりました。答えを覚えているにも近い状態にまでなりました。時間も2/3ほどで出来ました。
しかし、本試験前の模試では6割ほどしか取れず、本試験でも出来たつもりでしたが6割には届きませんでした。一つ一つの問題を突き詰めていないから、そうなるのだただ単にたくさん解いても意味がない!、と合格者からは指摘されました。」という質問・相談もいただきました(記事『
4A実践答練<短答対策 』のコメント№19)。


(1)

上記1からすると、まず、本試験までに、平成20~25年以外のも含め、全短答過去問の「完璧」度がどこまで達したのかが気になります。正答率10割と9割では雲泥の差です(cf.記事『なぜ「完璧」にまでしなければならないか )し、1問単位で正答率100%にしても、まだまだその先があったりします(cf.記事『「潰す」とは?~実践編 』…その先に進む途中で受かる受験生が大半ですが)。


(2)

また、「答えを覚えているにも近い状態にまでなりました」という部分からすると、上記1(3)で書いた、短答本試験の初見問題を解くための能力・感覚を鍛える訓練ができていたのか、気になります。

確かに、この能力・感覚を鍛えるには、短答過去問をくり返しくり返しくり返し「解く」ことが必要です(cf.記事『なぜ「完璧」にまでしなければならないか 』の6)

しかし、くり返し「解く」うちに正解を覚えてしまう、記憶力の優れた受験生もいるでしょう。

それでも、覚えた正解を忘れた・知らないフリして、短答本試験現場と同様に「解く」プロセスを踏まないと、上記能力・感覚が鍛えられません。

知識が多いことや記憶力があることは、必ずしも良いことではないのです。


(3)

「本試験でも出来たつもり」というのも気になります。なぜ「出来たつもり」になったのかが分かれば、自分では気付いていない敗因(=点数の伸びしろ)が発見できそうです。


(4)

上記(1)(2)どちらが敗因だったのか(あるいはいずれも敗因だったのか)を分析する手法として、記事『予備試験H26短答式試験 合格発表 』の②があります。

上記(3)については、同記事の①“短答再現”をすれば解明できそうですが、もうだいぶ時間が経って完全に忘れてしまったならば、今からでも、本試験とできる限り近い条件で今年の短答本試験問題を解いた上で“短答再現”をするのが次善の策です。

「一つ一つの問題を突き詰めていないから」なのかどうかは、上記のような敗因分析をしなければ分かりません…私も含め、合格者のアドバイスを鵜呑みにしてはいけませんよ(cf.記事『合格者等によるアドバイスの信用性 』)。