昭和ボクシングその12~タイの稲妻小僧 | ジジイが来たりて愚痴を吹く

ジジイが来たりて愚痴を吹く

人生還暦を超えていよいよロスタイムに入りました。
いろいろ過去をふりかえりながら未来を描きたい
#MIOつくし #FC草津26期生

1973年1月2日 日大講堂
WBA世界フライ級タイトルマッチ15回戦
同級王者 大場 政夫(帝拳)
 KO12R
同級2位 チャチャイチオノイ(タイ)

ボクシングマガジン12月号に大場と輪島功一
両世界チャンピオンの対談があった。
「大場さんのクルマ凄いねえ」
「うん、ポンティアックファイヤーバード」
「さすがリングの王子とリングの土方は違う」
ともに正月に防衛戦を控えている中
タイトルを守るべく決意を語る両王者。

普通のスポーツ選手の表情でポーズをとる大場と
客受けする変顔でおどける輪島。
スタンスの違いが面白い


このあたりからWBAWBCともに王者は
自動的にランキングを1位としており、
3度目の王座返り咲きを狙うチャチャイは
実質上1位。しかしタイの英雄もすでに
30歳。アモレスとの激闘を癒す意味でも
大場陣営にとってこの対戦は最適解であった。
(はずだった)

本多アナ「白いパンタロン姿で颯爽とリング
に登場!大場政夫」カッコイイー!
ゴングが鳴ってふと目線を下にずらす
チャチャイ。思わずおいかける大場に
チャチャイの降り下ろすスイングが炸裂。
小林さん「効いてますね」
白井さん「油断しちゃいかんですね」
その数秒後、またしてもチャチャイの
スイングが大場のテンプルを捉える。
本多アナ「あー!」
もんどりうってダウンする大場。
この時大場は足をくじき捻挫状態。

チャチャイ曰く「このスイングは秘密兵器で生涯のベストパンチ。
王者返り咲きだと思った。しかしオオバは立ち上がってきたので
驚いた」、と。


なんとかチャチャイの猛攻をしのいだ大場は
コーナーに戻ると「頭は効いていない、が
足がいう事をきかない」と伝える。
桑田チーフトレーナーは「お湯持ってこい!」
とアシスタントに指示。
なんと会場外のおでん屋から調達し、
そのおかげで痛みが若干和らいだ模様。
中盤以降フットワークが本来のものに戻る。
一進一退が続き8ラウンドは大場が
チャチャイをコーナーに釘付ける場面もあり
ようやく明確にポイントを取る。
そして12ラウンド
本多アナ「死闘を演じます両選手」
気力だけでパンチを繰り出す両雄。
大場の軽く出した右がタイミングよく収まり
ロープ際によろめくチャチャイ。
大場の猛攻が始まり立て続けに3度のダウン
を奪う。最後は3分ちょうど。
大場の足首は倍以上に腫れていた。
祝勝会のある帝拳ジムでは自力で車を降りる
ことが出来なかった。
敗れたチャチャイは「オオバは強かった。
しかしレフェリーはダメだ」と初回の
ロングカウントに皮肉も。レフェリーは
もちろん「日本人を勝たしたい」吉田勇作。

私の一番最初のボクシングスクラップ。
当時は小学生はカッターナイフなんて持てなかったので
ハサミで切ることに。ヘタクソだねえ。


これで大場は17連勝を飾り、WBC王者を
除けば敵なしと専門誌は評価。減量苦からも
バンタム挑戦も視野に入れており
さらなる快進撃が期待されるも
激戦が続いたため本田会長はとりあえず
休憩が必要とスケジュールは白紙とのこと。
試合後大場は1月末までホテルニューオータニ
に部屋をとり外部の喧噪から自由な行動と
空間を満喫する。その間に約600万円する新車
シボレーコルベットが大場のもとへ届く。
そして実家や旧トレーナー宅に出向き
「凄いでしょ、このクルマ」と自慢する。
母親は「なんだか嫌な車だねぇ」.....