ゆく川の 流れは絶えずして、しかも もとの水にあらず・・とは「方丈記」の冒頭の一節だが、これは人間の代謝に関しても 当てはまるらしい。
ある書物によれば「我々の身体を構成している物質は、一見、変化がないように見えても、急速に交替しながら 動的平衡を維持している」からである。
例えば、肝臓タンパク質は二、三週間で半分が、筋肉タンパク質は4か月で入れ替わるという。そして少なくとも、
3年後には物質としての身体は、すっかり別の新しいものになっているという。
これすなわち、絶えざる河の水の流れと同じで、臓器から臓器へ物質が絶えず流動しながら、一定の状態を保ち続け 命が永らえているのである。
吉川春寿「からだと食物」 より