ファッション系YoutuberのMBさんが本を出したというので早速購入。MBさんはYoutuberだが、企業経営もしており、オリジナルアイテムなども販売している。ハイブランドのみならずユニクロ・GUなども価格にこだわらずにフェアに品質を評価しており非常に好感が持てる。ファッションというとスタイルの話に偏ったり、ブランドをステータスアイテムとして見せびらかす(ウェブレンのいう「顕示的消費」)方に偏りがちだが、私がMBさんのチャンネルが好きなのは、MBさんは企業経営をしているだけあってビジネス視点も忘れておらず経済合理的視点も兼ね備えており、かつファッションの在り方を歴史的な脈絡を踏まえて解説するので、非常に論理的で説得力がある。相当に独自に研究を重ねられたのだと思う。本作ではMBさん偏愛のブランドを60個紹介しているが、アイテムの写真は全て私物だという。
以下、個人的に読んで勉強になった点と考えた点
・ルイヴィトンはデザイン的には定番品を揃えているが、デザイナーは革新的で、最近亡くなったヴァージル・アブローはガーナ移民の黒人で、ファッションは専門的に学んでいないという人物だ。90年代、まだLGBTへの偏見が強い時代にマーク・ジェイコブスを起用した。その後、キム・ジョーンズを起用し、シュプリームというストリート系ブランドとのコラボを成し遂げた。彼がきっかけでラグジュアリーとストリートとの垣根は取り払われ、ミックスなファッションカルチャーが生まれた。昨今、ハイブランドもストリート系を取り入れるのは当たり前で、アニメとのコラボなどミックスカルチャーが広がっているが、それもキム・ジョーンズに源流があるのだろう。
・ジルサンダーはパリコレでは実はあまり評価は高くなかった。パリは革新的であり、一方でミラノは保守的。上司な生地でシンプルなデザインのジルサンダーはミラノで高い評価を得たという。実際、コムデギャルソンやマルジェラはパリコレで評判を集めた。実際、イタリアのアルマーニやFENDIなどはどちらかというと保守的である。
・イタリアはフェンディなど革製品が有名だが、もともとローマ帝国時代から軍人の馬に乗せる鞍や武器などでレザーを使うことが多かったからだそうだ。フェンディは数あるイタリアブランドの中でも人気が高いが、カール・ラガーフェルドが伝統の中に革新を織り交ぜたことで注目を浴びたという。ヴィトンは木箱職人、エルメスは馬具職人など、各ブランドにはコアコンピタンスとなる技術・製品があるが、それらはブランドの歴史を見ると納得がいく。
・パターナー(洋服でパターンを引く人、つまり設計者のような存在)を作業者と考える人がいるが、専門技術がいる職人である。二次元のデザインを三次元に転換する際に、パターナーの力量が足りないと、予期せぬところに皺やヨレが発生したりする。よくファッションにおいて”原価”が云々いう人がいるが、デザイナー・パターナー・縫製技術者の技術料・人件費もかかっている(さらには宣伝・広告・輸送・販売店舗にもコストがかかる)。原価で云々いう人は、ファッションに携わる職人の技術料を「無料」だと言っているようなもの。
・それにしてもやはり日本はファッションのレベルが高い。マルジェラの一号店は東京にできたし、コムデギャルソンのように伝統的な西欧のファッションカルチャーに衝撃を与えたブランドもある。一般的知名度はそこまでだが、COMOLI・ムーンスター・レインメーカー等など評価の高いブランドが数多い。日本は西陣織など伝統的な服飾の文化の伝統が長く、職人気質もあって、ファッションにハイクオリティを求める。一方で、ハイクオリティが当たり前で、その技術や職人の存在も当然視されている節があると思う。職人さんにはそれ相応の対価を払うべきである。数万円のTシャツを見ると「高い!」と思うだろうが、職人と技術力に思いを馳せればその価格設定も納得いくだろう(こだわりの逸品を安くしろという発想は、職人に相当な対価を払いたくないと言っているのと同義である)。原価に拘るのであれば、やはり「規模の経済」が効くファストファッションを買えばいいと思うし、別にそれは経済合理的である。ただ一歩踏み出してファッションを楽しむのであれば、相当の対価が必要なんだなとあらためて思った。
以下、MBさんの好きな動画