ミュージカル史に燦然と輝く金字塔「ウエスト・サイド・ストーリー」。これをスティーブン・スピルバーグがリメイクしたというから早速観てきた。さすがスピルバーグ。不朽の名作を現代的エッセンスも加えて見事に蘇らせた。米国辛口レビューサイトでも批評家支持93%・観客支持94%でありリメイク成功である。

楽曲はとにかくに素晴らしい。「Tonight」「America」は誰しも聞いたことがあるだろう。映像の華やかさ、キレのあるダンス、躍動感を感じさせるカメラワークにはスピルバーグらしさが活きる。前作に忠実であるが、ストーリーは一部変更がある(トニーが刑務所収監されていたことなど)。また、LGBTQの要素も取り入れ、時代性を反映させることで不朽の名作を現在の蘇らせており、21世紀の”いま”リメイクする意味を感じる。

 

 

 

ただやはり「ウエスト・サイド・ストーリー」は、個人的に前半が苦手・・・。特にバレエを取り入れたダンスが観ていてこっぱずかしい。ただ後半になると、この物語がなぜ語り継がれるのかが分かる。「ロミオとジュリエット」をベースにしているが、不毛な闘争の果ての悲哀は普遍性がある。ガンジーは「目には目をでは世界が盲目になる」と言ったが、本作によく似合う言葉である。経済格差や国籍などで分断が続く現代米国社会にあって、本作を蘇らせた意義は大きい。分断の行きつく先に明るい未来はないのだ。

なお、マンハッタンの移民を題材にしたミュージカル映画であれば「イン・ザ・ハイツ」もおすすめしたい。こちらはハッピーエンドで元気をくれる名作である。本作と対比してみるのも良いかもしれない。

 

★ 3.9 / 4.0

 

 

ファッション系YoutuberのMBさんが本を出したというので早速購入。MBさんはYoutuberだが、企業経営もしており、オリジナルアイテムなども販売している。ハイブランドのみならずユニクロ・GUなども価格にこだわらずにフェアに品質を評価しており非常に好感が持てる。ファッションというとスタイルの話に偏ったり、ブランドをステータスアイテムとして見せびらかす(ウェブレンのいう「顕示的消費」)方に偏りがちだが、私がMBさんのチャンネルが好きなのは、MBさんは企業経営をしているだけあってビジネス視点も忘れておらず経済合理的視点も兼ね備えており、かつファッションの在り方を歴史的な脈絡を踏まえて解説するので、非常に論理的で説得力がある。相当に独自に研究を重ねられたのだと思う。本作ではMBさん偏愛のブランドを60個紹介しているが、アイテムの写真は全て私物だという。

 

以下、個人的に読んで勉強になった点と考えた点

・ルイヴィトンはデザイン的には定番品を揃えているが、デザイナーは革新的で、最近亡くなったヴァージル・アブローはガーナ移民の黒人で、ファッションは専門的に学んでいないという人物だ。90年代、まだLGBTへの偏見が強い時代にマーク・ジェイコブスを起用した。その後、キム・ジョーンズを起用し、シュプリームというストリート系ブランドとのコラボを成し遂げた。彼がきっかけでラグジュアリーとストリートとの垣根は取り払われ、ミックスなファッションカルチャーが生まれた。昨今、ハイブランドもストリート系を取り入れるのは当たり前で、アニメとのコラボなどミックスカルチャーが広がっているが、それもキム・ジョーンズに源流があるのだろう。

 

・ジルサンダーはパリコレでは実はあまり評価は高くなかった。パリは革新的であり、一方でミラノは保守的。上司な生地でシンプルなデザインのジルサンダーはミラノで高い評価を得たという。実際、コムデギャルソンやマルジェラはパリコレで評判を集めた。実際、イタリアのアルマーニやFENDIなどはどちらかというと保守的である。

 

・イタリアはフェンディなど革製品が有名だが、もともとローマ帝国時代から軍人の馬に乗せる鞍や武器などでレザーを使うことが多かったからだそうだ。フェンディは数あるイタリアブランドの中でも人気が高いが、カール・ラガーフェルドが伝統の中に革新を織り交ぜたことで注目を浴びたという。ヴィトンは木箱職人、エルメスは馬具職人など、各ブランドにはコアコンピタンスとなる技術・製品があるが、それらはブランドの歴史を見ると納得がいく。

 

・パターナー(洋服でパターンを引く人、つまり設計者のような存在)を作業者と考える人がいるが、専門技術がいる職人である。二次元のデザインを三次元に転換する際に、パターナーの力量が足りないと、予期せぬところに皺やヨレが発生したりする。よくファッションにおいて”原価”が云々いう人がいるが、デザイナー・パターナー・縫製技術者の技術料・人件費もかかっている(さらには宣伝・広告・輸送・販売店舗にもコストがかかる)。原価で云々いう人は、ファッションに携わる職人の技術料を「無料」だと言っているようなもの。

 

・それにしてもやはり日本はファッションのレベルが高い。マルジェラの一号店は東京にできたし、コムデギャルソンのように伝統的な西欧のファッションカルチャーに衝撃を与えたブランドもある。一般的知名度はそこまでだが、COMOLI・ムーンスター・レインメーカー等など評価の高いブランドが数多い。日本は西陣織など伝統的な服飾の文化の伝統が長く、職人気質もあって、ファッションにハイクオリティを求める。一方で、ハイクオリティが当たり前で、その技術や職人の存在も当然視されている節があると思う。職人さんにはそれ相応の対価を払うべきである。数万円のTシャツを見ると「高い!」と思うだろうが、職人と技術力に思いを馳せればその価格設定も納得いくだろう(こだわりの逸品を安くしろという発想は、職人に相当な対価を払いたくないと言っているのと同義である)。原価に拘るのであれば、やはり「規模の経済」が効くファストファッションを買えばいいと思うし、別にそれは経済合理的である。ただ一歩踏み出してファッションを楽しむのであれば、相当の対価が必要なんだなとあらためて思った。

 

以下、MBさんの好きな動画

 

 

 

テレ東のYoutubeチャンネルがとても良質であるのでオススメしたい。ウクライナ危機が切迫しているが、ロシアの論理からその危機を解説している。歴史・国際政治などの観点を踏まえつつ、なぜロシアはここまでウクライナ問題に強硬的なのかを解説しているが、思わず「なるほど」と、うなってしまった。日本は米国との同盟関係にあり、ロシアには北方領土を奪取された記憶があるのであまりロシアには良い感情を持っていない人も多いだろうが、ロシアの抱えるトラウマを知ると、ロシアの過激さも理解できる(とはいえ、軍事力による現状変更は是認できないのであるが)。

 

(ロシア側の発想)

1.ロシアはモンゴル帝国よる「タタールのくびき」に始まり、ナポレオンの侵攻、ナチスによる侵攻など侵略を受け続けたという強い被害者意識がある。日本の世界大戦の死者数など比較にならない程の被害が欧米との戦争で出ている。

2.バランスオブパワーという現実主義の観点からすると、NATOの東方拡大により軍事力の不均衡を生じさせたのは西欧側である。軍事的圧迫を受けてロシアは苦しんでいる。

3.ロシアとウクライナは民族的・歴史的に強い関係がある。ウクライナをNATOに加盟させようというのはロシアの感情的には看過しがたい。

 

動画でも例えているが、日本でいうのであれば、中国・ロシア・台湾・北朝鮮・韓国の軍事同盟(あり得ないが・・・)が、日本に圧力をかけてきて、さらには沖縄を懐柔しようとしているというような構図である(沖縄は琉球王国として独立国家だったが、薩摩藩に侵略された意識が薄弱ながら存在する)。そうすれば、日本としては黙っていられないということになろう。日本が、反日的な韓国を見限らないのは韓国が中国に寝返ると前線が対馬まで後退するので、軍事的に韓国は「緩衝地帯」として必要だからである。ロシアとしては、国境を接するウクライナがNATOに加盟した場合、緩衝地帯が消滅するわけだから、強硬に出るのも当然ということである。

 

ロシアはクリミア半島とウクライナ東部を実効支配しているが、どちらも緩衝地帯としての役割を持っている。ウクライナが西側に寝返るのはいいが、緩衝地帯を確保するために実効支配エリアは死守したいということだ。「ABCD包囲網」で追い詰められた日本としてはロシアの論理も理解できないわけではない。

 

私は別にどちらの肩を持つわけではないが、ウクライナ危機は、国際政治学の理論を理解するのに良いきっかけだと思う。夢想的な日本の平和主義がいかに荒唐無稽なのか気がづくきっかけにもなるだろう。国際政治学の理論は、世界史に組み込むべきだと思う。些末な歴史的事象の年号暗記より遥かに有益である。年号などのただの情報は忘れるが、国際政治の理論などの思考枠組みは、長期的に思考能力に影響を与えるからだ。

 

 

 

米当局がロシアによる大規模なウクライナ侵攻の準備がほぼ完了し、首都キエフを2日以内に制圧可能だと分析していることが5日分かった。米紙ワシントン・ポスト(電子版)などが伝えた。最大で5万人の民間人が死傷し、500万人が難民となる恐れがあるという。ロイター通信も、ロシアが侵攻に必要な部隊の7割を配置したと報じた。- 産経新聞

 

ウクライナ・キエフ(CNN) ロシア軍の戦力配備がベラルーシの複数の場所でも進展しているとみられることがわかった。米国の衛星運用会社マクサーが5日に撮影した新たな衛星画像で明らかになった。ロシア政府がウクライナ領への侵攻を計画しているとの危惧があるなか、ウクライナや北大西洋条約機構(NATO)にとっては懸念が深まりそうだ。- CNN

 

ロシアのウクライナ侵攻は時間の問題か?テレ東のウクライナ情勢の解説動画が優秀な件、の記事でも書いたがウクライナへの侵攻は秒読みである。北京五輪ではプーチンと習近平は蜜月関係を演出しており、欧米が経済制裁を発動しても、世界第2位の経済大国の中国との経済関係があればロシア経済は持ちこたえられるとの算段だろうか。

 

それにしてもウクライナはソ連崩壊後に世界第3位の核保有国だったことがあるがあまり知られていない。格の維持もコストがかかるといって核を廃棄したので抑止力が亡くなってロシアに抗えなくなった。軍隊も軍縮して人口4000万を超えるにしては貧弱な軍隊となった。これはロシアがメディアや政界にスパイをウクライナに送り込んで軍縮させたと言われているし、最近でも現政権の転覆をロシアが画策していたと言われている(LINK)。

 

実際、ソ連崩壊後はロシアは大人しかったが、ウクライナの防衛が脆弱になったとたんにロシアは攻勢を強めてクリミア半島も奪取され、ウクライナ東部のドネツク・ルガンスクもロシアの実効支配下である。脳内お花畑の左翼が話し合いで解決できるといくら強弁しようと、軍事力の抑止がなければ侵略されれば抗いようがないのだ。ウクライナは良い例である。あまりメディアで取り上げられないもの日本メディアは夢想的な左翼の巣窟だから、こうした国際政治の現実は報道したくないのだろう。日本の憲法9条信仰の平和主義者はウクライナ情勢についてどう考えるのか教えてほしい。

 

中国が軍拡しているのに日本の防衛予算の増額に反対する野党がいるが、どこを向いて政治を行っているのか問いただしたいものである。尖閣諸島に中国軍が上陸したときに、野党議員は丸腰で前線で交渉してくれるのだろうか?北朝鮮のミサイルが日本本土に飛んできたときに野党議員はどのように日本国民の人命と財産を守るのだろうか。憲法9条と唱えていればミサイルが迎撃できるのだろうか?どこまでいっても国際政治は「現実主義」である。最近だと立憲民主党の支持率が落ちて日本維新の会が自民党に続く第2位の支持率であるが、批判しかしない脳内お花畑の立憲民主党にさすがに国民が辟易しているのが実態なのだろう(LINK)。北朝鮮のミサイルが日本に着弾すれば現実に気が付くだろうか?ウクライナのように国土を奪われてから気が付くのでは遅い。「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」である。

 

 

イギリスで最も栄誉ある文学賞ブッカー賞を受賞したアラヴィンド・アディガのベストセラー小説の映画版。インドの貧しい村出身の低カースト出身の青年バルラム・ハルワイは、裕福な一族の運転手となり、徐々に一族の信頼を得ていくが、ある事件をきっかけに彼は理不尽な現実に直面し、現状を打開するためにある犯罪計画を思いつくというストーリー。主人公が過去を回想するかたちでストーリーは進んでいく。サスペンス的な展開に思わず見入ってしまった。

 

本作は第93回アカデミー賞(2021年)脚色賞にノミネートされていたが、本当にNetflixの映画は映画市場で存在感を示してきている。Netflixでは韓国ドラマも人気だが、一方で日本ドラマの品質は悲しいものがある。事務所がゴリ押しする演技が下手くそなタレントでも辟易なのに、安上がりなセットに海外ドラマの模倣につまらない脚本など悲惨で観るに堪えない。Netflixで話題の日本のドラマだと「新聞記者」があるが、妄想と現実の区別がついていない創作ストーリーでただのプロパガンダドラマと化しており、これの原作が新聞記者というからさらに哀愁を帯びる(結局、自殺した財務省職員の遺族とももめているそう)。

話がズレたが、本映画は、善良な主人公が社会の仕組みや理不尽さを知る中で、自己の如何ともしがたい立場を理解し、それを打破するために悪事をもいとわない思考に陥っていく様には絶望感のある一方で、ある種の快感を覚える。インド社会に内在する汚職問題・カースト問題・女性蔑視・宗教問題・インドの古い風習などをストーリーに絶妙に描き込んでおり、その因習を打破しようとする主人公には共感を覚える。

世界最大の民主主義国のインドは急速に近代化しており、このまま成長が続けば数十年以内には日本を追い抜き米中に並ぶ経済大国になる。旧社会の風習が近代化によって脱皮していく様は各国にあるが、インドはこれからその過渡期を迎える。これからは茶色と黄色の人間の時代だという主人公の野望剝き出しの発言には、同じアジア人として若干の共感を覚える。インド人はすでに米国IT企業でも活躍しており、中国の次はインドがおそらく世界経済の主役になりえるだろう。一方で、悲しいかな、日本はIT化に遅れて、ただの老衰国家になっていく。。

当方はインドは2回ほど行ったことがあるが、急速に経済成長しており、デリー近郊のグルガオンは外資系企業が集積している(当方が勤務しているグループ企業もここにある)。しかし、一方で路上生活者も多いし、過去の因習も多い。しがらみにまみれながら、近代化の過渡期を迎えつつあるインドにおいて、手段を択ばない出世主義を体現する主人公を軸とした本作は、いまだからこそ観るべき価値があると思う。時代の変化や社会の変容、それらがもたらす人間関係・価値観へのインパクトなどに興味がある私としてはかなり好きな作品だった。なお、パッケージで主人公の頭に描かれる王冠はバスキアっぽいが、これは自由の国アメリカ・ニューヨークへのオマージュだろうか。実際に作品ではニューヨークへの言及が多い。自由の風吹くアメリカに憧れる大国インドの成長はまだ始まったばかりだ。

 

★ 4.0 / 5.0