『日本国紀』読書ノート(33) | こはにわ歴史堂のブログ

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33】「元寇」は侮蔑的な意味で使われなくなったのではない。

 

「最近、歴史教科書では、『元寇』や『蒙古襲来』という呼称は、モンゴルや中国に対する侮蔑的な言葉であるから使わないという流れになっているという。」(P104)

 

これは誤解されています。

 

どうやら、「隣国への配慮」ということから歴史用語に「配慮」が行われている、と思われているのかもしれません。

1970年代の教科書問題などに憤りを感じられていることからくる誤解でしょうか…

 

現在の教科書は、「当時の表現」にできるだけ準じよう、という姿勢で描かれています。

「元寇」が使用されなくなったのは、この言葉が「江戸時代」に用いられるようになったもので、当時の言葉ではないからです。

当時は「蒙古襲来」と言われていたので、「元寇」ではなく「蒙古襲来」というように表現が改められました。

「蒙古」という言葉ですが、モンゴル側の漢語表現では、「大」をつけて「大蒙古」というように記述されているようですが、日本側の記録に残されている「事件」としては「蒙古襲来」なので、これを使用して教科書は説明されています。

 

ちなみに、70年代に、「任那日本府」という記述をめぐって韓国から抗議がきたことがありました。しかし、現在では、『日本書紀』にもみられる言葉ですから、教科書には「任那」という言葉もちゃんと紹介されています。

 

現在では、「一次史料」を重視した教科書作りがされています。

一次史料に基づかない、特定の主観的な考え方を歴史記述にはできるだけ反映しない…

これは歴史著述の基本的姿勢です。

 

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