【42】「倭寇」はもちろん「元寇」は侮蔑的な意味で使用されていたわけではない。
「今日の日本の教科書では『元寇』という言葉は相手国に対する侮蔑的な意味を含むため使用しない傾向にある。」(P122)
「それなら我が国を貶める『倭寇』という言葉の使用もおかしいということになるが、後者は今も普通に使われている。」(同上)
「元寇」という言葉を改めたのは、「当時の」言葉ではないからです。
百田氏も説明されていたように江戸時代に使用された言葉ですから、当時の表現にしようということで「蒙古襲来」という言葉に改められました。
「当時の用語を『江戸時代』の感覚で言い換えたり、使用禁止にしたりするのは間違い」なので「元寇」は使用しなくなりました。
「倭寇」という言葉を改めないのは、「当時の」言葉だからです。
ちなみに「倭寇」という言葉が侮蔑的だ、と言われるようになったのは、20世紀に入ってから。(朝鮮出兵や日中戦争の日本の攻撃を倭寇と揶揄している。)
「歴史用語を現代の感覚で言い換えたり、使用禁止にしたりするのは間違いだと考えている。」(P122)
まったくおっしゃる通りで、現在侮蔑的に使う、あるいはそう思い込んでいる人がいるからといって歴史用語を言い換えてはいけません。
ちなみに「倭」も、侮蔑的意味はありません。「矮」と同じように考えている方もおられますが最古の部首別漢字辞典「説文解字」をみればわかりますが漢の時代からそんな意味は記されていません。
「『倭』という文字には『小さい』『従順な』という意味があるが、決していい意味ではない。」(P17~P18)
と説明され、「やがて漢字を習得すると」いい意味でないことがわかってきたから「和」に改めた、と述べられています(P18)が誤解の上にどんどん次の話を重ねられているようです。
ちなみに魏の使者に「わたし」「わし」という意味で「わ」と言った言葉が「倭人」になった(P18)というのは間違いです。そもそも「倭人」は魏志倭人伝が初出では無く、漢書にも出てくる言葉ですから。
さて、例によって「細かいことが気になるぼくの悪いクセ」なのですが…
「ポルトガル人が台湾を発見し…」(P122)
台湾はポルトガル人が「発見」した島ではないので念のため。
ヨーロッパ人のうち、最初に台湾に来航したのがポルトガル人です。その後、オランダ・スペインが入植しました。
ちなみに、日本史の側では、豊臣秀吉の海賊禁止令によって倭寇が消えた、と説明してしまいますが、ちょっと誤解があるので、以前に説明した話を以下に添付しておきますので、よければお読みください。
https://ameblo.jp/kohaniwa/entry-11930579114.html