『日本国紀』読書ノート(14) | こはにわ歴史堂のブログ

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14】仁徳天皇に関するエピソードについての疑問

 

「『古事記』は古い中国語を基本に日本独特の文法を混ぜた変体漢文で書かれ、『日本書紀』は純然たる漢文で書かれている。」

「『古事記』が自国民に向けて書かれたものであるのに対し、『日本書紀』は対外的(対中国)に書かれたものと見られている。」(P51)

 

と説明されています。

たしかにP54に述べられているように、「当時の為政者に大衆の人気取りをする必要はない」のは確かですが、筆者が指摘されているように、対外的(対中国)に書かれたとするのならば(もしそうだとしたならば、の話ですが)「創作する理由はない」とは言えないのではないでしょうか。

 

中国は為政者の「徳治」を理想としています。

中国の政治思想の根幹は、「法家思想」と「儒家思想」。

中国に対するアピールとしては「仁」と「徳」、まさに「仁徳天皇」のエピソードは最適、ということになりそうです。

中国に負けない律令国家を示すことができる「史実」は必要です。

それにまた、『日本書紀』は「誰が」読むのか、ということを考えたときに、「覇道の政治」ではなく「王道の政治」を説く、後の為政者への教訓、という意味もこめられていたかもしれません。

 

実は、私は『日本書紀』は、体制側でつくられた歴史書であるにもかかわらず、諸説をまとめていたり、「一書によると」という注を設けて両論併記したりしていて、一定の客観的な事実や伝聞、史実をまとめようとしている努力を感じています。

ほぼ『旧辞』・『帝紀』をまとめた『古事記』に比べて引用・参考が多い書です。

仁徳天皇の逸話も武烈天皇の逸話も併記できているところなどにそのことは現れているのではないでしょうか。

この二例に限らず、支配者には都合の悪そうな(隠したくなるような)エピソードもたくさん取り入れられています。

皇室などに伝わっている「祖先の話」、その他の言い伝え、なども、歴史書なんだから、と、ありのままに伝えようとする編集者の姿勢を感じさせます。

 

編集総裁は、教養があり、人望の厚かった「天平のインテリ」舎人親王。

賛否両論あるところですが、『日本書紀』は、史料的に検証されて史実とは違うと指摘が受けている箇所もありますが、史実に沿った説明も一定以上含まれている、とも私は思っています。

 

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