出演・深水元基、永作博美、川村ゆきえ、長谷川朝晴、西山繭子、いしだ壱成、与座嘉秋、江口のりこ、安藤玉惠、太田恭臣、ぺ・ジョンミョン、不二子 ほか。
2001年、9月12日午前11時20分、北二郎(深水元基)の携帯電話に気球クラブ<うわの空>の創設者だった村上(長谷川朝晴)が「事故った」という知らせが入る。5年前、1か月ほど気球クラブに参加していた二郎は村上と深い付き合いは無かったが、村上の恋人だった美津子(永作博美)とは初めて参加した会で一目惚れし、初めての飲み会でキスを交わした間柄だった。その後村上と別れた美津子は実家に帰り、携帯電話の番号を知っている二郎から事故の件を美津子に伝えて欲しいという連絡だった。美津子の携帯にかけてみるが留守電メッセージが流れるばかりで繋がらない。数時間後、村上が亡くなり今夜村上を偲ぶ会を開くという連絡が入る。村上がクラブの部室にしていた家に集まったメンバーたちは5年前ビルの屋上に作った気球のBARで飲み明かした仲間。その気球BARは朽ちてしぼみ部屋の中に置き去りにされていた。部屋で飲み明かしたメンバーは河べりに気球を運びメンバー全員の携帯の連絡先、メールアドレスを消去して連絡を絶つことで新たなステップへの出発を約束しあう・・・。
気球に魅せられて<気球クラブ うわの空>というサークルを創設した村上とその恋人美津子、サークルに集まった若者たちの中で純粋に気球を愛していたのは村上ただ一人だったかも知れないし、畢竟モラトリアムを生きる若者の気まぐれな遊び、気球への興味ではなく寂しさを紛らわすための仲間たちや恋人作りが目的だったのかも知れない。気球について熱く語り、夢のない人生の無意味さについて熱く語っていた村上はやがて気球や夢を捨ててしまったのか、それとも夢を持ち続けていたのか。
モラトリアムの時代が終わり就職してしまえばそこで青春は終わってしまうのだろうか?「本当に気球なんかどうでもよかったんです」と、5年前を振り返った二郎はつぶやく。気球に乗って空高く飛んでいく村上を追って車を走らせる美津子。気球に乗った空の上から贈られる結婚指輪(プロポーズ)ではなく、地上でこれを渡して欲しいと言った美津子。「地上にいる私を見つけてくれるまで待っているの」といった美津子を村上は見つける事が出来なかったのだろうか。5年前の出来事を回想するシーンに現在がオーバーラップし更に1年後、社会人になった二郎は「僕は社会人のふりをして生きるのが上手くなった」と今の心境を吐露する。村上が美津子に宛てた美津子への思いを乗せたバルーンは、二郎の手を離れ上空高く飛んで行く。虚ろに過ぎ去ったモラトリアムの季節。村上への美津子の愛、流した涙だけは遊びではなく本物の涙のように思えた。☆☆☆☆(☆5が満点)