ご飯まだーーの圧がすごいです


ご飯の時間が近づいてくると、

こゆきの様子が明らかに変わります。


普段はのんびりしているのに、

なぜかこのタイミングだけは別犬。


キッチンで少し動いただけで、

「それ、ご飯じゃない?」と気配を察知。


そして、準備を始めた瞬間――


立ちます。


ケージに手をかけて、

ぐいっと背伸び。


完全に「ご飯まだーー?」の姿勢です。


あのキラキラした目で見られると、

つい急ぎたくなってしまうんですが、

そこはぐっと我慢。


落ち着かないとご飯は出てこない、というのを

少しずつ覚えてもらわないといけません。


それでもやっぱり、

ソワソワは止まらない様子。


体はピンと伸びているのに、

しっぽや気配はバタバタしている感じ。


「もうすぐだよ」と声をかけつつ、

こちらもつい笑ってしまいます。


こういう時間も含めて、

犬との暮らしって楽しいなと思いますね。


今日もまた、

ご飯を待つこゆきの圧を受けながら、

せっせと準備を進めています。


喰霧のザル=ディーンとの戦いを終えた、その夜。

山を越えた先の小さな草地で、
ヒマワリ、ソラ、コユキ、チョコの四人は
ようやくひと息ついていた。

焚き火は静かに燃えている。

星は高く、
川の音は細く、
空気はひどく澄んでいて、
ついさっきまで霧の牙と戦っていたとは思えないほど、
夜は穏やかだった。

鍋の中身もきれいに空になり、
湯気の名残だけが夜に消えていく。

ヒマワリは両手を後ろにつき、
満足そうに空を見上げた。

「いやあ、いい夜だねえ」

コユキは少し離れた石にもたれ、
いつものように上品な姿勢で座っている。

「戦いの直後でなければ、
もっと素直にそう思えたのですけれど」

「でも、チョコのスープおいしかったよね」

「それは認めますわ」

チョコは何も言わず、
使った器を川の水で軽く流していた。

ソラは焚き火の向こうで膝を立てて座り、
黙って炎を見ている。

肩口にはまだザル=ディーンに裂かれた傷が残っていたが、
包帯はきちんと巻かれていた。
それでも彼女の目は、
もう休息ではなく次のことを考えている目だった。

ヒマワリはそれを見て、
なんとなく嫌な予感がした。

昔からそうだ。

ソラが静かすぎる時は、
たいてい何かよからぬことを考えている。

ヒマワリはじっと様子をうかがう。

ソラは焚き火を見ている。
何も言わない。
だが、目線の先は火ではなく、
その向こうの闇のようにも見えた。

さらに数秒後。

ソラがすっと立ち上がった。

「じゃあ、見張りのついでに周囲を少し見てくる」

やっぱり言った。

ヒマワリとチョコが、
ほとんど同時に顔を上げた。

「だめ」
「やめろ」

見事なくらい重なった。

ソラは一瞬だけ目を瞬かせたあと、
少し不満そうに言う。

「なぜだ」

ヒマワリが即答する。

「なぜって、なぜでもだよ!」

「答えになってない」

「なってるよ!
すごくなってるよ!
ソラが“少し見てくる”って言うときは、
だいたい少しじゃ済まないんだよ!」

ソラは眉ひとつ動かさない。

「今回は見張りだ」

「“ついでに”って言ったじゃん!」

「見張りのついでに周囲を確認するだけだ」

「その“だけ”が危ないの!」

コユキはそのやりとりを聞きながら、
静かにため息をついた。

「毎回この調子ですの?」

チョコが短く答える。

「毎回だ」

「大変ですわね」

「慣れた」

その会話が妙に自然で、
ヒマワリはちょっとだけ笑いそうになる。
だが今は笑っている場合ではない。

ソラは本気で行く気だ。

ヒマワリは立ち上がり、
焚き火を回り込んでソラの前に立つ。

「だめったらだめ。
今日は特にだめ」

「なぜ」

「怪我してるし!」

「動ける」

「そういう問題じゃないよ」

「なら何の問題だ」

ヒマワリは口を開いて、
いろいろ言いたいことがあったはずなのに、
結局いちばん正直なところが先に出た。

「……またいなくなったら困るから」

その一言に、
場がほんの少しだけ静かになった。

ソラは数秒だけ黙る。

ヒマワリは言ってから少しだけ照れくさくなる。
子どもみたいな言い方だったかもしれない。

けれど本音だった。

今日だって、
ザル=ディーンとの戦いで
ソラが前へ出た時、
ヒマワリはほんの一瞬だけ
ひやりとしたのだ。

強いのはわかっている。
誰よりも剣が冴えることも知っている。

でも、
知っているのと心配しないのは別だ。

ようやく四人そろった夜に、
いきなり誰かが闇へ消えるなんて、
あまりにも落ち着かない。

ソラはその言葉を聞いて、
視線をほんの少しだけ横へずらした。

「……いなくならない」

「なるんだって!」

「ならない」

「なるよ!」

「ならない」

いつもの押し問答が始まる。

コユキはこめかみに指を当てた。

「これ、どちらも折れませんわね」

チョコは腕を組んだまま、
静かにソラを見る。

「見張りなら交代でいい」

「私はまだ起きていられる」

「だからこそだ」

チョコの返しは短いが、
妙に説得力があった。

ソラは少しだけ目を細める。

「信用がないな」

「方向感覚に関してはない」
とチョコ。

ヒマワリがすぐにうなずく。

「うん、ない」

「ないですわね」
とコユキまで続いた。

ついに三対一だった。

ソラはそこで、
ようやく少しだけ不服そうな顔をした。

「ひどいな」

「ひどくないよ。
実績がありすぎるんだよ」

ヒマワリは腰に手を当てて言う。

「そもそも“見張りのついでに少し”って、
もうその言い回しが危ないんだからね」

「そうか?」

「そうだよ!」

ソラは少し考えたあと、
真面目な顔で言った。

「では、見張りに専念する」

ヒマワリはぱっと顔を明るくした。

「ほんと?」

「焚き火の周囲を半径三十歩まで」

「微妙に危ない!」

「十分近い」

「三十歩って意外と広いんだよ!」

コユキがくすりと笑う。

「今度は数字で広げてきましたわね」

チョコは小さく息をついた。

「五歩だ」

「狭すぎる」

「十歩」
とヒマワリ。

「八歩」
とチョコ。

「九歩ですわね」
とコユキ。

なぜか交渉が始まった。

ソラは真顔のまま、
三人を見渡す。

「私は囚人か」

「ちがうよ」
とヒマワリ。

「でも今夜だけは、
ちょっとそういう感じでいて」

ソラは返事をしない。

だがその口元は、
ほんの少しだけやわらいだようにも見えた。

結局、
ソラの“見張りのついで”は却下され、
見張りは交代制となった。

最初がチョコ。
次がソラ。
その次をヒマワリ。
最後をコユキ。

「わたくしも入るのですの?」
とコユキはやや不満そうだったが、
ヒマワリが「だって仲間だもん」と言うと、
それ以上は何も言わなかった。

そのまま少し時間が過ぎる。

焚き火は落ち着き、
星はさらに冴え、
夜の冷たさがじわじわと地面から上がってくる。

ヒマワリは毛布にくるまりながら、
まだ少しだけソラを気にしていた。

ソラは焚き火の近くに座り、
今度こそ大人しくしている。
しているのだが、
目だけはやはり外を見ている。

ヒマワリは小声で言う。

「ほんとに行かない?」

「行かない」

「ほんとにほんと?」

「行かない」

「チョコ、見ててね」

「見てる」
とチョコ。

「私、そこまで信用ないのか」

「あるよ」
とヒマワリ。

「剣の腕とか、
すごいところとか、
そういうのはものすごく信用してる」

「方向だけだな」
とチョコ。

「方向だけですわね」
とコユキ。

ソラはとうとう小さく息をついた。

「そこまで言われると、
さすがに傷つく」

それがあまりにも真面目な顔で言われたので、
ヒマワリは思わず笑ってしまった。

コユキも口元を隠す。
チョコですら、
ほんのわずかに目元がやわらいだ。

その笑い声は、
夜の草地にやさしく広がっていった。

不思議なものだと、
ヒマワリは思う。

ほんの少し前まで、
まだぎこちなかった四人なのに、
こうして焚き火を囲んでいると、
ずっと前から一緒だったような気さえしてくる。

ソラの危うさに呆れ、
チョコの静かさに頼り、
コユキの高貴さに笑い、
それでもみんながちゃんと同じ場所にいる。

それがうれしかった。

やがて、
最初の見張りを引き受けたチョコが立ち上がる。

ソラは一度だけ外を見たあと、
ようやく剣から手を離し、
焚き火のそばに腰を落ち着けた。

本当に、
今夜は行かないらしい。

ヒマワリはほっとして、
毛布に顔を半分うずめる。

「よかった……」

「そんなにか」
とソラ。

「そんなにだよ」

「……そうか」

短い返事。
でもそれは、
嫌そうではなかった。

むしろ、
少しだけあたたかかった。

星の下、
火のそばで、
四人の影がゆっくりと揺れる。

戦いの直後の夜だというのに、
この時間は不思議なくらいやさしい。

きっとこういう夜を重ねながら、
四人は本当の仲間になっていくのだろう。

迷う者もいて、
止める者もいて、
それを見て笑う者もいる。

完全ではなくても、
それでいい。

むしろ、
そういう不完全さがあるからこそ、
この一行はきっと強いのだ。

そしてその夜、
ソラ・アズリエルは本当に一度も野営地から離れなかった。

翌朝、
ヒマワリが目を覚ました瞬間に
「ちゃんといた……!」と妙に感動することになるのだが、
それはまた別のお話である。

 

 

 

 

 


犬がおもちゃをわざわざ別の場所に運ぶのは、
その場所を「安心できる場所」「落ち着いて遊べる場所」と感じているからかもしれません。

犬がおもちゃを運ぶ理由は主にこの3つです

・安心できる場所で遊びたい  
・落ち着いて噛みたい  
・自分のテリトリーに持ち込みたい  

こゆきの場合は、なぜか猫ベッド。
ロープを持って移動して、そこでガジガジするのが最近の定番になっています。

ロープはここで噛むものらしいです


最近のこゆきのマイブーム。

それはロープのおもちゃ。


ただし、普通にその場で遊ぶわけではありません。


なぜか必ず、

猫のベッドまで運びます。


くわえて、てくてく移動して、

わざわざそこに乗ってからガジガジ開始。


「そこじゃないとダメなの?」と聞きたくなるくらい、

毎回しっかり場所を選びます。


しかもそのベッド、

本来は猫たちのもの。


完全に占領されています。


猫たちはというと、

ちょっと遠くから様子を見ていたり、

「あーあ」という顔をしていたり。


でもこゆきは気にしません。


自分の世界に入って、

ひたすらロープを噛み続けます。


このロープも、

噛むと繊維がほぐれてきて、

いい感じにガジガジ欲を満たしてくれるみたいです。


ただ、

なんで猫ベッドなのかは本当に謎。


落ち着くのか、

それとも「ここはいい場所」と思っているのか。


犬と猫の生活スペースの境界線が、

じわじわと曖昧になってきています。


これもまた、

多頭(?)生活の面白いところ。


今日もまた、

猫ベッドの上でロープを噛むこゆき。


その光景を見ながら、

少しずつこの家のルールが変わっていくのを感じています。


犬がおもちゃを運ぶのは「安心できる場所で遊びたい」という行動でした。


喰霧のザル=ディーンとの戦いを終えた、その夜。

山を越えたあとの空気は、
不思議なくらい静かだった。

つい先ほどまで、
あの白い霧が道を覆い、
牙のないはずの空間そのものが
四人へ噛みついてきていたというのに、
いまはもう、
木々を渡る風の音だけが
やわらかく耳に残っている。

ヒマワリ、ソラ、コユキ、チョコ。

ようやく四人そろった一行は、
フォースカントリーの山々を抜けた先の小さな草地で、
その夜の野営をすることにした。

街でもなく、
村でもなく、
ただ少しだけ開けた場所。

近くには細い川が流れ、
半ば埋もれた古い石が
かつてここに街道が通っていた名残を伝えていた。

夜空を見上げれば、
星がやけに近い。

ヒマワリは薪を抱えて戻ってくると、
その場へどさりと置き、
満面の笑みで言った。

「なんか、やっと四人そろった感じがするね!」

ソラは枝を組みながら、
顔も上げずに答える。

「最初からそろっていた」

「またそれ言う!」

ヒマワリがすぐに食いつく。

「そろってなかったでしょ。
ソラ、普通に迷ってたでしょ」

「迷ってない」

「迷ってたよ!」

「私は敵を探っていた」

「その結果、逆方向に行ってたんだよ!」

「少し回っただけだ」

あまりにも堂々としていた。

コユキは少し離れた石に腰を下ろし、
そんな二人を見ながら思う。

……ずいぶん騒がしい方々ですこと。

塔の中で静かに暮らしていた頃には、
考えもしなかった夜だった。

陽光のようにまっすぐで、
すぐ表情に出る勇者。

空色をまといながら、
方向だけは驚くほど怪しい剣士。

寡黙で静かなのに、
なぜか一番苦労を背負っていそうな僧兵。

そしてその真ん中に、
今こうして自分がいる。

妙な縁だった。

だが、
不思議と嫌ではない。

むしろこうして並んでみると、
それぞれがまるで違う色を持っているのに、
なぜかきれいに噛み合っているようにも思えた。

チョコは川辺で水を汲み、
何も言わずに戻ってくると、
そのまま鍋を火にかけた。

干し肉。
山で摘んだ香草。
少しだけ残っていた根菜。

無駄のない手つきで
淡々と下ごしらえを進めていく。

ヒマワリが目を輝かせた。

「チョコ、料理できるんだ!」

「少しは」

「少しって感じじゃないよね?」

ソラが当然のように言う。

「チョコの飯はうまい」

「えっ、そうなの!?
もっと早く言ってよ!」

チョコは一瞬だけ手を止めたが、
すぐに何事もなかったように鍋をかき混ぜた。

「言うほどでもない」

コユキが少しだけ興味深そうに首を傾ける。

「寡黙なうえに料理までできるとは、
なかなか厄介な方ですわね」

「褒めてる?」
とヒマワリ。

「半分は」
とコユキ。

焚き火が安定し始めると、
ようやく四人の顔にも
戦いのあとのやわらかい疲れが見えてきた。

ザル=ディーンとの戦いは、
楽なものではなかった。

ソラは肩口を斬られた。
ヒマワリも盾を受け続けた腕に重さが残っている。
コユキは広域術式を使った反動で、
見た目以上に神経を削っていた。
チョコもまた平然として見えるだけで、
あの一撃一撃には大きな負荷があったはずだ。

それでも、
四人とも生きてここにいる。

その事実が、
焚き火のぬくもり以上に心をあたためていた。

ヒマワリは火の前に座り込み、
膝を抱えながら言った。

「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」

三人の視線がゆるく集まる。

「これから、どうしていくか」

勇者らしい問いだった。

大きな理想を語るようでいて、
その実、
ヒマワリ自身が確かめたかったのだろう。

四人になった今、
この先をどう歩くのか。
それぞれが何を見ているのか。

ソラは少しの間だけ黙っていたが、
やがて焚き火の向こうを見つめたまま口を開いた。

「私は、もう一本手に入れる」

短い。
だが、はっきりしていた。

ヒマワリがうなずく。

「うん」

ソラは腰の剣に手を置く。

「今の一本じゃ足りない。
斬ることはできる。
でも、それだけじゃ届かない相手がいた」

火が揺れる。

ソラの横顔は静かだった。
けれどその静けさの奥に、
これまでとは違う熱があることを、
ヒマワリはもう知っていた。

喰霧のザル=ディーンとの戦いで、
ソラは知ったのだ。

一度見れば理解できるだけでは足りない敵がいる。
速さだけでは届かない場面がある。
一本の剣では足りない場所がある。

「次は、もうひとつ要る。
ひとつは斬るために。
もうひとつは、崩すために」

天才が、
努力を覚えた。

それはたぶん、
誰よりも恐ろしいことだった。

コユキが静かに口を開く。

「わたくしも同じですわね」

ヒマワリが目を丸くする。

「コユキも?」

「当然ですわ。
塔の中では、
理を知ることだけで足りていました。
けれど旅の中では、
理を知るだけでは足りませんの」

コユキは指先を火にかざすようにしながら続けた。

「敵を縛る術。
流れを止める術。
仲間と噛み合わせる術。
もっと磨かなければなりませんわ」

白銀の魔法使いは、
ただ美しくて強いだけではない。

世界の理を読み、
それをさらに先へ進めようとする人だ。

ヒマワリはその言葉を聞きながら、
改めて思う。

この人も、
見た目よりずっと負けず嫌いなのだと。

チョコはしばらく何も言わなかった。

鍋の湯気がゆらりと立ち上がる。
その向こうで、
彼はいつものように静かな顔をしている。

やがて、
低い声で短く言った。

「見ていないと、生き残れない」

たったそれだけ。

けれどその一言には、
ソラともコユキとも違う重さがあった。

才能ではなく、
積み重ねてきた者の言葉。

一歩ずつ、
一発ずつ、
何度も自分を鍛え、
そうして拳王と呼ばれる場所まで来た男の言葉。

ヒマワリはその声を聞きながら、
自分の手を見つめた。

自分はどうするのか。

焦りはもう知っている。
自分の光の意味も、
少しずつわかってきた。

でも、
まだ終わりではない。

勇者として。
仲間の中心に立つ者として。
そして、
ソラのライバルとして。

まだまだ強くならなければならない。

ヒマワリは顔を上げた。

「私も、もっと強くなる」

ソラがすぐに言う。

「知ってる」

「まだ全部言ってないよ?」

「顔に出てる」

「むう……」

ヒマワリは少しだけ頬をふくらませる。
けれど、そのあとに浮かんだ笑みは明るかった。

「でも今度は、
誰かに追いつくためだけじゃない」

そこで一度、
三人を見た。

「みんなと一緒に進むために、
もっと強くなる」

その言葉に、
夜の空気が少しだけ変わった。

コユキが柔らかく笑う。

「ようやく勇者らしい発言ですわね」

ソラは小さく息をつく。

「前からそうだ」

チョコはほんのわずかに目を細めた。

「それでいい」

たったそれだけなのに、
ヒマワリには妙にうれしかった。

しばらくして、
スープができた。

チョコがそれぞれの器によそい、
黙って差し出す。

ヒマワリはひとくち飲んで、
すぐに顔を輝かせた。

「おいしい!」

ソラも当然のようにうなずく。

「うまい」

コユキは上品に口をつけたあと、
ほんの少しだけ目を見開く。

「……本当においしいですわね」

チョコは何も言わなかったが、
その沈黙はさっきまでより少しだけ穏やかだった。

火の赤。
星の白。
川の音。
そして、
四人分の呼吸。

戦いの中では見えなかったものが、
こういう夜にはちゃんと見える。

ヒマワリは空を見上げた。

「ねえ」

「なんだ」
とソラ。

「なんですの」
とコユキ。

チョコは無言のまま、
静かに視線を向ける。

ヒマワリは星を指さして言った。

「絶対、魔王を倒そうね」

あまりにもまっすぐな言葉だった。

大仰な宣言でも、
悲壮な覚悟でもない。

ただ、
本気の願い。

ソラが答える。

「ああ」

コユキが続く。

「ええ、もちろんですわ」

そしてチョコもまた、
低く言った。

「終わらせる」

それぞれの返事は短い。
けれどそのどれもが、
確かだった。

四つの歩幅はまだ揃いきっていない。

進む速さも、
戦い方も、
見ている景色も違う。

それでも今夜、
その四つはたしかに
同じ方向を向いた。

星降る夜の下で交わされたのは、
大げさな契約でも、
神々への誓いでもない。

ただ、
四人で進むと決めたこと。

ただ、
最後まで歩くと決めたこと。

それだけだった。

けれど世界を動かすのは、
案外いつだって、
そういう小さな決意なのかもしれない。

焚き火は静かに燃え続ける。

陽光の勇者。
空色の剣士。
白銀の魔法使い。
黒衣の僧兵。

四人の旅は、
ここから本当の意味で
ひとつの形を持ち始めるのだろう。

もっともその少しあと、
ソラが「見張りのついでに周囲を少し見てくる」と言い出し、
ヒマワリとチョコが同時に止めに入ることになるのだが。

それはまた、
別のお話である。

 

 

 

 


 

 

 


ケージのフタ、ついに完成しました


こゆきの脱走対策として進めていたケージのフタ作り。

ついに、ひとまず「これでいけるかな?」という形になりました。


もともとは、上に載せるだけの簡易的なフタを使っていたのですが、

奥側だけサイズの小さいものを使っていたんですよね。


するとどうなるか。


…見つけるんです、隙間を。


本当にびっくりするくらい、的確に。

「そこ、いけるでしょ?」という顔で攻めてきます。


特に奥側はおトイレの位置なので、

スペース的にも完全に塞ぐのが難しく、

結果として脱出ルートになりかけていました。


そこで今回、

ホームセンターで見つけた黒いプラダンを追加。


これで奥側の隙間をしっかりカバーしつつ、

トイレ側だけ少し暗くなるようにしてみました。


この「ちょっと暗い」というのも実は狙いで、

落ち着いて過ごせる空間にしたかったんですよね。


白いプラダンだけだと明るすぎて、

どうしてもソワソワしがちだったので、

黒を入れることで空間にメリハリも出ました。


見た目も意外と悪くない。


むしろ、

「ちゃんと考えて作ってる感」が出てちょっと満足しています。


これでしばらくは、

脱走との知恵比べも落ち着いてくれる…はず。


いや、たぶん。

でも、こゆきなので油断は禁物です。


また新しい攻略法を編み出してくる可能性もあるので、

引き続き様子を見ながらアップデートしていこうと思います。


こうやって少しずつ環境を整えていくのも、

犬との暮らしの醍醐味ですね。