昭和ボクシングその11~これぞ大場ボクシング | ジジイが来たりて愚痴を吹く

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人生還暦を超えていよいよロスタイムに入りました。
いろいろ過去をふりかえりながら未来を描きたい
#MIOつくし #FC草津26期生

1972年6月20日 日大講堂
WBA世界フライ級タイトルマッチ15回戦
同級王者 大場 政夫(帝拳)
 KO5R
同級1位 オーランドアモレス(パナマ)

3月4日に花形進(横浜協栄)を判定で降し、
3度目の防衛に成功するとともに新人時代の
借りを返した大場は4回目の防衛戦に最強の
挑戦者と名高い「黒い戦慄」アモレスとの
指名試合に臨む。
「やっぱり弱気になっちゃ駄目だ」と前月の
柴田敗戦を引き合いに出し大場はKO宣言。
対するアモレスも「必ず眠らせる」とこちらも
自信満々。
当時のパナマにおいてボクシングは
国の威信を背負った究極のスポーツであり
タイトル奪取はお上の至上命令ともいえた。

アモレスは私が今まで経験したことない
(もちろん目撃としてですよ)長いリーチを
ブンブン振り回すパンチで初回にいきなり
大場のアゴをかすめる。距離感がつかめて
いなかった大場は吹っ飛ぶようにダウン。
本田会長の血の気が引く。場内に悲鳴が走る!
第1ラウンドを終えセコンドの指示は
「距離を取って打ち合うな」
しかし早くも第2ラウンドアモレスの左右を
かいくぐった大場は見事なワンツーで
お返しのダウンを奪う。場内大興奮!
うつろな表情で大場を見上げるアモレス。
本田会長に血の気が戻る。

試合後クレッシュマネージャーは「ダウンさせたすぐ後で
奪い返されるとは思わなかった。大場は精神的にタフな
偉大なチャンピオンだ」との感想を述べている。


スピードが早くもなくなったアモレスは
接近戦に活路を見出そうとするが
頭をぶつけるラフなボクシングで大場は
流血。打撃戦が壮絶なものとなっていく。
心臓病をおしてロスからかけつけた
カットマンのビリャフロールが
「大丈夫、責任をもって私が血を止める」
第3ラウンド、アモレスはバッティングで
減点となり大場の白いトランクスは赤く
染まっていく。
第4ラウンドを終えセコンドの指示は
「決して打ち合うな」
いよいよ第5ラウンド、大場のワンツーが
ヒットしロープ際にアモレスは後退。その後
凄まじい連打でアモレスをダウンさせる。
本多アナお得意の「おそらく立てないだろう」
しかしアモレスはカウント9.5で立ち上がる。
ところがレフェリーはジョー樋口ではなく
「日本人を勝たせたい」吉田レフェリー。
さっと両手をクロスし大場のKO勝ちを示す。

このシーンは「ボクシングマガジン」の表紙に。
確かこの号からプロレスとボクシングは別々に刊行。
それにしてもちょっとはセコンドの指示に従えよ大場(笑)


3度の防衛で両親に家をプレゼントした大場は
親孝行はこれで果たした。これからは
自分のために稼ぐ、と発言。
こういう言は昭和ならではのメッセージ。
ワタシ的には挑戦者の技量からいって
この試合が大場のベストバウトだと思う。