久しぶりに早稲田松竹にて映画を鑑賞。1300円で2本観れるのでかなりお得な名画座です。学生の頃によく来ました。たまたま気になっていた「グランドフィナーレ」をやっていたので来ました。引退した音楽家のフレドは、娘や親友の映画監督ミックとスイスの高級ホテルで休暇をとっているが、そこに英国王室から指揮の依頼が舞い込む。頑なにフレドが拒む理由が、徐々に理由が明かされる・・・。ホテルに宿泊している人たちのやり取り等から見えてくる人生に対する喜び、悩み、迷い・・・。最後、主人公の指揮する主題歌「シンプルソング」で、映画クライマックスを迎え、大きな余韻と感慨を残し、映画は幕を閉じる。上質なヨーロッパ映画を想像してたのだが、実際は異なり、妄想シーンが入ったり、大げさな演技等、ややコミカルな箇所もある。ただ美しいシーンはとことん美しい。

 

ただ考えさせる良い映画だったとは思うが、主題がいまいち判然としないし、シリアスとコミカルのバランスが良いとは思えないし、映画の諸要素がバラバラでまとまりがない。肝心のラストの「シンプルソング」を歌うスミ・ジョーさんもかなり残念。歌はすごいうまいのだが、ド派手なスパンコールの赤のドレスに、茶色の髪に、濃いファンデーションに濃い口紅・・・言い方は悪いがもはや下品。個人として観ればよいのだが、明らかに映画の脈絡の中で登場するには浮いている。というわけで、なんとも散漫な印象を受けた。というのも、巨匠の音楽家を描くには、監督のパオロ・ソレンティーノが40代で若過ぎるんだと思う。ただ出演陣の演技はとにかく素晴らしい。

 

早稲田松竹に来ると、お目当ての映画よりもついでに観た作品の方が良いということが多いのだが、今回も漏れずそのケースだった。「リリーのすべて」は、世界で初めて性転換手術を受けたリリー・エルベという実際の人物の日記をベースにつくられた映画。全然予習していなかったのだが主演は「レ・ミゼラブル」「博士と彼女のセオリー」で名演をみせた期待の若手のエディ・レッドメイン。舞台は1926年のデンマーク。画家ゲルダは、画家の夫アイナーと暮らしているが、ある時、モデルがいないからとアイナ―に女性のモデルを頼む。女装したアイナ―に「リリー」と名付け、その勢いのまま冗談でパーティーに連れ出す。すると、アイナ―の中にいた女性が目覚めてしまい、アイナ―はリリーという女性の人格に変わっていってしまう。当時は性同一性障害は認知されておらず、性的倒錯・精神分裂病と診断されてしまうが、その後、パリに移住した二人のところに性転換手術を行えるという医師が現れ、世界初の手術を決意するのだった・・・。

 

1930年代に性転換手術を行っていたというのに驚いた。性同一性障害はここ十数年で法整備なども進んでいるが、リリーは性同一性障害のパイオニア的な存在として語られているという。それにしても主演のエディ・レッドメインは迫真の演技である。男性と女性の人格の入れ替わりをうまく表現している。こちらの作品は、ヴェネツシア映画祭ではクィア獅子賞を受賞している。クィア獅子賞と初めて聞いたのだが、LGBTの映画に贈られる賞だという。映画の完成度も高いが、それにもましていろいろと勉強になった映画だった。とはいえ、実際にリリーが手術を受けたのは40代と映画よりもかなり歳上。映画化に際して一定の美化は致し方がないだろう・・・。