![]() | ショパン・コンクール - 最高峰の舞台を読み解く (中公新書) 950円 Amazon |
本屋で新刊をみていたら青柳いづみこの新刊が出ていた。青柳さんの本はすでに数冊読んでおり、ブログでも取り上げたことがある。ショパンコンクールは世界最高のピアノコンクールであり、ここで入賞すれば一躍世界的に名が知れる。ちなみに、ショパコンと並び称されるのが「チャイコフスキーコンクール」。こちらに関しても審査委員をやっていた故 中村紘子女史が本を書いている(ブログでも取り上げている)。
文には人となりが出る。中村女史は、ピアニストを生育環境だとか社会的な環境の切り口からみることが多く、コンクールもその内情はもちろん内部での政治的な駆け引きだとか、コンクールの社会に占める役割など、環境や社会との関係性の中でエッセイを書く傾向がある。青柳さんはどちらかというと技術的な話が多い。本書も、ショパンコンクールの情勢を「ロマンチック派」と「楽譜に忠実派」という大局から捉え、ピアノのメーカーに関して、また採点方法など技術にまつわる話が多い。中村女史であればショパンコンクールの歴史だとか、その時々の社会情勢との関係に関してエッセイを紡いだことだろう。
それにしても本書を読んで思うのは、コンクールは水物なのである。ユリアンナ・アヴデーエワは2010年のショパンコンクール優勝者だが、最初は予備予選で落っことされているという。有名なピアニストが異議を申し立てて復活したという。アジア人初のショパンコンクール優勝者のダン・タイ・ソンも、書類選考でコンクール歴もなくおまけにベトナム・ハノイ音楽院卒業という経歴だったため一度は応募を却下されたが、モスクワ音楽院在籍だから大丈夫かと思い直した事務局が受理したのだという。ロンティボーの入賞者が浜松国際ピアノコンクールでは1次予選落ち、逆にチャイコフスキーコンクールで本選にすら進めなかった人が浜松国際ピアノコンクールで優勝などのねじれも起きているという。その時の体調や、審査委員との相性に大きく左右されるのである。
プロのピアニストがみたショパンコンクールのエッセイ・レポートとしては非常に面白い。ピアノに興味があればオススメ。ただやはり内容の重みや深さは中村女史著の「チャイコフスキーコンクール」が何枚も上手で、やや物足りなさは感じてしまった。

