8月17日、18日
この日最高体温39.2度を記録。
アパホテルへの迎えのタクシーに乗り、無事に到着。
感染対策で非常階段を3階まで登り、その後エレベーターで5階へ。
息が切れて階段の途中でうずくまってしまった。
何なんだこれは?
昔やった気胸のようだ。
死に物狂いで3階へ行きエレベーターに乗る。
転がり込むように部屋になだれ込み、ベッドへ倒れる。そのまんま2時間ほどほぼ臥床して過ごす。
部屋にはパルスオキシメーターと体温計が置いてあり、自由に測れる。
この時の体温はおおむね38℃後半。カロナール500で何とかしのぐ状態。
血中酸素濃度は90%ちょい。息がすぐに上がり咳、たんが出始めてきた。
一日中エンドレスでテレビに流れる広告を見て過ごす。チャンネルを変える気力はない。
何十回も見ているうちに展開やせりふをかなり覚えてしまった。
2時間程度寝られたが倦怠感半端ない。発熱はカロナールが効き37℃台にまで下がる。
午後、別室でオンライン受診。ZOOMを操作するが、指が震えてうまくタッチパネルを操作できない。指が明後日の方向に行ってしまい、パスワードが入力できないのだ。
完全装備のスタッフが来て代わりにパスを入れてくれた。
医師がまず酸素濃度を測ってみてくださいというのでパルスオキシメーターを指に挟んでそれを見せる。
「うまく挟まってませんね。もう一度別の指でやってみてください」。
しかし何度やってもspO2は88%。それを見た医師が即断し、入院決定。
かなり重い肺炎を起こしている可能性が大きいとのことで緊急入院へと相成るわけだ。
受け入れ先はすぐに見つかったようで、15:00病院に緊急搬送。
救急車に乗せられたが、乗ったものの受け入れ先が一転拒否し、ニュースでよく報道されている「救急車で10時間待機」なんかになるのだろうか?と不安がぬぐえなくなる。
不安は杞憂に終わり無事入院。
その後の記憶は薄いが、ある程度はある。
まず病室に運ばれた後、間髪入れずにCTを撮ることに。
エレベーターには警備員が付いている。ところどころに事件現場で見る黄色いテープが張り巡らされている。非常に物々しい雰囲気だ。
逃亡防止とかなんだろうな。ちなみに無断で病院から逃亡したら50万以下の罰金らしい。
以前無断で出た患者の話があったが、あの人は何十万請求されたのだろうか?
記憶が薄いなか、医者がCTの結果を見せてくれた。肺がほぼ真っ白。笑える、潔さに。
それに合わせるように、咳、たんが猛烈に出る。ベッド上でのたうち回る。
鼻腔カニューレでの人工呼吸になる。6リットル行きますというスタッフの声を覚えている。
その日は電池が切れたように眠った。というか、気絶する感じかも。意識の混濁を感じる。死が近いのか?
深夜気が付くと体中、周り、ベッド、汗でびっしょりだった。ナースを呼びアイスノンと着替えを持ってきてもらう。もうボロボロだ。みじめである。
翌朝、職場から電話がある。酸素が送り込まれる音でうるさいだろうと思いつつ状況を報告。
その後、血液検査の結果を主治医が報告に来てくださる。それによると肝臓の数値があまりにも悪い。コロナの患者には時々見られる症状の一つだが、ALT,、ALP、AST、LDH、γーGPTがひどすぎる。肝炎を起こすなどで肝臓が傷つけられている可能性があります、とのこと。
免疫が暴走して臓器を傷つける「サイトカインストーム」だそうだ。
肝臓の値がこんなに悪くなることはなかった。
γーGPT=347って?
そしてとてもショックなことに、肝臓がこんなに痛めつけられている状態で肺炎の特効薬レムデシビルは使えないとのことだった。
同様にリウマチに使う何とかという薬も無理とのこと。
よって吸入ステロイドで地道にやりますと言われた。地道にやって治るのか?
それとも特効薬が無理なので運を天に任せるという意味なのか??
咳がひどくなる。痰もだ。まともに話せなくなった。咳の連発で頭痛がひどい。
咳止めの点滴が加わり、痰を抑える薬も処方。
今日で感染からちょうど一週間。体内ウイルスの感染能力がピークだという。
食事はとれないので点滴がさらに加わる。
MAX三本の管が刺さっている。トイレには自分でゆくことができるが、歩くと息が上がり咳、痰がひどくなる。
芭蕉の病中句「旅に病んで夢は枯野を駆けめぐる」を思い出す。
辞世の句といわれているがそうではない。芭蕉はまた回復して旅を続ける気満々だったそうだから。