7. *) *))
:リルケと薔薇とデーメルと:
ところで、薔薇は薔薇でも、この閨秀詩人がRosa mystica (奇しき薔薇)と称して、そこに特異な意味を込め象徴的に歌ったのとは異なり、薔薇の詩篇を多く書き残している詩人にリルケがいる。
例えば、こんな詩。
薔薇よ 歓びの伴侶の薔薇よ
目の当たりにして 幸福が訪れれば
ひとしお 想い出となる薔薇よ !...
けれども 枯れゆくきみを見つめていると
花弁は死絹帷子かたびらのよう
きみは遺愛の書物に挟まれ 小箱の中
香りも消ゑゆく薔薇よ
R.M. Rilke; Les Roses
*
また、薔薇を歌った詩人に鬼神のような恐持ての顔をしたデーメルがいる。彼は実際は愛しあう夫人と享受した幸福への感謝から素晴らしい詩を書いた。:
薔薇と海: デーメル
碧い海に 投げ入れられた薔薇
香る薔薇に陽が射し すると
幾千の震え動く爪先で 光が
あとから 飛び跳ねた;
第一の波が来ると 薔薇は溺れかかり
第二の波が 薔薇を優しく背にすると
光は 薔薇の足元に沈む
第三の波が 薔薇の縁を掴めば
光は奮え 高く飛び跳ねた けれども
真っ赤な花弁が揺らぐと
小舟も揺らぐ
そして 人影も 泡と戯れている )))*
Dehmel; Wellen-Tanz Lied