自国選手に有利に採点する審判 | ロンドンつれづれ

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BuzzFeedNews が、2月8日に「トップレベルのフィギュアスケートの競技会の審判でも自国の選手に有利な採点をしがち」というタイトルの記事を書いた。(BuzzFeedNews, 8 Feb., 2018) 

 

なんでも、バズフィードが独自に調べたもので、2016-17年の競技会の採点をチェックし、データを分析したというのである。 2016年、ISUはジャッジのリストを発表するようになり、どのジャッジがどんな採点をしているのかが公表されるようになった。

 

以下が記事の要約。

 

バズフィードは2016年から2017年12月にかけての競技会の審査について、統計学者に頼んでその傾向を調べてもらった、というのである。 その結果、平昌の冬季オリンピックに参加する48人のジャッジのうち16人は常に自国選手に有利な採点をするという驚くべきパターンを示したという。 これが偶然に起きる可能性は10万分の一だそうだ。 

 

16人の中にはロシアからの3人、中国からの3人、アメリカとカナダからそれぞれ2人ずついるという。 1600件以上の演技で、彼らは自国のスケーターに平均して3.4ポイント有利な点を付けており、中国のジャッジは中国人スケーターに対して平均して4.6ポイント有利な点をつけていたという。

 

主に、フィギュアスケート大国と呼ばれる国々で、これらの審判の採点次第で、最終ランキングを左右するほどの有利な採点を行っているというのである。

 

ISUは審査にバイアスがかかったり、ミスの存在を見つけるためのアルゴリズムを持っているというが、アルゴリズムは極端なミスしか把握できない上に、一度に一つの演技しか見ていないので、経年的なパターンを追うことはできない。 なので、ある特定のジャッジが何年にもわたり、自国の選手に有利な採点を続けていてもそれを把握することはできないため、十分な効果を上げることができないとISU内部関係者からも指摘がでている、というのである。

 

フィギュア関係者の内部でも、「自国びいき」の審判は知られており、オランダのスケート連盟からはISUに対してもっと公正な審判システムにするための対策の要求が出されているという。オランダの関係者は、「フィギュアスケートの審判システムがもっと信頼されるためにも対策は必要です」と話す。

 

競技会にはそれぞれの国が自国のジャッジを選ぶから、必然的に自国スケーターに有利な採点をするジャッジを選んで送ってくる。だから、改善しないのだと。 ISUはバスフィードのインタビューにはっきりは答えなかったし、以下のリストに上がっているジャッジをこれまで制裁したことはない。

 

以下は、平昌オリンピックのジャッジの中の16人である。

 

 

 

バズフィードは10年以上も審査員を匿名にしていたISUが方針を変えた2016年から昨年12月までの主だった試合のデータを集めて、分析したのだ。 その詳しい分析データはこちらで。 バズフィードでは、カナダ、ロシア、アメリカ、中国のそれぞれのスケ連にこれらのジャッジの名前を言って連絡を取ろうとしたが、返事のあったのはカナダだけで、「我々のジャッジは正当な資格を持ち、正当に選ばれた人ばかりです」という返事があったばかりだという。イタリアのジャッジは、実に自国のスケーターに7.5点も有利に採点しているが、彼の返事は「我々は人間ですから。機械じゃない」というものだったという。ははは、さすがイタリアン。

 

ちなみに、このリストには二人のアメリカ人審判が入っているが、バズフィードはアメリカのオンラインニュースである。

 

バズフィードでは、「我々の分析では、1度や二度、自国のスケーターに高い点数を付けたジャッジはこのリストの中には入っていない」、という。名前の上げられた審判の自国びいきは、パターン化しているというのである。 要するに、試合のたびに自国の選手に有利な採点をしている、ということだろう。

 

良かった、日本人ジャッジはこの16人には入っていないな、と思うと、国別の「ひいき採点」の度合いの部分で、日本が登場。 そうか、日本も自国びいきをやっているのか。 ポイントは中国、ロシア、アメリカやカナダに比べて低いけれども。

 

 

 

確かにプロトコルを詳しく見ていると、ある特定のジャッジが一人の選手の演技の中でも他の審判団から大きくかけ離れて得点を付けている場合、それが自国の選手を有利にする採点だったり、あるいは他国の選手を落とすための採点だったりするのでは、と疑いたくなる場合が散見する。

 

ところで、バズフィードの調べ方だと、自国出身のスケーターはめったに競技会に出ないけれども、ある特定の国のスケーターを選んで、他の審判団と比べて著しく低い採点をするジャッジはリストアップすることはできないだろう。 たとえば南アメリカ出身のジャッジなどである。 彼らは「自国びいき」はできないが「他国いじめ」はすることができる。あるいは他国から頼まれて、その国の選手に「ひいき点」を与えることもできる。

 

そして、ファンサイトなどではそういうジャッジはうわさになっていて評判が悪いのである。 ファンは長年にわたってプロトコルを詳細に見ていて、おかしい採点があると「だれ、こいつ?」とジャッジを調べてみるので、「この人、いつも自国の選手にばかり高い点をつける」とか、「いつも〇〇選手のGOEやPCSを低くつける」とか、不満に思ってみていることが多いのだ。

 

 

ファンもひいきの選手かわいさのあまりに、感情的になって採点に不満をもつこともあるが、第三者がこうやって無機質的にデータを集めて分析して、「偶然とはいえない」という確率で常に自国選手に有利な採点をするジャッジが48人のうち16人も混ざっていると見つけたことは、驚くべき事実、ゆゆしいことなのである。 平昌のオリンピックでも、きっとこの連中は同じことをするであろう。

 

そしてバズフィードでは書かれていないが、ジャッジより誰より、実はテクニカルスペシャリストが一番採点を左右できるということも覚えておいた方が良い・・・。エレメンツのテクニカルな審判をしているのは、テクニカルパネルの3人である。その中でも、スペシャリストがレベル判定やエッジエラー、アンダーロテーションなどをジャッジしているのである。ひとりで。ここでなされた判定を元にGOEや減点が決まるのである・・・。

 

このポジションの人が「自国びいき」でフェアな仕事をしない人である限り、自国選手のエッジエラーを見逃したり、他国選手のアンダーロテーションをやたらにとったりする、ということになる。一応、テクニカルコントローラーというのがいて、異議を唱えることができるが、そうするとテクニカルアシスタントと3人での協議となる。しかしスペシャリストが言い張れば、だいたいその意見が通る、ということが多いようである。

 

バズフィードではさらに、「悪質なケースでは、コーチなどがロビー活動をして、審判に影響を与えることもないわけではない。実は特定の選手のスコアが競技前から決まっているというようなことも・・・と内部関係者が明かした」というのである。 あるいは「審査員の5,6人が話し合って、だいたいどのぐらいの点数を付けるか決めてある場合もある」と。

 

バズフィードでは200名以上の審判をチェックし、そのうちの27人はあきらかに自国びいきのパターンを持っており、これが偶然である可能性は統計的に見て10万分の一だというのである。  この27名は何十年ものベテランから、ジャッジになって数年の者もおり、その中の16名が平昌での審判団に加わっている(上のリスト)、と。

 

かつて審判でISUテクニカル委員会の長だった人は、「審判を匿名性にしたのは、ISUのおかした一番大きな間違いだった」と話した。「多くの審判は、自分の採点はオープンにして責任を持ちたいと思っている。やましいところは何もないから」と言ったという。

 

審判の多くはボランティアで行われており、自分たちの採点について熱狂的ファンからアレコレ指摘されたり非難されたりすることも多い。 今回問題になった、「自国びいきのパターン」を明確に持つジャッジも、200人中27人だ。 ということは、大方の審判は誠実にこのスポーツのために尽くしている人々なのである。 ISUとしても、厳しい罰則を作って実施したりしたくないのにちがいない。

 

 

短距離走や棒高跳びのように、勝敗がはっきりしているゲームと違って、フィギュアスケートや体操競技は、グレイゾーンが多いため、審査や採点に納得がいかなかったり、なんだか胡散臭い試合展開の時があるような気がする。 

 

しかし、「気がする」だけでなく、数字を分析しても、「自国びいき」のはっきりしたパターンのあるジャッジが、48名のうちの三分の一も仕事をすることになるという平昌。 なぜそんなに高い確率で、そういう傾向のあるジャッジをオリンピックに送り込んだのかしらん。

 

なんだかなあ。

 

しかし、上のリストの16名にも個人的にメールやツイッターなどで問い合わせた、ということだから、平昌では用心して、あまり目立つような「自国びいき」の採点はできなくなるかしら。 そうだといいんだけれども。

 

 

それにしても、巨大放送局が、自国のゴールデンアワーに放映できるようにフィギュアスケートの競技時間を朝10時などというとんでもない時間帯にするようごり押しした結果、それらの国のスケーターさんたちが実力を出し切れなかったのが昨日のチーム・イベントである。(Yahoo news) 選手にとっては迷惑な話でしかない。

 

あれだけ転倒してしまえば、巨大スポンサーがついていようと放送局が圧力をかけようと、訳あり審査員を送り込もうと、どうにもできない。 

 

可愛そうなのはスケーターさんたちである。 大人がまわりでいろんな工作をするよりも、それぞれの選手が各自、自分の持てるベストを出し切れるように配慮する方が、スポーツとしてフィギュアスケートが今後ますます発展するために一番大切じゃないか、と思うのだが・・・。

 

きっとスケーターさんたち自身は、みんな「自分の実力で、自分のベストの演技で正当に採点してもらって、結果を勝ち取りたい!」と思っているに違いない。 だって、そのぐらい彼らは真摯に、真剣に練習を積み重ね、競技に立ち向かっているのだから・・・。

 

 

資料:BuzzFeedNews, 

https://www.buzzfeed.com/johntemplon/the-edge?utm_term=.nnW0Mq02a#.gsZrvyrEP

 

 

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